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病院の廊下に二人の医師が居る。
「飽きないねぇ」
一人の白衣がそう小声で言った。
保育器の並ぶ無菌室の窓から一人の赤ん坊に手を振った男は肩までの茶髪の、端正な容貌である。彼は神秘的でさえある容姿に似合わない軽口で隣の長身の黒髪に言葉を投げる。
「仕事だ」
白衣を着てはいるが殺伐とした口調で長身の男は応えた。
「アズラエルってそればっか」
茶髪の男は笑いながら肩を竦める。
「お前こそ物好きだな。ラグエル」
「知らなかったぁ? 俺は酔狂で有名なのよ」
いつもの軽口を叩いて、茶髪の男、ラグエルは笑みを抑えた。
「―――はっきり言って、この子の運命なんてどうでも良かったんだけどさ。今度こそ、助けてやりたくなったんだよ。俺を助けてくれたしね」
お前は、とでも言うようにラグエルは長身の男、アズラエルに視線を向けた。
「そうだな―――…」
アズラエルは保育器に収まっている黒髪の赤ん坊を見つめる。
その、小さな手に握りこんでいるのは幸運か、不幸か。
「………迎えに来た」
低い声が赤ん坊に届いたのだろうか。
大きな翠の瞳が微笑むように煌めいた。