仕事
遥か昔………。かの国、レレット王国は賢王ルドが治めていた。彼の絵には、必ず白い髪に金色の瞳の青年が出てくる。ルドは、彼を白夜と呼んでいたと書物には書かれている。しかし、とある事を切っ掛けに王は国神である白夜の逆鱗に触れた。
その日から、国に異常気象が起こった。
これは、神である白夜が国に呪いをかけたのだ。王は、賢王ではなく愚王だった。その噂は、国を越えて各国に知らされた。所詮、国神が治めていたような国だ。国神が、レレット王国を捨てた今がチャンスと多くの国々が攻めてきた。
だが、白夜が現れ全ての国々を撤退に追い込んだ。
白夜は、レレット王国を愛していた。だから、全力で守り続けた。しかし、白夜は長く生きた為に寝て過ごすようになった。彼は、いつ目を覚ますのか。
それは、誰にも分からない。
ユラは、ゆっくり本を閉じてため息。
「白夜か……。ステータスに、あった名前だよね。」
「ユラ君、気付いてるでしょ?」
ユラは、クリュセトを直視できない。と言うか、いつの間に背後を取られたんだろう……。
「まさか、レレット王国の国神だったなんて。」
「クリュセトは、僕の本名だよ。白夜は、当時に王家に仕えた異世界の少年が僕に付けた名なんだ。」
なるほど、王家は少年の力を恐れて殺したのか……。
「ねぇ、私と契約しない?」
「僕は、彼の代わりはできないよ。」
本を持って、立ち上がり本棚になおす。
「知ってる。君は、自分が特別だって分かってるのかな?そして、多くのものに狙われてるのも。」
「………余り酷いなら、クリュセトみたいに眠って過ごそうかな。寝てれば、迷惑にはならないし。」
すると、クリュセトは深いため息を吐き出す。そして、リューが居るのに気付く。
「ユラ君、少しだけ此方を見て。」
ユラは、キョトンとして振り向き、クリュセトの手に握られた石を直視してしまう。
「うっ、何……それ……。何か……、気持ち悪い……。」
リューは、その場に座り込むユラの顔を見る。ユラは、力が入らず立ち上がる事が出来ない。酷い頭痛に、視界が揺らぎくらくらして吐き気がするのだ。
「やはり、まだ早いのではないか?」
「うーん、そうみたいだね。」
暫くして、ユラはふらふら立ち上がる。すると、ヴァイスが現れてユラを支える。ユラは、意識が朦朧としていて何とか椅子に座る。
「それは、世界の結晶ですか?」
ヴァイスは、心配そうにユラを見ながら言う。
「そう、世界の結晶の1つ運命の結晶だよ。」
「やはり、ユラは拒絶をしているのだな。」
リューは、暢気に言いながらユラを見る。
「死にたがりは、生を縛られるのは嫌だからね。」
クリュセトの言葉に、ヴァイスはため息を吐き出す。そして、頭が痛そうな悩ましい表情で言う。
「まだ、貴方は死を求めるのか………。」
それは、ヴァイスにしては珍しい敬語無しの口調。
「まぁ、分からなくは無いけど………。ユラ君は、秘密主義で自己犠牲な爆弾持ちだからね。」
「ヴァイス、お前の心配は我も理解する。だが、ユラとて迷い苦しんでおるのだ。分かってやれ。」
リューの言葉に、ヴァイスは苦笑して頷いた。そして、逃げるように言うと書物庫から姿を消した。
「………ですね。では、お茶でも用意してきます。」
リューは、ユラを見てから暢気に言う。
「さて、良い部下を持ったなユラ。」
「本当に、僕には勿体ないくらいだ……。」
ユラは、小さくため息を吐き出すと頬杖をつく。
「ユラ、レレット王国に濃い瘴気が見つかった。」
主神が、困ったように入ってくる。
「ふーん、僕が行かないと駄目なの?」
「観測された瘴気は、森に迷い込んだアンデットドラゴンが放っている。しかも、アンデットドラゴンは5体も居るようだ。だから、ヤバい………。」
うーん、ドラゴン案件かぁ………。まぁ、仕方ない。
ユラは、立ち上がり主神を見る。
「分かった、1週間と少しは掛かるけど。」
「そうだな、神力は控えた方が良いだろうしな。」
主神は、頷いてから真剣にいう。
「まぁ、何にせよ出発は明日だな。」
「だねー。」
すると、ヴァイスが入ってくる。主神も、ミルクティーを貰いクッキーを食べる。
「にしても、アンデットドラゴンが5体って。絶対に、死霊術師からみだよね。」
「だろうな。ハイリヒ、最悪は分かってるな?」
ユラは、苦笑して無言で頷いた。
「さて、仕事の話は終わりだ。」
「そうだ、ユラは最近の体調は大丈夫なのか?」
ユラは、少しだけ悩んでから苦笑する。
「まだ、不安定かな。」
「そうか、無理だけはするな?」
主神は、困ったように言えば、ユラは暢気に返事している。ヴァイスは、心配そうにユラを見ている。
「はーい。」
翌日、ユラ達はレレット王国に急いだ。




