守護神の役目
ユラは、研究の結果のレポートを受け取る。ベガに廊下で会い、世間話しながら最後に渡されたのだ。
という訳で、自分の机に向かい茶封筒からレポートを出す。そして、机からインク瓶と羽ペン。真っ白な、紙を出して真剣にレポートとにらめっこする。
そして、羽ペンをカリカリと動かしている。
「ユラ、本当に研究が好きだよね?」
カリオスは、医療班室に入って早々に思わず呟く。シアンも、苦笑しながらユラの仕事を見る。
「何か、あればあれで1種の病気じゃないか?」
「うん、確かにね。ユラは、どれだけ集中が続くんだろう。そろそろ、止めるべきかな?」
ユラは、インク瓶を机に入れて羽ペンをペン立てに入れる。そして、レポートと自分の書いた紙を中に入れてベガの机に置く。そして、紅茶をいれる。
「そうだ、カリオスは誰に用事があるの?」
思い出したように、カリオスを見ながらティーカップを渡す。カリオスは、苦笑してからユラに言う。
「今度、この国で勇者召喚をする事になった。」
「ふ~ん、そうなんだ。」
ユラは、特に気にする様子もなく言う。カリオス達は、立場上は参加しないといけない。だが、副団長は参加の義務はない。行けば、主神から厄介事を押し付けられそうだ。つまり、面倒なので行かない。
「それで、ユラも参加してくれない?」
「えー、面倒なんだけど。」
ユラは、嫌そうに呟くとため息を吐き出す。主神から、厄介事のプレゼントだなんて冗談じゃない。だが、主に頼まれたのなら無下にはできない。
「ユラ、お願い!」
「まぁ、主の頼みなら断らないけど。」
ユラは、そう言うと紅茶を飲む。カリオスは、思い出したように言う。ユラは、思わず驚いている。
「そう言えば、主従の契約を解除してない!」
「まぁ、そうだけど。えっと、解除して良いの?」
すると、机で書き物をしていた、ラメルが全力で止める。その勢いは、カリオスが驚くほどである。
「カリオスさん、契約を解除したら駄目っ!!」
ユラは、肩を震わせて笑っている。ラメルは、ユラを睨むがカリオスに視線を戻す。
「え?その、どう言う事かな?」
「解除したら、ユラが国の守護神じゃなくなる!」
すると、カリオスは思わず固まってしまう。これには、お茶会に誘いに来た他のメンバーも驚く。
「国の守護神とは、主と神が居てはじめて契約が成り立つ。主がいない、というのは神が自由になるって事だよ。つまり、カリオスさんが契約を解除したら………ユラは、自由になっちゃう。しかも、解除されると国を守る神の恩恵もなくなるんだよ。そうなれば、異常気象が多いレレット王国は、確実に少なくないダメージを受ける。守護神が居ないから、民には深い傷痕を残すし、経済的にも元通りは厳しい状態になってしまう。国が恵まれるのは、ユラを敬う下界の神々が協力的だからなんだよ!他種族も、ユラには協力的だから商売や産業が盛んだし。だから、契約を解除したら駄目なの!あー、疲れた。」
ユラは、暢気にラメルに紅茶を渡す。ラメルは、小さく礼を言うと紅茶を優雅に飲む。
「それで、解除しても?ちなみに、僕が主と認めたのはカリオスだけ。他の人とは、絶対に契約しないよ。さてとベガ、書類は机の上だから。」
ユラは、そう言うと紅茶のお代わりをいれる。
「カリオスさん、駄目だからね!ユラが、守護神を辞めるって事は、自由に国から出ていけるって事だし。そうなれば、ユラは絶対に戻らない。」
「まぁ、たまには戻ると思うよ?でも、神王の仕事を優先させるから……。レレット王国に、ずっとは留まれないし、簡単には帰っても来れない。」
すると、全員が思わずカリオスを見る。
「うん、撤回……。契約は、絶対に解除しない。」
カリオスも、即答で言葉を撤回させた。
「そう?僕としては、少し外の世界は魅力的だったけど。まぁ、時間はある。まぁ、良いでしょう。」
ユラは、そう言うと暢気に笑って紅茶を飲む。
さて、勇者召喚の瞬間とか初めてだなぁー。魔方陣が浮かび、強い光を放つと日本人の少年少女が現れる。ユラは、嫌な予感がして走り出した。
「さて、君達の名前を教えてくれるかい?」
「えっと、ケイです。」
「それは、本命ではありませんね。答えなさい。」
やっぱり、厄介事じゃないか!ユラは、怯える少年の前に立って司祭に冷たい視線を送る。
「ケイ、貴方は間違っていないよ。この世界では、真の名は命と同等だ。気軽に、教えてはならない。よく、怖さに負けずに我慢しました。」
ユラは、優しい笑顔で少年少女達を安心させる。
「そして、司祭殿。お勤め、ご苦労様でした。これより、主神様のお言葉を告げる。2度と聖職者を、名乗る事を許さない。欲に溺れて、勇者を利用しようとするなど神への冒涜である。よって、元司祭は法により裁かれるだろう。ちなみに、教皇様は二言返事をくださった。安心して、牢屋に入れ。」
すると、司祭は兵士に連れて行かれた。
「まったく、やっぱり厄介事を押し付けましたね!この借りは、大きいですからね主神様。」
『済まない、神王。主として、礼を言おう。』
空から響く、主神の声に聖職者は祈り出す。
「えっと、神王って偉いんですか?」
「うん、神様の中で2番目に偉いよ。ちなみに、1番目に偉いのが主神様。主神は、全ての神々の主だよ。会社に例えると、主神が社長で僕が副社長。複雑なので、これ以上は省かせて貰うね。」
ユラは、優しい笑顔で元気よく言う。
「さて、先ずは自己紹介しよう。僕も、君達を何て呼べば良いか分からないし。何でも、良いけどあだ名でもゲームで使うキャラネームでもさ。」
「俺は、ケイです。」
「あたし、リンだよ。」
「僕は、ロキです。」
「私は、レナです。」
自己紹介して、頭をしっかり下げる勇者達。
「僕は、竜神ハイリヒ。レレット王国の、守護神にして下界の神々をまとめる王様でもある。他にも、役目は有るけど自分で調べてね。後は、カリオス……金髪で、エメラルドグリーンな瞳のお兄さんに従ってね。その人は、僕の主だし安心して任せられるからさ。あっ、そうだ。僕は、人間の時はユラって呼ばれているから、そっちの名前で呼んでね。」
そういうと、ユラは仕事は終わりと部屋を出る。そして、書類仕事を頑張るのだった。




