アピール
ユラは、書類を書いている。さっきから、視線を感じているが無視をして書き上げていく。
「ユラ、そろそろ暇にならない?」
ベガの声に、ハッとして笑顔で頷く。
「この書類で、終わりですから暇になりますよ。」
ベガは、ホッとした表情でユラを見る。ユラは、キョトンとして思わず首を傾げる。すると、ベガの後からカリオスが現れて納得する。
「シアン、医学術師を借りたいんだけど?」
すると、遊んでた人達は慌てて片づけて自分が行くとアピールする。ユラは、一瞬だけ呆れた表情をする。それは、シアンも同様で冷たい視線を向ける。
他の部署に、実力を認めて貰えると高額の給料や名誉や階級などを手に入れられる。現金な奴らだ………
なので、必死にアピールしだす。
「そうだな、ハイリヒに行って貰うかな。」
「シアン様、何で実力不足な新人を行かせるんですか!俺たちの方が、適任に決まってます!」
ユラは、思わず飲んでいた紅茶を吹き出しそうになる。慌てて、ハンカチを取り出している。ベガとヘルズは、何言ってんだコイツら。って表情で男達を見ている。シアンは、こいつらユラの何を見てるんだ?っとため息を吐き出してから苦笑して言う。
「俺は、実力も含めて適任だと言ったんだ。」
カリオスは、真剣な表情で成り行きを見ている。
「あの、先輩達に行かせてみて、不満であれば僕が行く形にしませんか?僕も、先輩達の技術を見て学びたいと思っていましたから。どうでしょう?」
ユラは、暢気に紅茶を飲んでから言う。しかし、シアンは苦笑してから駄目だと言う。
「駄目だ。こいつら、もう3年は遊んで過ごして居るんだぞ?腕が、鈍ってるだろうし王国の騎士を手当てさせるのは、正直に言って怖いくらいだ。」
「でも、こいつだって……」
反論しようと、何人かが立ち上がる。
「ハイリヒは、うちに入る直前まで医療に関わっていたぞ。それに、技術的で言えば3年も医療に関わって無いお前らより、格上だと断言出来るしな。」
すると、男達は睨んだり驚いたりしてユラを見る。
カリオスは、ここが落とし所だろうと判断する。そして、シアンに視線を向ける。シアンも、分かってるとばかりに頷いてため息を吐き出す。
「ハイリヒ、3週間は魔法騎士団の担当医な。」
「はい、了解致しました。」
ユラは、書類を引き出しに入れて鍵を掛ける。
「実は、魔法騎士団合同練習で他国と練習する事になってさ。たぶん、騎士団からも来ると思うよ。」
「そっちは、ラメルに行って貰う予定だ。」
ラメルは、同盟の活動をしながらの為に滅多に来ない。だが、実力は同盟でも2位と知られているので反対は無かった。と言うか、反対を出来なかった。
「そう、それなら安心だね。さて、ハイリヒ。」
「はっ、はい!何ですか、カリオス様………。」
わざと、緊張したように言う。ちなみに、カリオスとハイリヒ……いや、カリオスとユラの関係を知らない者達は騙される。シアンも、演技力に思わず感心した表情だ。ベガとヘルズも、驚いてから笑う。
「えっと、緊張しなくて良いよ。別に、取って食おうと思っている訳じゃないからね。」
「はっ、はい………。済みません…………。」
今度は、落ち込むような恥ずかしげな様子で言う。
「さて、それじゃあ行こうか。」
「はい、よろしくお願いいたします。」
ユラは、丁寧にお辞儀をすると歩き出す。
カリオスは、思わず笑ってしまった。隣では、少しだけムスッとしたユラが居るのだが………。
「ユラ、可愛い後輩役だね。」
「違うよ、素直で真面目な好青年を演じてる。」
ユラは、少し冗談が混じった声音で言う。
「えっ?癒し系毒舌男子って、シアンは言っていたけれど?飴と鞭の使い方が、凄く上手だとか。」
「おのれ、シアンの奴め…………」
「あははははっ。」
「まぁ、何はともあれ平穏無事はほど遠いかな。」
ユラは、苦笑して魔法で変装を解除する。
「最近は、命を脅かしかねない事態も起きたとか。シアンから、聞くたびに心配なのだけど?」
「そんな、カリオスに嬉しくないお知らせ。今回の件で、更に僕の命の危険が増したよ。」
ユラは、ケラケラと笑いながら言う。カリオスは、心配そうにユラを見ている。
「まったく、笑えないんだけど?」
「そう?明日には、ダメージが全回復するし神力も戻るから大丈夫だよ。余程の事………それこそ、世界の終わりとか?………無い限り大丈夫だと思うよ。」
「例えのスケールが、大き過ぎてコメントしにくいよ!まぁ、さすが竜神としか………。」
カリオスは、ため息を吐き出した。ユラは、してやったりと思わずわらうのだった。
「さて、カリオス。まだ、誰も来てないけど?」
「3時間くらい、早めに呼びに行ったからね。」
カリオスは、暢気に笑ってユラを見る。
「それで?」
「ドラゴニアンについて、教えて欲しいんだ。」
ユラは、なるほどと頷くと椅子に腰かけて言う。
「ドラゴニアンは、一言で言えば竜と人間との間にできた亜人かな。竜の血が、濃い順番に言えばドラゴニアン・ドラゴニュート・リザードマンだよ。」
「つまり、今の僕は竜の血が強い人間なんだね。」
すると、ユラは首を横に振る。カリオスは、驚いてからユラの言葉を待つ。ユラは、真剣に言う。
「竜の力は膨大で、最強種族なだけに与える影響も凄まじい。変異紋様………、カリオスの受けた祝福なんだけど、竜の与える祝福の中でも珍しく強い力を持つ紋様なんだよ。例えば、人間の身体を竜につくりかえて僅かに人間の血を残すとか…………。」
「…………っ!?それって、まさか…………」
ユラは、心配そうにカリオスを見ている。
「僕も、竜になれるってこと?」
キラキラと、笑顔を浮かべながら言う。ユラは、ガクッとなりどうコメントするか迷ってしまう。
「あー、うん。なれるよ、竜に。」
「なら、なってみたい。どうすれば、竜化出来るのかな?ユラは、ちなみに竜化は出来るの?」
素晴らしい笑顔で、嬉々と話すカリオスにユラは苦笑して答えている。端から見れば、賑やかで仲良さげだろう。しかし、ユラは既に疲れていた。
「出来るけど、まだダメージが残ってるから竜化はしないよ。最悪、暴走する可能性が有るしね。」
「そっか、残念だなぁー。」
ユラは、会話が終わり安堵に息を漏らした。




