表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/115

和解

カリオスは、服を着替えて外へ歩き出す。ユラに、自分だけでも謝らなければと思ったからだ。


「うっへぇー、スゲー雷雨と暴風だな。」


シアンが、変な声で苦笑しながら足早に隣を歩く。


確かに、台風程では無いが凄まじい雷雨と暴風だ。と言うか、1年前まではこんな気候は多くは無いが少しはあった。つまり、ユラが来てから止まっていたのだ。不思議だと、天文学者が調べていたが全く成果はでないし放置していたけど………。


「はぁー………。ユラは、怒ってるだろうなぁー。」


カリオスは、ため息をはきだす。そして、城門の門番に声をかけて重い足取りで外へ出る。


国王陛下は、馬車に乗り待機している。ユラに、今から国王陛下を会わろと?最悪、殺される可能性もある。ユラが、怒り狂って……。


まぁ、ユラにあんな事をしといて殺すなって方がおかしいけど。だが僕は、王家に仕える貴族だ。だから、最悪はユラを殺せと言われれば………そうならない事を、心の中でひっそりと祈る事しか出来ない。


「カリオス、私は息子の恩人を殺す積もりは無い。本当は、もっと早く会いたかったのだ。だが、家臣どもが反対だと言ってな。そして、大臣の奴も勝手に欲に埋もれて暴走した。ユラ殿を、使える駒としようとして………その、逆鱗に触れてしまった。」


国王陛下は、疲れた表情で後悔と悲しみの感情の瞳をカリオスに向ける。カリオスは、無言でそれを見て苦笑する。シアンは、困った表情だ。


本来、家臣が暴走した場合は止めるのは王の仕事だ。だが、王は止める事が出来なかった。しかも、信頼していた仲間は勝手に暴走するし。国王陛下には、さぞ頭の痛い話だろう。


宿についた。すると、竜神様が来ていて思わず固まるカリオスとシアン。さすがに、神様相手に国王陛下を守れる自信は無かったからだ。


「カリオス、ユラは今は眠っておる。」


竜神は、それだけ言うと階段を上がって行った。ついてこい、という事だろう。カリオスとシアンは、頷き合い階段を登りユラの泊まっている部屋に向かう。竜神は、スタスタと歩き扉を開ける。


ベッドには、無防備で年相応な寝顔のユラが眠っている。安らかな寝息で、警戒する素振りも無い。主神は、それを優しい笑顔で見ていたが、カリオス達を見るとそれを消して真剣な表情をしている。


「カリオス、ユラの心変わりの件は感謝してる。」


「……いえ。」


カリオスは、短く答える。主神は、真剣な表情で国王陛下を見る。だが、すぐに興味を失う。


「カリオス、この国を滅ぼすかの件だが。」


すると、国王陛下は血の気を無くしたように青ざめる。シアンも、驚いて固まって主神を見る。カリオスも、冷や汗を流し困ったように主神を見て言う。


「やはり、手遅れでしたか?」


「さぁな。滅ぼすかは、ユラの心しだいだ。」


そう言うと、少し迷ってからユラの肩を揺する。


「んっ、んぅー?主神様、どうかしました?」


寝ぼけた瞳で、キョトンと主神を見るがカリオス達を見ると一瞬ではっきり目を覚ます。


そして、無言で主神を見る。主神はというと………、寝ぼけた瞳のユラの可愛さに脳内で葛藤していた。『今から、真面目な話をしないとな。』という気持ちと、『うわぁー、可愛すぎるぅ!流石、俺の息子ぉおおっ!』という気持ちの長いようで短い葛藤であった。ユラは、すこし呆れた視線を向ける。


「さて、ユラはこの国を滅ぼしたいか?」


すると、ユラは起き上がり混乱した様子でベッドに座る。それはそうだろう、寝ている間に勝手に話がトントン拍子に進んでいっていたのだ。


その話を、寝ていて全く知らないユラからすれば『いったい、何事!?』と思うのは当然である。


「へ?ストップ!主神様、何を言ってるの!?」


「うん、落ち着けユラ。」


ユラは、ため息をつくと眼鏡をかけて主神を見る。


「で?何で、国を滅ぼすかなんて物騒きわまりない恐ろしい考えに?僕にも、説明プリーズです。」


「え?何か、腹が立ったから。お前がこの国を、何とも思って無いなら地図から消してやろうかなと思ってな。お前の事だから、カリオス達を気にかけると思って踏み出し切れてなかったんだけど。」


主神は、そう言うと真剣な表情を浮かべてユラを見る。ユラは、ため息を吐き出して主神に言う。


「僕は、この国が好きですよ。貴族関係とか、面倒なしがらみさえなければ楽ですが。」


「そっか。さて、なら俺は帰るかな。それとユラ、お前がこの国を好きなら国の守護神の権限を与えるけど?個人的な、力のみでの守護は負担が大きいからな。でっ、お前はどうしたい?」


すると、ユラは苦笑してから首を横に振る。


「今の僕では、守護神の権限を受け止めきれない。このみで、神の力を宿せば最悪は壊れてしまう。」


「ふーん、自覚は有るんだな?」


主神は、少しニヤッとして意地悪な表情をする。


「でも、ギリギリまでは人でいたいです。駄目?」


すると、主神と竜神は同時にため息を吐き出してから苦笑してユラを見る。そして、暢気に言う。


「本来に、約束だからな?」


「まったく、普段は我儘を言わんのに。何故、そう人間である事にこだわる?別に、かまわんが。」


ユラは、苦笑してから言う。


「それは、僕が前世も人間だったからとしか。」


「まぁ、ユラの言いたい事も分からなくもない。」


主神は、そう言うと立ち上がり手を振って帰る。ユラは、眼鏡を外して竜神を見る。


「竜神様は、帰らないの?」


「うむ、実はな………。」


そう言うと、国王を見てからユラを見て言う。


「国の貴族達が、ユラの命を狙っておる。奴らは、お前の心を壊して道具にするつもりのようだ。」


すると、カリオスは真剣な表情になる。シアンは、怒りの表情を浮かべている。国王は、青ざめて疲れた表情をしている。ユラは、無表情になり無感情な瞳を竜神にむける。竜神も、怒りを押さえている。


そしてユラは、俯くと何かを押さえ込むようにため息を吐き出し顔をあげる。その表情は、いつものユラで違和感すらなかった。多分、演技だろうとカリオスは思う。シアンも、そう思ったのか心配そうにユラを見る。国王は、申し訳ないさげだ。


ユラは、苦笑して立ち上がる。もうすぐ、日が上がる。ユラは、上着をはおり部屋から出て紅茶をいれて帰って来た。そして、3人を見る。


「粗茶ですが、どうぞ。」


「ユラ殿、まずは申し訳ない。そして、息子達と仲良くしてくれてありがとう。」


国王陛下は、深く頭を下げる。


「別に、もう終わった事です。」


「ユラ、ありがとう。」


カリオスも、申し訳なさそうに頭を下げる。シアンも、同時に頭を下げる。ユラは、困った表情を浮かべて紅茶を飲む。暫く沈黙を、部屋に満たされた紅茶の香り。ユラは、別に怒ってはいない。


「まぁ、水に流します。」


ユラは、そう言って苦笑する。


「ユラ殿、確かに貴殿には王都に屋敷を用意した。しかし、それは貴殿が学園から遠い所から登校していると知ったからだ。それに、宿暮らしでは金銭面で大変ではと思ったのだ。別に、貴殿を私は縛る積もりは無い。忠誠心など、いらん。だが、この国だけは見捨てないでくれ。私は、それだけで良い。」


「まぁ、ルピア王子とクルトの父親である陛下の御言葉ですから信用致しますよ。」


ユラは、優しい笑顔を浮かべて言う。


「ユラ、香水はこの国を去る時にこっそり渡す。もし、帰って来たときにお嫁さんが居ても守れるように持っていた方が良い。同時に、身分証明書も渡すから。ユラには、苦労をかけるけど。」


「お嫁さんって………。まぁ、うん……分かった。」


ユラは、曖昧に苦笑いして渋々だが頷く。


「それで、いつから屋敷に移動する?」


「いつでも良いよ?」


すると、カリオスはニコッとする。


「じゃあ、今日からね。」


「え?えっと、凄く急だね?」


「うん、善は急げって言うでしょ?」


ユラは、少し驚くが何とか頷く。


「安心しろ、暫くは俺らも泊まりに来るから。」


シアンは、暢気に笑って言う。


「??」


ユラは、キョトンとして首を傾げる。


「竜神様の話を、聞いたからには貴族達に絶対に君を傷付けさせない。それに、今の君は弱っているんでしょ?まったく、知ってるんだからね。」


「ありがとう……。」


ユラは、少し嬉しくて心から笑う。息を呑む音がして、ふとカリオス達を見ると照れていた。


珍しい、どんな美人にも笑顔対応のカリオスが照れてる。シアンは、嬉しそうに笑っている。


「ユラは、明日はお城に来るの?」


「うん、彼らの帰りを隅で見守る予定だよ。」


こうして、レレット王国滅亡の危機は去った。そして、いつもの生活に戻………れるはずもなく………。第2のレレット王国滅亡の危機が近づくのをまだ誰も知らない。いや、主神だけしか知らない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ