ネガティブ男子
さて、荷物という荷物はない。お引っ越し、完了☆ヴァイスさんは、ニコッと笑って紅茶をだす。
「あっ、ありがとうございます。」
「いえ。それと、出来れば皆さんの前ではため口でお願いしますね。無理にとは、言いませんが余りよろしい事では御座いませんので。」
そう言うと、このお屋敷の担当者達が来る。
「まず、知ってますが執事長ヴァイスです。」
「メイド長、マリリーで御座います。」
「料理長、モンテと申します。」
3人は、丁寧に挨拶して優雅に微笑む。
「庭師のガハルトだ。」
「メイドの4人、メイナとフォルとシエラとフェニです。これから、よろしくお願いいたします。」
『よろしくお願いいたします!』
「執事の6人、ロイとルクとダインとヴォルたランデルとレイクです。よろしくお願いいたします。」
うわぁー、凄い人だ。すると、男2人が慌てたように入ってくる。そして、頭を下げて言う。
「お屋敷の門番、プサイとファイです。よろしくお願いいたします。遅れて、申し訳御座いません。」
「皆、此方こそよろしく。」
そう言うと、それぞれ持ち場に戻って行った。
「ユラ様、今日の予定はお城にて勇者の帰還をするので是非ともという話でした。それ以外は、とくに予定は御座いませんがどう致しますか?」
「カリオス達が、暫くは泊まりに来るらしいよ。」
ユラは、敬語を使わないように気を付けて言う。
「では、お皿など揃える必要が有りますね。メイド長である、彼女に任せましょう。」
ヴァイスは、周りにテキパキと指示を出していく。ユラは、苦笑して立ち上がる。
「ユラ様、私達は主従の関係では有りますが家族でも有ります。なので、もっと肩の力を抜いて気軽に話してください。私達は、国王直々に選ばれたエリートでも有ります。なので秘密は、死んでも守りますし貴方を害する敵は全て排除致します。私達は、貴方の為ならば協力は惜しみません。ですから……」
「ありがとう、頼りにしているよみんな。」
すると、その場に居た全員が嬉しそうに笑う。しかし、ヴァイスは真剣な表情をしている。
ユラは、部屋に戻ると小さくため息をつく。そしてから、苦笑いを浮かべて自分の歪んだ感情やひねくれた性格を吐き出すように枕に顔をしずめた。
「ユラ様、そんなにご自身を追い込まないでください。実は、ベイル様にユラ様の過去を聞いておりました。きっと、私にも想像の出来ない辛い過去を。ですから、今すぐ信じろとは申しません。ゆっくりで、良いんです。私達は、そう思っております。」
ユラは、顔を上げる事もしない。いや、出来ない。
つくづく、この性格に腹がたった。ユラは、表面上では明るく優しい優等生だ。だが、裏面では人を一線引いて見てから冷たい感情で見て信用出来るかを決めている。優等生?優しい?有能?何それ?それが、ユラの個人的な思いであった。
周りは、ユラに自分を低評価し過ぎるなと言う。
だが、ユラは皆を悪く言えば騙してるのだ。とてもだが、ユラは自分自身を好きになれないていた。
ヴァイスは、ゆっくりと部屋を出て行ってしまう。
きっと、優しい人だから1人にしてくれたのだろうと思う。ユラは、顔を上げて自分を否定し続ける。
本当に、この性格は嫌いだ。まるで、道化師のようで可愛いげの欠片もない。つくづく、この個性的な人格が嫌いだ。でも、言葉には出さない。でもユラは、自分自身をいつまでも否定し続ける。
「ユラ、入って良いかな?」
カリオスの声に、ハッとして慌ててベッドを整えて表情を隠してドアを開ける。カリオスは、一瞬だけ小さく驚くが椅子に座る。
「それで、カリオスはどうしたの?」
「君は、馴れてしまったのかい?」
カリオスは、少し悲しげに低い声音で言う。それを聞いて、ユラは驚いて思わず表情が固まる。
「カリオス?」
「ずっと、思っていたんだ。君は、腹芸もそれなりに出来るし賢さも持ち合わせてる。何より、君は表情を良く隠すし周りには悟らせない。君は、そんな事を息をするようにするよね?馴れてしまった?」
ユラは、苦々しい表情してから暫く沈黙して言う。
「僕は、僕の事が嫌いだ。性格は、歪んでるし。僕は、皆を騙してるんだ。僕は、皆が思っているほど素晴らしい性格ではない。カリオス、僕は最低な人間なんだよ。だから、隠すしかないんだ。」
カリオスは、苦笑してから言う。
「君は、もう少し自分を大切にしたら?自分を、自分でいじめてたら疲れてしまうよ。」
「いじめる?」
ユラは、首を傾げる。カリオスは、ため息を吐き出してから優しい声音でユラに言う。
「と言うか、どうして他人の為ならいくらでもポジティブになるのに、自分の事になると何でネガティブになるのさ。君は、自分にもっと自信を持つべきだと思うよ。君は、自分を蔑ろにし過ぎてる。」
「………分からない。まだ、僕は自分が好きになれそうにないや。だから、気長にみててよ。」
困った表情で、悲しげに呟く。カリオスは、真剣な表情で見てからため息を吐き出す。
これは、長くかかりそうだ。はたして、その時に僕は生きて居るだろうか?まぁ、頑張ってみるかな。
「ユラは、難儀な性格だね。」
「まぁ、僕は困った道化師だからね。」
そう言うと、苦笑いして窓の外を見つめた。カリオスは、一瞬だけキョトンとしてから頷く。
「さて、お城に行こうユラ。あと、気分転換に城下町で甘味を食べよっか。どうせ、君の事だし食事には手をつける気はないんでしょ?いいよね?」
と言って、振り向いてヴァイスに言う。
「いやいや、何で僕に聞かないのさ。」
「だって、ユラに言っても断るだろうし。ここは、外堀から埋めていくに限るよね?ね?」
すると、ヴァイスもニコッと笑って頷く。
「ふむ、そうですね。ユラ様は、ずっと働いておられましたし、息抜きと気分転換も兼ねて行ってらっしゃいませ。カリオス様、護衛は必要ですか?」
「いや、要らないよ。僕が、近くにいるし。」
ユラは、断りたいのに勝手に話が決まり困った表情をして他のメンバーに視線を向ける。しかし、見事に笑顔のスルー。ユラは、ため息を吐き出した。




