表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/115

困り事……

今日は、学園が休みの日だ。何だろう、目を開きたく無い。体が、凄く怠くて辛い………。


『……ユラ、無理に起きようとするな。』


でも、起きないと………


竜王は、人化して影から出てくる。そして、冷たい水を絞ったタオルをユラの目を隠すように置く。


「やはり、そろそろ来るかと思っていた。」


「えっと、どう言う事なの?」


ユラは、戸惑うように言う。すると、青年が苦笑しながら入って来る。竜王は、紳士な一礼をする。


「お前が、無茶するから神眼酷使の副作用だよ。」


「あの、失礼ですが。何で、主神様が此処へ?」


すると、主神はため息を吐き出す。


「そうだな、その前に起き上がれるか?」


「はい、何とか……」


主神は、メガネをユラに渡す。


「それは、神眼の力を封印するものだ。」


「なるほど、ありがとうございます。」


メガネを掛けて、主神を見る。主神は、真剣な表情で壁に寄り掛かりユラを見る。ユラは、キョトンとして主神の言葉を待つ。


「まずは、神聖賢者の勤めを良く果たした。これで竜神を、殺さずに済むしありがとう。」


竜王は、ホッとしてユラに笑いかける。


「ユラ、ありがとう……。」


「どういたしまして。」


主神は、苦笑してから言う。


「言い訳だが。俺だって、罪の無いお前にあんな危険な仕事をさせたかった訳じゃない。だが俺は、主神だからな。勝手は出来ないし、建前が無いと竜神を救えなかったんだ。さて、本題に入るぞ。」


「ん?本題、ですか?」


まだ、何かあるの?とばかりに主神を見るユラ。


「その神眼の、副作用だけど………。目が、痛くなったりしたら竜神にでも言ってくれ。まぁ、お前が人間をやめるのならすぐにでも助けられるんだが。」


「いっ、嫌ですからね!?」


思わず、顔を青ざめ身構えて言う。


「それか、異世界にお前が帰るか………だな。」


「へ?ですが、僕は異世界では死んだ事に………」


「お前の死を、無かった事にも出来るぞ?」


ユラは、驚いて固まる。主神は、優しく笑う。


「………考えさせてください。」


「わかった。それじゃ、俺は仕事に戻るよ。それとなんだが、カタム帝国にお前の知り合いが召喚されたんだけど。帰るなら、出来ればそいつらと帰ってほしいかな。二度手間は、凄く疲れるからな。」


ユラは、ゆっくり頷くと無言で外を見る。


「竜王。もし、ユラが帰ると言ったら止めるな。」


「………わかった。さて、私も影に戻ろう。」


主神は、竜王に言い竜王は頷く。二人は、姿を消してしまう。ユラは、メガネを外して机に置く。


「おーい、おはよう。起きてるか?」


オズが、心配そうにドアの前で言う。竜王は、影から出て部屋を開ける。オズは、驚いてから入る。


「おはよう、どうかしたの?」


「それは、俺の台詞だよ。ユラ、顔色が悪いぞ。」


ユラは、苦笑してから言う。


「大丈夫、少し体調が悪いだけだよ。」


ユラが躊躇いがちに、体調が悪いと言った瞬間にオズは心配そうな表情をする。ユラは、慌てて言う。


「大丈夫だよ。明日には、治ってるだろうし。」


「お前な、自分の脆さを分かってんのか?人間は俺達、言わば長命種族より脆くて壊れやすい。」


「うっ……、分かってるよ。」


ユラは、苦々しく呟くと目を逸らす。


「はぁ……、取り敢えず絶対安静だからな。竜王、ユラから目を放すと何かと無茶をするから。」


「分かった、ちゃんと見ておこう。」


「この事は、カリオス様にも言っておくから。」


「ストップ!なっ、何でカリオスに?」


ユラは、オドオドしながら言う。


「だって、この国ではカリオス様がお前の後ろ楯だろ?つまりは、親も同然だしな。」


オズは、ユラがカリオスに迷惑をかけたくない事を知っていた。だけど、ユラに何かあれば保証は出来ないのだから仕方ない。ユラは、少しため息を吐き出してベッドに横になる。オズは、部屋から去る。


知り合いが、この世界に来ているか……。


もしや、あいつも居るんだろうか?


殺された、あの日の記憶を思い出しながら。心が、思い出すのを拒絶する。


あの日、僕を殺した大沢おおさわ 圭吾けいご


「……知りたいか?」


「知りたい……。」


布団の中で、小さく呟く。


「調べたら、召喚されたのは男女7名だ。そして、ユラの前世を奪った男も中に居るらしい。」


「そっか、ありがとう。」


そっか、あいつは居るのか。暫く、カタム帝国には行かないようにしないとな。うん、そうしよう。


「ユラ?ユラ!」


クルトの声で、ハッとして起き上がり苦笑する。


「……ごめん、考え事をしていたんだ。」


「私達に、気付かないほどか?」


ルピア王子は、心配そうにユラを見ている。ユラはそこで、一瞬だけ固まって周りを見る。


ユリスは、壁に寄り掛かっている。ベイルは、椅子に座っており他もそれぞれいる。そして、ユラはどれだけ自分が深く考え事をしていたのかに気付く。


「明日は、学園を休んだ方が良いかも。」


「うん、そうするよ。」


ユラは、カリオスにそう答えると苦笑する。


「心が、とても不安定で……苦しい?辛い?そして、心が泣いてる。ユラ、何があったの?」


クルトは、魔法でユラの感情を感じ取る。ユラは、少し驚き心を読めないようにする。しかし、クルトが言った言葉が消える事は無いわけで……。


「ユラ………。」


カリオスは、真剣に嘘は許さないと名前を呼ぶ。


「すみません、今は僕も混乱してていろいろと呑み込めなくて。それと、体調が悪いのは偶然です。」


ユラは、思わず苦笑しながら言う。カリオスは、これ以上は無理矢理に聞くのは酷だと感じる。


「分かった。」


「それより、皆さん忙しいのでは?なんか、僕の為にすみません。こっちは、大丈夫なので。」


全員が、思った。絶対、大丈夫じゃない!っと。


「さてさて、シアンはどう思う。」


「心の傷は、俺では治せない。」


「そう言うのは、大抵だが時間が解決する。」


「ええ、だから尚更に質が悪い。」


4人は、カリオスを見る。


「心の傷か……。」


カリオスは、1つだけ心当たりがあった。だが、ユラを殺した人間は異世界人なのだから………。そう考えて、最近だがカタム帝国で異世界人が召喚されたのを思い出す。そして、思わずユラを見てしまう。


「ユラ、間違ってたらごめん。もしかして、彼が召喚された異世界人の中に居たの?」


「………っ!?」


「そうなんだね?」


ユラは、隠していた辛そうな表情で声もなく頷く。


「うーん、そうなると困った。」


カリオスは、苦々しくユラを見る。


「何カ月後だけど。実は、彼らを預かる事になってね。君を殺した、そいつが城に留まる事になる。」


その言葉に、全員が驚きユラは青ざめるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ