揺らぐ世界の環境
ユラは、早足で会議室に入る。他国の団長達、そして副団長が集まっている。つまり、ユリスやオズ達も居るわけである。陛下は、笑顔で手を振っているのを見てユラは苦笑する。殺意を感じて、視線を向ければ数人の男達が此方を睨んでいる。
「それで?なぜ、退職の書類を提出したのに、10年も副団長の席を不在にしたのですか。」
「私は、お前しか適任な副団長は居ないと思う。」
ユラは、困ったようにため息を吐き出す。
「代理は、何の為に居るんでした?」
「ははっ、代理でどおにかなる訳なかろう。お前の仕事量を、全てやらせてたら年が明けてしまう。」
なるほど、自覚はあったんだね?なら、仕事量を減らしてくれるんだよね。まぁ、有り得ないか………。
「ですが、シアン団長が大変だったのでは?」
「黙れ!元平民で、陛下になんて口を聞くのだ!」
ユラは、薄く笑って男を振り向く。
「別に、爵位なんていらないよ?でも、バーホン男爵。今の私は、侯爵だという事を忘れてない?」
「ふん!貴族の役目を、怠ったお前が侯爵だと俺達は認めない。お前は、この国には必要がない。」
すると、ユラは満面の笑顔で男爵を見ている。
「それは、この国の意思かな?なら、僕は辞めても良いよ。けど、年が明ける前に国が滅びても知らないからね。世界の意思は、僕の意思に関係無く動いちゃうから………。そもそも、僕が貴族の地位に縛られている理由を忘れてない?」
「お前は、もう神王ではない。」
なるほど、それって使えないから要らないって事かな?けどさ、他国の団長達は不愉快そうだよ?それに、神々や8柱………世界の意思が動きそうで………
「主神から、戻るように頼まれてたけど………戻らなくて良いの?10年前より、環境が悪いけどさ。」
それは、他国の団長達も驚いている。
「カリオス様、魔物の群れが国に迫っています!」
「えっ、このタイミングでなの………。」
ユラは、カリオスを見てから言う。
「魔物は、この国には来ないよ。」
「報告します!魔物が、国を避けて行きます。」
まぁ、そうだろうね。僕を、敵には回したくないだろうし。にしても、モンスターパレードか………。
モンスターパレードとは、魔物が集団になり村や町を襲う事を言う。今回、モンスターパレードを率いていたのは……亜種の竜。それなりに、知能も力も有り直感で僕を見つけて避けた。まぁ、竜神に喧嘩なんて売れないからね。うん、賢明な判断だよ。
「ふーむ、これは酷いなぁ………。」
「もしかして、魔物達はユラを避けたの?」
カリオスは、キョトンとしてユラを見ている。
「うん。さすがに、竜神には喧嘩は売れないって感じで避けられた。それなりに、知能も力も有るし隣国には警戒を促す必要が有るかも。最悪、国が半壊する可能性も高いし。何せ、亜種とはいえ竜種である事に変わりは無いからね。そこら辺、カリオス達で判断してくる?面倒だし、丸投げするよ。」
ユラは、暢気に笑いながら言って椅子に座る。カリオスは、やれやれとため息を吐き出し指示を出す。
若い騎士は、緊張のある表情で走って行った。
「さて、魔物達は去ったし話を戻そうか。」
「ゆぅ~らぁ~!!!」
ラメルが、凄い勢いで入ってくる。
「おや?ラメル、お久し振り。」
「お願い、今すぐ神王に戻って!と言うか、何で神王に戻って無いのさ!主神様が、忙しくて死にそうだから素早く称号を受け入れちゃいなさい!」
ユラは、薄く笑ってから冷たい声でラメルに言う。
「僕に、また生け贄になれと?」
「それで、数多くの命が救われるからね。その為なら、忠誠を誓った君だって突き放せるよ。」
ラメルは、真剣な表情でユラの言葉を返す。
あら、嫌だ怖い………。じゃなくて、ごもっともか。
ユラは、思わずふわっと笑みを浮かべる。
「はいはい、戻りゃあ良いんでしょ?」
「…………本当に、ごめん………。」
ラメルは、少しだけ落ち込んだような悲しい表情。そして、苦し気な声音で呟いた。ユラは、ラメルの心を見ていた。ラメルは、苦しんでいた。
「いいや、君は間違ってはいないさ。役目を押し付ける、嫌な役割を押し付けられて可哀想に………。」
ユラは、そう呟くと灰色の結晶に魔力を流し真上に投げる。ラメルは、目を丸くしてユラを見ている。
「ユラ、何をしたの?」
「共有完了………。そう、若神は精神崩壊しちゃったんだね。なるほど、管理も何も出来てない訳だよ。まったく、これは頭が痛くなりそうだ。」
ユラは、複雑な表情で苦々しく呟いた。ラメルも、思わず俯いてしまう。ユラは、ため息を吐き出す。
「ユラ、どうにかなりそう?」
「この、悲惨な現状じゃ………うーん、3週間。」
ユラは、真剣な雰囲気で呟く。
「さすが、3週間でどうにか出来るんだ?」
「先に言っておく、無茶するから!」
ラメルの驚きの声に、思いっきりはっちゃけ声で返すユラ。カリオス達は、思わず渋い表情である。
「仕事より、世界の事が大事だし。」
「ユラ、無茶禁止。それと、何か手伝える?」
ユラは、ヴァイスとネヒトを呼ぶ。
「ラメル、ここ10年の環境資料を持ってきて。ネヒトは、動物達に聞いてくれるかな。ヴァイスは、配下を使って各国の環境の変化を調べて。」
「「「畏まりました、我が主。」」」
ユラは、目を丸くしてから言う。
「こらこら、普通に返事してよ。」
「さて、我らは仕事に行ってきます。」
ヴァイスは、ニコッと笑って姿を消した。
「さて、国の意思を聞こうか?」
「決闘だ!」
ふむ、決闘ねぇ。ユラは、男爵を見て苦笑した。




