第一話 ドラゴンという生き物➀
目前にそびえるは雪の積もった山脈。
――ドラグ山脈。
それは数多の龍が生息し、人間界とは隔絶した世界が広がると言われている、神聖な場所。
現在、俺――リュウがいるのは、その麓の草原。
山々を見上げながら、フゥ、と息を吐いた。
既に人里から高山の域へと入り、足元には見慣れぬピンク色の花が咲き乱れている。
「すげー綺麗……」
俺がその花に手を伸ばそうとした時、脇の下から“おこげ”が顔を出した。
可愛い名前をしているが、“おこげ”は体長5メートルはある中型ドラゴンである。
白いモフモフの毛に赤茶の斑点があり、翼は鳥類型で毛に覆われている。
顔は鳥とトカゲを一対一で混ぜたような見た目で、黄色く縁取りされた真っ黒な真ん丸おめめが、猫耳の様な飾り羽の下からこちらを見つめていた。
「どした――おこげ?綺麗な花だから摘もうかと……」
そう言いかけると、おこげが鼻先で俺を押しのけた。
もう一度ピンクの花に手を伸ばそうとする――が、今度は服を咥えられ、花の遠くへと連れ去られてしまった。
おこげのこの行動は、以前も見たことがある。
確かその時は……蛇がいた時……だったっけ。
「うーん……もしかして――この花って毒?」
俺がそう問いかけたが、毒という単語は伝わっていないらしく、彼は俺を覗き込んだまま首を傾げた。
「えっと……こうだろ!」
ジェスチャーで花に触り、首を抑えて死ぬ動きを見せると、おこげは首を縦に振った。
「そうか!そうかそうか!毒って教えてくれたのねェ……俺に……。可愛いねぇおこげちゃん!可愛い可愛い!!ほーらこっちおいでェ!!かうぃいいいいねぇええ」
鼻先を撫でると、おこげは腹を見せて草原に寝転がった。
すかさずもふもふの腹を撫でた俺は、目を閉じて喉を鳴らすおこげに抱き付く。
「あー、幸せ。街から離れて、可愛いペットと一緒に片田舎に……幸せだねぇ、おこげちゃん……おこげちゃん」
♢
この物語は、ある一人の少年リュウと、そのペットおこげ。
そして村人、数々のドラゴン達で紡がれる、スローライフのお話。
時に苦難や壁が立ちはだかるけど――勇気と愛で、それを乗り越えていく。
ほのぼのもふもふ系。
スローライフ物語の――始まりです。




