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間違えて運に極振りしちゃったけど召喚士なら何とかなりますか? ~召喚で出てくる魔物が異常個体ばかりなんですけど!~  作者: やおよろずの
第四章 六大ギルドになっちゃおう!

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085 天界の護人①

コナツの開始を告げる声が、模擬戦闘用訓練場に響いた瞬間、

六名の冒険者はそれぞれの武器を構え、一斉に戦闘態勢へ移った。


レグも剣を抜き放つ。

彼の剣は、ヴァルドライトという鉱石で造られた幅広のブロードソードだった。

自身の顔が映り込むほどに磨き上げられた刀身には、レグの几帳面な性格が表れている。

毎日の手入れは欠かさない。

支払いはまだ五年残っているが、この剣と自身の腕があれば、斬れないものはない。


そう思うレグだったが──。


「(……門は剣で斬れる相手なのか?)」


対する相手側は、あの少女も、エルフも、門も、像も動かない。


──まずは、様子を見るべきだ。


レグはそう考えていた。


サキ本人に一撃入れれば勝ち。

条件だけを見れば、こちらが攻めるべきなのは間違いない。

だが、相手の手の内が分からない以上、最初の一手を急ぎすぎるのは危険だった。


特に、あの白亜の門と像。

先ほどの意味不明な忠告が、ただの冗談やハッタリでないのなら、まずはそれが何を意味しているのか見極める必要がある。


その思いは、ディガルを除く五人に共通していた。


「──さっさと終わらせる」


後方で、レグが止めるより早く、ディガルは魔導銃(まどうじゅう)を構えていた。


「当てりゃ勝ちなんだろ。だったら当てりゃいい」


単純だが、明快。

当てるだけでいいのなら、遠距離からサキを狙撃するのが最も早い。

近づく必要もなければ、あのエルフと正面からぶつかる必要もないからだ。


ディガルは片目を瞑り、照準器を覗き込む。

視界が狭まる。

そして、照準器の中にサキの姿だけが収まった。


その瞬間。


──次に起きたことを、レグは理解できなかった。


ひゅっ、という音がした。

空気を裂くような、鋭い音。


直後、鈍い衝撃音が訓練場に響く。


「──ッ!?」


全員が振り向いたときには、そこにいたはずのディガルが、遥か後方へ吹き飛ばされていた。


「ディガル!?」


大柄な身体はうつ伏せに崩れ、すぐには起き上がってこない。

ここからだと、意識があるのかどうか分からなかった。


そして、先ほどまでディガルがいたはずの場所には、白亜の男性像がいた。

拳を振り抜いた姿勢のまま、彫刻のように静止している。

まるで最初からそこに置かれていた彫像のように、ぴたりと固まっていた。


「……は?」


カイルの口から、間の抜けた声が漏れた。


レグも、同じ気持ちだった。

ディガルはサキを狙った瞬間、吹き飛ばされた。

それだけは、状況から分かった。


「(……だが、どうやって?)」


白亜の像は、ほんの一瞬前までサキの近くにいた。

それが今、ディガルが居た位置で静止している。


「(……この像の仕業か!?)」


移動したところなど、何も見えなかった。

気付いたときには、そこにいた。


「……なるほどな」


ソノイチが、厄介そうにそう呟いた。

だが、アッシェはそれどころではなかった。


「ディガル!!」


アッシェは盾の構えを解き、倒れたディガルの方へ向かおうとした。

彼女には神聖魔法による回復の心得がある。

倒れた仲間を放っておけないのは、当然の反応だった。


だが、その一歩目を踏み出した瞬間。


「像から目を離すな!」


ソノイチの鋭い声が飛んだ。


「え?」


アッシェが、反射的にソノイチの方を見ようとする。

そのわずかな一瞬で、白亜の像が、消えた。


「逸らすなッ!!!」


ソノイチの二度目の声は、ほとんど怒号だった。

アッシェは咄嗟に視線を戻す。

正確には、白亜の像がいるはずの場所へ目を戻した。


──目の前にいた。


「ひ……っ」


アッシェの喉から、恐怖の声が漏れた。

白亜の像は、アッシェの目の前で拳を振りかぶっていた。

あと一歩──いや、あと一瞬、視線を戻すのが遅ければ、その拳はアッシェの身体を打ち抜いていたかもしれない。


……だが、像は動かない。


アッシェの視線が戻った瞬間、ぴたりと止まっていた。

片足を踏み出し、上体を捻り、拳を振りかぶった姿勢で。

普通なら、そのまま重心が流れて倒れてもおかしくない。

それほど不自然な体勢でありながら、白亜の像は微動だにしなかった。


「……ッ」


アッシェは恐怖で膝を落とした。

目の前に突如として現れた白亜の像から、なおも視線を外すことができないまま。


「……見続けろ」


ソノイチが、静かに告げる。


「目を逸らした者が狙われる」


その言葉で、皆の中で先ほどの文言が繋がった。


──彼を見ざる者、神速の接近あり。

──彼を見ざる者、裁きの拳あり。

──彼を見ざる者、一切の勝ち目なし。


「……そういうことか」


レグは白亜の像を見たまま、喉を鳴らした。


誰か一人が見ていればいいわけではない。


ディガルが像から目を離したから、ディガルが殴られた。

アッシェが像から視線を外しかけたから、アッシェが殴られかけた。


それも、文字通り”神速”──目で捉えることすらできない速度で。


つまり、あの像は──。


「……像から目を逸らしたら、殴られる……!」


レグの言葉に、カイルが乾いた笑いを漏らした。


「おいおい……なんだよそれ。後衛も前衛も関係ねえじゃねえか」


その通りだった。

レグたちが自然に組んだ隊列は、すでに意味を失っていた。

前衛が敵を受け止め、後衛が魔法や射撃で支援し、中衛が隙を突く。

それは、敵が前衛で食い止められる速度であることを前提にしている。


だが、あの像は違う。

視線を外した者に、目にも留まらぬ速さで接近する。

前にいるか、後ろにいるかなど関係ない。

つまり、隊列が、意味を持たない。


「ディガル……」

「大丈夫なはずだ。私の覚えが正しければ、この会場の壁内には衝撃吸収の術式が埋まっている。ディガルは殴られた衝撃で意識を飛ばされているだけのはずだ」

「……だけどよ、早速、一人脱落かよ……」


カイルが、歯噛みするように呟いた。

だが、誰も動けない──白亜の像から目を離せない。

不用意に視線を逸らせば、次に殴られるのは自分だ。


「……像を見たまま戦え、ということか」

「そのようだ」

「簡単に言わないで!? そ、そんなのムリよ……!」

「いや、そうか? 割といけるんじゃないか?」


アッシェの悲鳴のような言葉に、カイルは軽く答えた。


「じゃあやってみろ。そして死ね」

「…………」


エリーゼの冷たい一言に、カイルはそっと口を閉じた。


正直、こういう状況にあっても軽口を叩けるカイルはありがたい。

そう思いつつ、レグは白亜の像を睨みつけたまま、必死に状況を整理する。


「(開幕前のあのルール……続きがあったはずだ……)」


──天より落つる光の柱あり。


「……光の柱?」


まるでレグの思考をなぞるようなタイミングで、エリーゼが呟いた。

その一方。


「要するにさ」


カイルが、双剣をゆっくりと構え直す。


「像から目を離さなければ何もしてこないんだろ?」

「待て、カイル……!」


レグが止めようとした。

だが、カイルは止まらなかった。


「後手に回り続ける方がまずい、だろ? アイツは見とけば何もしてこない。だったら、見たまま詰める」


そう言い放つと、カイルが目の前からスッと消えた。


真正面から突っ込むのではなく、記憶を頼りにサキや門の位置との距離を測りながら、像から目を逸らさなくていい角度で斜めに詰めていく。


正面を見ず、視線を固定された状態でありながら、凄まじいスピードで進んでいく。

それは第五天位に至った冒険者だからこそ可能な技であり、初見でこの理不尽な状況に即座に対応しようとする判断力と度胸もまた、カイルが第五天位に成れた理由の一つだった。


サキたちとの距離が、見る間に詰まっていく──そのときだった。


「カイル、右に跳べ!」


叫んだのは、エリーゼだった。

瞬間、カイルは理由も聞かず、その声を信じて反射的に右へ跳んだ。


直後、カイルが踏み込もうとしていた地面に、細長い光が浮かび上がる。

淡い金色のような光。

それは魔法陣というより、鍵盤のようだった。

細長い四角形が地面に浮かび、まるで弾かれるのを待つように輝く。

そして。


──トーン。


澄んだ音が鳴った。

爆音でも、耳をつんざく轟音でもない。

それはまるで、大きな鍵盤をひとつ叩いたような、透明できれいな音。


その音と同時に、天から光の柱が落ちた。


「ッッ……!」


カイルはエリーゼのおかげで、間一髪で避けていた。


光は、カイルのすぐ左側を、真上から打った。

地面はへこんでおらず、焼け跡も残っていない。


「……なんだ、今の……!」


カイルの声に応じるように、地面が再び光る。


今度は一つではない。

カイルの周囲に、鍵盤のような光がいくつも浮かび上がる。

一定の間隔で並ぶものもあれば、不規則に点るものもあった。

そして、それを追うように、天から光の柱が落ちていく。


──トーン。

──トン。

──トーン。


澄んだ音が、訓練場に連なった。

まるで、見えない奏者が何かの曲を奏でているかのように。

静かに、淡々と、光が落ち続ける。


「光の律動……」


レグの口から、無意識に言葉が漏れた。

先ほどの文言を、皆が思い出す。


──我に挑む者、光の律動を読み、我が門前へ至ってみせよ。


その意味が、ようやく分かった。


光の柱には、予兆がある。

地面に鍵盤のような光が浮かび、その直後に、天から光が落ちる。


それを読めば、避けられる。

だが──。


「予兆が、見れない……!」


アッシェが苦しげに言った。


光の柱を避けるためには、地面の予兆を見なければならない。

だが、地面を見れば、白亜の像から目が離れる。

目を離せば、殴られる。


つまり、この仕掛けは……。


「足元の光の柱を避けながら、像を見続けろと言っている……のか」

「無茶苦茶だろ、そんなの……!」


意味を理解したカイルがそう叫ぶと同時に、エリーゼも再び叫ぶ。


「左!!!」


エリーゼの声に従うことで、カイルはさらに一つ光の柱を避けた。


「ぐおっ、あぶねッッ!」

「右!!!」

「ひい、間一髪ッ!」

「後ろ!!」

「……後ろってどっちだ? 俺から見て?」

「馬鹿野郎!!!」


──トーン。


天から落ちた光の柱が、カイルを直撃した。


焼かれたわけでも、貫かれたわけでも、潰されたわけでもない。


ただ、凄まじい力で吹き飛ばされた。


カイルの身体が、後方に、水平に吹き飛ばされる。

凄まじい衝撃で、カイルは思わず像から視線を外した。


その瞬間、白亜の像が消えた。


レグには、消えたように見えた。

レグたちの目には、動きなど追えなかった。


走ったのか、跳んだのか、何も分からない。


ただ、気付いたときには、吹き飛ばされているカイルのすぐ傍らに白亜の像がいた。

そしてすでに、空中のカイルへ、拳を振り下ろしていた。


「カイル!」


鈍い音とともに、カイルの身体が地面に叩き落とされる。


白亜の像は、片腕を振り抜いた姿勢のまま静止していた。

空中の何かを殴り落とした彫刻──元からそうだったかのように、白亜の像はその姿のまま固まっている。


「……カイル」


エリーゼが、かすれた声で名前を呼ぶ。

カイルは動かない。

白亜の像の足元で、カイルはまるで彫刻の一部にでもなったかのように、地面に伏したまま動かなかった。


「えっ!? 生きてるよね!?!?」


サキは、素っ頓狂な声でそう叫ぶと、青ざめた顔で倒れたカイルを見ていた。


試験は、まだ始まったばかりだった。


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― 新着の感想 ―
いや全然長くないよ:)
自分を中心にした広域破壊魔法みたいのが無きゃまず無理じゃない? それもモーリーだけしか居ない場合にサキに一撃入れるって今回の勝利条件での勝利の可能性が僅かにある程度…
主人公視点ではないことで圧倒的絶望感を味わえる… こんなのどうやって攻略しろと…
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