034 新しいギルドルーム!
第三章、開幕です。
祝勝会の翌日。
私たちグランベルジュのメンバー全員──パンさん、ペールルージュさん、リンドールさん、アルテミス、そして私の五人は、ギルド集会所から歩いて数分の場所にやってきた。
「ここや、ここ!」
パンさんが指差す先には、レンガ造りの立派な三階建ての建物があった。
「すごっ、大きい!」
思わずそう声に出てしまうほど、大きい!
今のギルドルームの十倍以上……いや、もっと広いかも?
建物の正面には大扉があり、これなら剛体種ゴブリンでも出入りが簡単そう。
外壁のレンガも、ところどころツタが這ってるけどモノ自体は全然キレイ。
正直、もっと築年数が経った感じの建物を予想してたから、いい意味で裏切られたかも。
でも、どうしてこんな状態の良い建物が空き家になってるんだろう?
そう思っていると、その答えをパンさんが話してくれた。
「ここ、以前はそこそこデカい規模の野良ギルドが使ってたんやけどな。最近解散してしもて、空き家になったらしいんや」
「なるほど、もったいないわね。まだ建って間もないでしょ、ここ」
「せや。築四年とかそこららしいわ。ま、中も見てみよか」
パンさんが鍵の束を取り出す。
おおっ、この倉庫みたいな大きな扉が開くんだ……!
──なんてワクワクしていたら、パンさんはその横にある普通の大きさの扉に鍵を差し込んだ。
「……あれっ、この大扉から入るんじゃないんですね」
「いや面倒やろ! そこは引っ越しのときとか、剛体種ゴブリンが出入りするときに使うつもりや。普段はこっちで十分や」
まあ、確かに……。
少し残念に思いつつも、パンさんに続いて中に入る。
扉の向こうに広がっていたのは、私の想像よりもずっと広い空間。
まだモノが何もないのもあるんだけど、とにかく広い!
一階は吹き抜けになっていて、とにかく天井が高い!
床もこれ、大理石じゃない……?
そして私的に高ポイントなのが、大きな暖炉。
今のギルドルームにもあるけど、何だか雰囲気が好きなんだよね。
「どうや! この開放感!!!」
「広いわね……」
「凄いです!! これならゴブリンズも快適に過ごせそう!」
「せやろ? まだまだあるで、次は二階や!」
階段を上がると、そこには個室がいくつも並んでいた。
「ここは各自の部屋にするつもりや。アルテミスはんの部屋ももちろんあるで?」
「いえ。私はマスターと同じ部屋でなければなりません」
「どうして!?」
「まあ部屋割りはまた今度決めようや。とにかく、一人一部屋でも全然余るくらいあるで!」
「だったら一部屋、リンちゃんの錬金部屋にする?」
「まあ! 良いのですか?」
途端にリンドールさんが目を輝かせ、部屋を見て回る。
「そうするつもりや。まあ、まだ設備が無いけどな」
「こんなに広いお部屋を丸々錬金に使えるなんて……! わたくし、グランベルジュに入って良かったですわ!!」
リンドールさん、本当に錬金が好きなんだな……。
そして、次は三階。
ここは屋根裏部屋といった感じで、たぶん倉庫スペースになりそうな空間だった。
「ここに鍵付きの棚をずらーっと用意して、倉庫にするつもりや。ドロップアイテムとかを管理しやすいようにしてな」
「今までサキちゃんに任せきりだったものね。これで、不在の間もアイテムの出し入れができるわね」
確かにこれからもメンバーが増えてくることを考えると、私が寝てる時とか居ない時にも皆がアイテムにアクセスできる方が良いよね。
今後はドロップアイテムの数も種類も増えてくるだろうし、管理者が私だけじゃなくなるのはありがたい。
一通り見終わった後、私たちは再び一階に戻る。
「これで全部──じゃないんや。実は裏庭もあってな」
外に出て裏手に回ると、そこには十分な広さの裏庭があった。
塀にぐるりと囲まれていて人目は遮られるのに、庭自体が十分すぎるほど広いから窮屈な感じも全然ない。
「庭まであるなんて……」
ペールルージュさんの呟きに私も全力同意で頷く。
庭付きなんてまさに憧れで、内心凄くテンションが上がっちゃう!!
ガーデニングや家庭菜園、みんなでバーベキューもできるんじゃないかな!?
何気ない休日に、ここで本を読むのも楽しそう。
そして何より、人目につかないから安全に”お試し召喚”ができるのもいい。
まだ召喚したことのないスライムとかを、ダンジョンとかの危険な場所じゃなくて、ここで試せるようになるんだもんね。
……ほ、本当にこんなところに住めるの……?
今のギルドルームも秘密基地感があって好きなんだけど、住むなら断然こっちだよね……。
「どうや、サキはん? 気に入ったか?」
「はい、あの……想像以上で……本当にここが私たちのギルドルームになるんですか……?」
「せやで。まあ、まだ契約前やけどな」
「……でも、お高いんでしょ……?」
「月々5,000ギルドポイントや」
「ご、ごせん!?!?」
思わず声が大きくなってしまった。
今の私たちのギルドポイントは約10万。
月に5,000なら……二年も住めない計算……?
「心配せんでも、サキはんが一発ダンジョン行ってレアなドロップアイテムたんまり持って帰ってくれば、全然払える額や」
「……サキちゃん頼りでパンが堂々としないでよ」
「へへっ、すまんな。でもウチかて何もしてないわけやないで? こうしてリンはんを呼んできたのも、サキはんのレアドロップを少しでも高く売るためや!」
パンさん曰く、粘魔核のようなアイテムはあくまで素材で、錬金術でアイテムにしてから売った方が高く売れるんだとか。
だから、錬金術師が欲しかったんだって。
「粘魔核……!? わたくし、粘魔核で錬金ができるのですか!?」
「せや。しかもたんまりあるからいくらでも失敗できるで?」
「……あ、安心ですわ……。わたくし、まだ経験が浅いもので……」
リンドールさんの声が心なしか震えている。
やっぱりレアアイテムで錬金となると、失敗したらと思って不安なのかな。
「まあ、とにかくや。みんな気に入ってくれたみたいやし、早速契約してくるわ! 今週中には引っ越しや!」
「今週中!? 早いですね!?」
「当たり前や! 良い物件はすぐに取られるんやで?」
パンさんが嬉しそうに笑う。
「といっても、まだ家具もなーんもないからな。ルル、良い感じの家具の手配たのむわ!」
「そうね。せっかくだし新居の雰囲気に合った家具をリストアップしておくわ」
「あとはリンはん、錬金設備についても見といてや!」
「もちろんですわ!!!」
──こうして、また忙しい一週間が始まろうとしていた。
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