第106話 神術スキル{鍛治神}
俺と恭平は数日のうちに無事宿題を終わらせ、ユーオン内では着々とギルド戦への準備が進められていた。
「頼まれていたものは一通り完成したぞ。」
「さすが先生、速いね」
「お前がファザオンに行ってる間にゲットしたスキルのおかげでこれまで以上にいいものができたぞ。」
「スキル?」
「あぁ。これは特殊な情報だろうからお前以外がいないところで言おうと思っていたんだが、このゲーム内にはユニークプレイヤーがいて、その下位に位置するエクストラモンスターが存在しているだろ?」
「そうだね。」
「それで今回獲得したスキルが普通のスキルとは異なる扱いらしいんだ。ユニークプレイヤーとモンスター側にしか特殊なものがないのはおかしいと思ってはいたが。」
「っていうと?」
「分類としては『神術スキル』。俺には解説が出たんだが、かつて神々の未技とされた技能らしい。それぞれかなり特殊、かつ厳しい条件を達成しなければ獲得できないらしい。実際に獲得したのは{鍛治神}」
「その条件は?」
「DEX極振りでレベル99に到達、鍛治による装備作成を100回以上行う。この2つを達成する必要がある。」
「それは特殊というよりほぼ獲得不可能じゃん。」
「そうだな。ただその能力は異常としか言いようがない。俺のアイデア次第で好きな装備品を作成することができる。例えばこのゲームにスパイクのついた靴は存在していないが、俺ならそれを作ることが容易にできるようになる。もちろんそれが生み出すバフ・デバフ・スキルも付与されるし、ステータスも自由自在だ。もちろん上限はあるが、これまで作って来たアイテムと比べても工品筆なものを作ることができる。」
「おぉ!それはすごいね。みんなの装備の一新って間に合う?」
「そういうと思って準備を進めてるところだ。ただ一つ、お前の持つパンドラの双剣とゼウスのローブ、キキョウに渡したパンドラの光剣だけは異常な強さを持っていて俺でもそこまでのものは作れない。」
「やっぱりあれのレシピって相当特殊なんだね。」
「そうみたいだな。まぁ、それ以外は一新するし、アイテム名、種類、能力は変更せずステータスをいい感じに振るだけだし、使いやすいと思うぞ。慣らすまでの期間がないから下手に能力は変えない方がいいだろ?」
「そうだね。アイデアさえあればいくらでも強い武器を作れるのはいいね。今度いいアイデアを持ってくるよ」
「それは助かるな。ただ、キキョウ以外にはこのスキルについて話すなよ。バレて困る情報だしな。」
「もちろんわかってるよ。こっちのポーション作成も順調だから、先生はみんなの装備をお願い。」
「にしても大量に作るな。材料集めしてるみんなが可哀想なくらいだ。」
「それは確かにね。みんなばらけさせてるし、同じものをそれぞれ集めすぎないようにもさせてるからね。」
「他のギルドの目がないと考えて動くと痛い目を見るだろうしな。」
「それもそうだね。先生に作ってもらいたいポーションもあるから、そっちもお願いね。」
「透過とかその辺か?」
「そう。今の私のDEXじゃ作れないからさ。」
「わかってるよ。それじゃ気合い入れて頑張りますか。」
「そういえば仕事は大丈夫なの?」
「なぁに。この程度なら仕事に支障をきたさないさ。っていうか俺部活も持ってないし、そこまですることないんだよ。」
「本当生徒の面倒見るの嫌いだよね。」
「まぁ、俺自身この仕事向いてると思ってないしな。」
「いいんじゃない?少なくとも私とキキョウは先生のこと好きだし。」
「そう言ってもらえると嬉しいよ。まぁ、卒業後もずっと関わりそうだけどな。」
「それは確かに。」
「そういえばプロチームの面談はいつ頃なんだ?」
「ギルド戦が終わったあとだね。」
「まぁ、気張らずに行け。キキョウも一緒なんだろ?」
「うん。まぁ、実力重視だろうし、向こうからのお誘いみたいなもんだしね。」
「今回のファザオンもキキョウが勝手に枠とって来たんだろ?」
「そうだね。桔梗のわがまま聞いてくれてるくらいだし、いい子の私は受け入れてもらえるでしょ。」
「いい子、ね。俺はお前らをいいこと一度も思ったことはないが。」
「えー、何も悪いことしてないじゃん。」
「お前らは何もしなさすぎなんだよ。やっとユーオンを通して自分から動いてくれたが。まぁ、これで決まれば進路決定はお前が2番目だ。」
「そっか。キキョウが先に決まってるもんね。」
「他のやつは基本進学だろうが、まだ大学か専門かも決まってない奴がいて困ってるよ。基本大学を目指してもらうが、うちは本人の希望次第で専門に行くことも多いからな。」
「学力的には普通って感じだもんね。」
「あぁ。本当に手を焼いてるよ。」
俺と先生はそんな感じで駄弁りながら作業をして、無事にギルド戦当日までに必要な装備、アイテムは全て揃った。
そして今日、ギルド戦だ!




