第6話 王子と同じクラスなんて聞いてないんだが?③
「ごほん、静かに。それでは次の方自己紹介をどうぞ」
「フィーネ·モデラートです。選択はピアノですわ。三度の飯よりピアノを弾くことが好きです。人混みは大嫌いです。どうぞ仲良くしてくださいませ」
華麗にレント王子の婚約破棄に対してスルーを決めた。さすが私。ご褒美に早く自由時間を。それか個別練習時間を。あ、どちらも意味は同じか。
「これで、自己紹介は全員終わりましたね。それでは、この学園の説明を始めます。ここは、音楽を専門に学べる学校ですが、それ以外にも異国語や、礼儀作法の教科もあります。専門科目以外を決して愚かにしないように。練習室は、曜日は関係なく朝の6時から夜の9時まで使用が可能となっていますが、練習以外の目的以外で使わないようにしてください」
私の脳内の中で、練習室は、曜日は関係なく朝の6時から夜の9時まで使用が可能というワードが何度もリピートされた。
あぁ、何て素敵な学園生活なのだろう。練習室が使い放題なんて。ピアノに集中出来る環境が整えられている。たった一点。真横にいる金髪のキラキラとしたイケメンがいることを除けば。
レント王子の方を向くとバッチリ目があった。レント王子は一度顔をしかめてから何事もなかったように作り笑いをしてきた。
失礼だな。この王子。まあいいか。終わり次第練習室に行こう。なんたって私は今いつでもピアノを弾く権利を手にいれたので最強なのだ。
「質問がないようですので、これで授業を終わります。今日はこの後何も授業はないですが、先ほどお配りした課題曲の練習に励むように」
私の心の中のやったーという声とは裏腹に周りからは「まじかよ、これ全部」「寝れないわ」等の声が聞こえてきた。
確かに配られた楽譜はずっしりと重く、本のように枚数が多かった。これが幸せの重さ?
では、さっそく練習室へ。
スキップで練習室に向かいたい気持ちを抑えながら、紗綾の方を向く。
「レガート嬢、練習sh」
「まずは、寮に行くわよ、私たち同じ部屋なんだから」
「まあ、そうですよね、行ってあげますわ。しょうがないので」
紗綾に手招きで呼ばれたマリア嬢が照れながら近づいてくる。
「ちなみに拒否権は・・・」
「今、いっぱい楽譜貰ったでしょ、あんた失くすわよ、いいの?」
「行きましょうレガート嬢」
私は、目の前に散らばっていた荷物をかき集めて立ち上がる。
「物分かりがよくてよろしい。はい行く」
「同じ部屋が嬉しいなんて思ってないわよ全然」
「聞いてないわよ、私は嬉しいけどね」
「っ」
校舎を出ると、空はオレンジ色に染まっていた。練習室から漏れた楽器の音がかすかに聞こえる。
「紗、レガート嬢って意外と人たらしですわよね」
「あんたに言われたくないわ」
「フィーネ様は、人たらしだと思いますわ」
「なんかブーメラン来てましてよ」
「あんたが始めたんでしょ」
「理不尽」
三人で話しているといつの間にかrestSと掘られた置石の横にある建物が目の前に映った。
このSは、もしかしてSクラスのSなのかな。
5階建ての建物であり、何人かもう生徒が帰ってきているのか階数事に2、3箇所程、窓から部屋の光が漏れている。
「ここが、私たちの部屋・・・。まあ、良くないこともないわ」
「私は、部屋にピアノがないのが残念」
「練習室あるからいいでしょうが」
「それとこれとは話が別ですわよ」
「どうでもいいけどトイレに近いベットは私がいただくわ」
「私は、フィーネ様の隣が」
「てことはあんたそこね」
「私の選択権は???」
私が悪役令嬢であなた達は取り巻きだと思っていたんですけど、悪役令嬢立場弱くないか。気のせいだよね。
なんて考えていたが、吸い込まれるように飛び込んだベットに溶けていく。なにこれ柔らかい。
大きな部屋にベット、机、そして備え付けのウォークインクローゼットが3つずつある簡易的な作りだが、貴族が通うことも多いためかカーテン等の刺繍が細かく質が良く感じた。
なんだかんだこの3人が同じ部屋で安心したなあ。
いそいそと持ってきた荷物の中身を整理する紗綾を横目に大きなあくびをする。だめだ眠たくなってきた。
「ピアノバカでも眠気には勝てないのね」
「なんか赤ちゃんみたいですわ」
なんかひどいこと言われている気がするが、初めての場所ということもあって体は疲れているらしい。言い返す気力もなくそのまま布団に溶け込む。
ん・・・。
「起きなさいよ、食堂閉まるわよ」
「私どれくらい寝てた?」
「1時間ちょっとですわね」
そういえば、お腹が空いている気もする。
もう少し寝たい気持ちを抑えながら体を起こす。部屋を見回すとマリア嬢と紗綾のウォークインクローゼットに服が掛けられており、準備は終わったようであった。
「行く途中に練習室があるから、食堂帰りに練習してくれば。私はもう疲れたから帰るけど」
「そうしようかしら」
「私も疲れたので今日はご飯食べたらレガート様と戻りますわ」
それなら、鞄に何冊か楽譜を入れて持っていこうかな。私は、今日貰った楽譜から何枚か選んで鞄に入れた。
寮から出ると、もう外は暗くなっており、空気も少し肌寒く感じた。学園内ということもあり、昼では気づかなかったが街灯が道の周りに設けられており、これなら道に迷うことはなさそうだとほっと胸をなでおろした。
「それにしても、人が少ないですわね」
「皆、練習してるのかしら。でも身分が高い生徒が練習するイメージないのよね・・・。まあいいわ、貸し切りでいいじゃない食べましょう」
やはり、貴族も通うか食堂内は天井が高く、上を見上げると大きなシャンデリアが吊り下げられていた。私たちは、空いていた窓に近く、外の景色を見ることができる席に腰かける。
メニューは魚類か肉類か選べるようになっており、日によって内容が変わると書かれていた。




