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093 宝具解放の反動


 目を覚ますと見覚えのある天井が見えた。


 ……雪の結晶に北側にしか咲かない花の柄、ここは王都スノールの城の中か。

 という事はここは昔一時的に俺が借りてた部屋……。

 まだ、生きているということか……。


 俺は壁に飾られたブレドのふざけた格好をした肖像画を見つけて間違いない事を理解する。


 まだ、あれを飾っているのか……。


 俺は呆れながら肖像画を見ていると急に身体中に痛みが出てきた。


 くっ、この痛み具合は……。


 俺は試しに身体を動かしてみるが、激痛で指先さえも動かせず、口も上手く動かせない状態だとわかった。


 これは参ったな……。

 何もできないぞ……。

 

 俺は完全にお手上げ状態でいると、勢いよく扉が開いてサリエラが部屋に入ってきた。


「キリクさーーん!」


 そして、嬉しそうに叫んだサリエラは俺に勢いよく抱きついてきた。

 しかし、今の俺にはこれは苦痛なだけでただの地獄であった。


「ぐっ!」


「キリクさんがやっと目を覚ましたあ!三日間も起きないから心配したんですよ!本当に良かったあ!」


「う……くるし……」


「えっ?美しいって……もう、起きてすぐに何言ってるんですかあ!」


 サリエラは頬を赤くしながら俺を見つめてくるが、間違いなく俺は美しいなんて言っていない。


「……るしい……」


「めしい?なるほど!お腹が空いたんですね。ちょっと待ってて下さい」


 サリエラはそう言うと慌てて部屋を出て行ってしまった。


 あいつ……。

 まあ、勘違いだが離れてくれたし結果的に良かったか……。


 俺はほっとしながら、どうにか動けないか頑張っているとサリエラがパン粥を持って来てくれた。

 だが、俺は指先すら動かせず一人では食べれない。

 そこでなんとか力を振り絞り説明すると、サリエラは介助すると言って聞かず、結局食べさてもらうことになってしまった。


「キリクさん、あーーんですよ」


 サリエラは早速、スプーンにパン粥をすくい俺の口元に持ってくるが、何故か口元が緩むほど嬉しそうな顔をしている。

 何故だろうと考えたすえ、俺を赤ん坊扱いしているのだろうと結論に至った。


 まあ、実際に今の俺は赤ん坊以下だろうからな。


 俺は諦めて口を開ける。

 サリエラは丁寧にパン粥を口に入れてくれたが、どうやら今の俺は上手く飲み込むことすらできない状態だったらしく、咽せてほとんど口から溢れてしまった。


 これは霊薬の反動が強い時の状態だな……。

 明日にはゆっくりなら動けるだろうが、おそらく当面はまともには動けないだろう……。

 ここは素直に寝ておくか。


 俺は食事はいいからサリエラに寝ると言おうとしたら、サリエラは赤くなりながら何故かパン粥と俺を交互に見つめ、何か決心した様に頷くと俺に話しかけてきた。


「き、キリクさん、こ、これはノーカンってやつです。わ、私の初めてはこれにはカウントされませんからね!」


「……んの……はなしだ?」


 俺が疑問に思っているとサリエラはパン粥をスプーンですくうと自分の口に入れてしまい、俺に近づき口移しをしてパン粥を流し込んできたのだった。

 そんなサリエラの行動に俺は驚いたが、おかげてパン粥をこぼさずに上手く飲み込む事ができた。


「うん、いけそうですね」


「……リエラ」


「どうしました?」


「……まん。嫌な……とをさ……た」


「ぜ、ぜ、ぜんぜん嫌じゃないですよ!あれ、わ、私は何を!これじゃあ……あわわっ!!」


 赤くなりながら慌てるサリエラに、俺は少し笑ってしまった。


「……ふふ」


「ふえっ?あの仏頂面のキリクさんが笑った?」


「……れだって、笑う……ともあ……」


「そうなんですか……。何か恐ろしいことが起きるかと思ってしまいましたよ」


「……う、起こった。」


「確かにもう起こりましたね……って、そういえばキリクさんは倒れてて知らなかったかも知れないですけど、王都に英霊になったアレス様が現れたらしいんですよ‼︎」


 それからサリエラは目を輝かせながら、人伝に聞いたあの日の戦いを俺に話してくれる。

 だが、やはりというか、サリエラが話す内容はかなり誇張されており、俺の記憶とはだいぶ違うものになっていた。


 まあ、俺だとバレてなければ問題ないか。

 ちゃんと仕事をしてくれたブレドとベアードには会ったら礼を言っておこう。


「……うか」


「もう、そうかじゃないですよ。あのアレス様ですよ!はあ、もうちょっと早く着いてたら、この目で見れたかもしれないのに……」


「……んねんだっ……な」


「ええ、残念です……。まあ、おかげでキリクさんとすぐに合流できましたけどね」


 そう言いながらサリエラは嬉しそうな顔をするが、そんなサリエラを見て俺はふと疑問を感じた。


 そういえばなんで城の中にサリエラがいるんだ?

 こいつ、スノール王国と関わりがあるのか?


 そんな事を思っていると、ノックと共に部屋に二人の男が入ってきた。

 俺はそのブレドを若くした様な二人の顔を見てすぐに誰なのかを理解した。


 第一王子のアラミスと第二王子のブレイスか。

 小さい時に中央に勉強しに行ってから会っていなかったが、ずいぶん二人とも成長したみたいだな。

 アラミスは体格も顔も父親のブレドに似ており、ブレイスは体格は俺に近い感じで顔は若干母親である王妃のステラに似ていた。


 俺が懐かしそうに二人を眺めていると、二人を知らないと思っているサリエラが紹介しだした。


「キリクさん、こちらはスノール王国のシュタイナーズ第一王子アラミス様とシュタイナーズ第二王子ブレイス様です。今回、お二人が私を城に招待していただいたからすぐにキリクさんと合流できたんですよ」


 それから、サリエラは二人と何故、知り合ったのかを説明してくれたのだが、どうやら彼らが馬車で中央から王都に戻っている時に魔物に襲われていたところを助けたらしい。

 そしてそのまま王都に招待されて城に入った時に、サリエラの精霊が俺がいると教えてくれたとのことだ。


「……うだった……のか」


「それで、二人が王都の為に戦ってくれたキリクさんにお礼を言いたいそうで……」


 そう言うと、サリエラはなぜか若干、迷惑そうに話すので、疑問に感じていたがすぐにアラミスが俺に話してきた。


「キリク殿、今回、スノール王国の危機に身をていして戦って頂けたそうで本当に感謝する」


 アラミスはそう言うと冒険者である俺にたいして頭を下げてきた。

 しかし隣りにいたブレイスは不遜な態度で俺を見てるだけだった為、それに気づいたアラミスがブレイスを肘で突くとやっと俺に軽く頭を下げてきた。


「キリク殿、すまん。こいつは普段こういう態度はしないんだが、同じ男として今回だけは許してやって欲しい」


 そう言うとアラミスはまた頭を下げきた。

 そんなアラミスの言葉に俺はなんだかよく理解でなかったが頷いておくことにした。

 すると、サリエラがパン粥が入ってる皿を二人に見せつけるようにしながら話す。


「では、もう、お二人共よろしいでしょうか?キリクさんは早く元気になる為に栄養をつけないといけないんです」


「……ああ、すまない。ブレイス行こう」


「……わかった」


 二人は扉の方に向かって行ったので、サリエラは手に持っていたパン粥を俺に見せながら話しかけてきた。


「じゃあ、キリクさん残りを食べましょうか」


 そう言うとサリエラは再びパン粥をスプーンですくうと、自分の口にいれ口移しで食べさせてくる。

 すると、ガタンという音が聞こえた為、音の方を見ると扉付近でブレイスが驚愕の表情を浮かべながらこちらを見ていて、そんなブレイスをアラミスは哀れみの目で見ながらそっとブレイスの肩を掴み、連れ出していくのだった。


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