092 過去編10 聖オルレリウス歴354X年四ノ月
俺に角をへし折られたゴランはまだ何が起きたかわからなかったが、だんだん痛みと俺が持っている角を見て理解し絶叫をあげた。
「ぐわわああかああぁあぁぁーーーーー‼︎」
「ぎゃあぎゃあ、うるさいんだよ」
俺はゴランのみぞおちに一撃入れると、ゴランの身体は一瞬浮いた後、顔面から床に落ち、血溜まりの中で土下座をするような格好になった。
「おいおい、今更謝っても駄目なんだけどな。ああ、これ汚いから返すぞ」
俺は持っていた角をゴランの後頭部に根元まで深く突き刺すと、ゴランは二度と動かなくなった。
「やれやれ、ここまで強くなるのか……。これは大軍連れて攻めてくるわけだ」
俺は汚いものを触ってしまい、顔を顰めながらハンカチを取り出し手を拭く。
すると、やっと状況が飲み込めた様子のゲランが俺から距離を離し杖を構えた。
「餓鬼がああ!暗黒領域より我に黒き炎の力を与えたまえ……ダークファイア・ボム!」
ゲランの杖から黒い炎の塊が飛んでくる。
しかし、その飛んでくる黒い炎の塊のスピードは今の俺には遅すぎ、届く前に俺は宝具がある場所に到着していた。
そして、俺が先程いたところで黒い炎の塊が爆発し、その跡を見たゲランは後ろに俺がいる事に気づかず大笑いしはじめる。
「ぐふふふッ!やはりたいしたことなかったな!燃え尽きてカスすらもでんとは‼︎」
ゲランの顔はこちらから見えないがおそらく、醜悪な笑みを浮かべているのだろう。
しかし、そんなゲランを俺は一瞥した後、宝具を見る。
こいつ、本当に使えるのか?
ゆっくりと宝具を触ると、突然、光り輝き宝具は形を変えて俺を包み込んだ。
その瞬間、宝具にどんな形の武器と防具になってほしいか求められた気がした為、俺はある形を想像すると宝具は求められた通りの形になっていく。
更に名前を聞かれたような気がした為、俺はすぐに心で答えた。
……アレス。
お前、一緒に冒険したいって言ってたろ。
だから名前を借りるぞ。
そして、光りが収まっていくと、宝具は俺の慎重に合わせた大剣と全身を覆うフルプレートになっていた。
オルフェリア王国のフルプレートしか知らないから、似た感じになってしまったが、まあ後でも形は変えれそうだしいいか。
しかしこの大剣も鎧も軽いな。
俺は大剣にちょっと力を入れ振り回してると、斬撃が生まれ周りの壁や床に深い傷ができてしまった。
何となくこいつらの感覚はわかるがやはり数をこなさないと駄目だな。
俺は大剣を見つめながらそう思っていると、誰かが俺を見ていたので振り向くと、身体中大火傷をしたゲランが杖を支えに必死に立って俺を睨んでいた。
そんなゲランに俺は疑問に思ったことを聞いてみた。
「……お前、何で火傷してるんだ?」
「な、な、何でだと⁉︎お前が放った光りの力の所為だろ‼︎」
「ああ、あれそんな力もあるのか……。良い実験になった。まあ、礼は言わんぞ」
「じ、実験だと……ふざけるな‼︎俺様は上位魔族ゲランだぞ‼︎」
「上位魔族でその程度か。正直、ゴブリンの方が強いんじゃないのかって思ってしまうな」
「ご、ご、ゴブリンだとおお‼︎あんな下等なものと一緒にするなああぁ‼︎」
ゲランはまた杖をこちらに向けたので、俺はその場で大剣を振って斬撃を飛ばし、ゲランの肩から先を斬り飛ばした。
「ぐぎゃああ!腕がががああああーーー⁉︎」
「その程度の痛みで騒ぐなよ。あいつはもっと痛かったんだぞ……」
俺は更に斬撃を飛ばしもう片方の腕も切り飛ばす。
「ぎゃあああぁぁあーーー‼︎」
「お前ぎゃあぎゃあうるさいぞ。父上達の痛みに比べればたいしたことないだろ」
「な、なんてことするんだあぎざまあ……」
「お前達がした事に比べたら、たいしたことないだろ……」
「ゆ、許さなんぞお……ぎ、ぎざまあ……」
「何を許さないんだ?あ、そうか」
俺はゲランの片足を斬り落とす。
「ひぎぎいいいぃーーー‼︎」
「魔族ってのはそんな泣き方もするのか。オルフェリア王国の皆んなにも聞かせてやりたかったな」
「ゆるじでえええぇぇ……」
「ははは、ないない。いやあ、魔族って面白い事言うんだな……」
「ひひひ、まぞぐおも……」
ゲランが何か言ってる最中に俺は大剣でゲランを縦に叩き斬った後、呟いた。
「お前うるさいよ」
それから俺は倒した魔族の死体を端に蹴り飛ばしていく。
なんだか近くにあったみんなの遺体が汚れるような気がしたからだ。
父上、バロン兄様、できれば一緒にこの国を発展させたかったし、酒を一緒に飲みたかったです。
母上、レイア様、ライラ姉様とアリシアの為に魔王達が中央に行かないよう頑張ってみます。
後、賭けは三人とも外れでした。
それとみんな、この国を守れなくて本当に申し訳ない……。
俺は黒焦げになったみんなに向かって深く頭を下げると、城の外に出て一番高い所に登った。
「魔物の気配しかない……」
燃え盛る城下町を見た俺は、全体の気配を調べ、生きてる者がもう俺しかいないという事を理解してしまった。
「ははは……。俺一人しかいない国ってなんだよ」
誰一人守れなかった勇者ってなんだよ……。
それにライラ姉様とアリシアに会ったらなんて説明すれば……。
いや、俺みたいな誰も助けれなかった奴が二人に会っちゃいけないよな……。
二人に会って喜ぶなんて苦しんで死んだみんなに悪いよな……。
俺だけ幸せになっては駄目なんだ。
じゃあ、俺はどうしたら……。
その時、アレスの言葉を思いだした。
そうだな……そうしよう。
たが、その前に……。
俺は周りを見渡し、今だに城下町に人がいないか探し回ってる沢山の魔物を見る。
最後ぐらいは王族らしい事をやってくるよ。
それで、キールという名前の人物は永遠にこの場所でみんなと一緒に眠りにつく。
そしてアレスという冒険者がここを旅立つんだ。
だから、そっちにいくのはもう少し待っててくれ……。
それからしばらくして、オルフェリア王国領全体に沢山の断末魔の叫びが響き渡り、数十日後にやっと他国がオルフェリア王国に起きた事に気づき、急いで兵を送った時は全てが終わっていた。
彼らがきた時にはオルフェリア王国内は人も魔物もおらず、簡易の墓が沢山並んでいるだけだった。
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