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091 過去編9 聖オルレリウス歴354X年四ノ月


 気づくと辺りは真っ暗闇だった。

 しかも少し動かすだけで身体中に痛みを感じる。


 ……痛みはあるって事は死んでないのだろうか?

 そうなると、魔族の魔法で天井が破壊されて、今は瓦礫の下にいるってことだろうな。

 けれど、生きていられるのも時間の問題だろう……。


「失敗したな……」


 俺はつい口に出してしまうと物音と共に弱々しい声が聞こえてきた。


「……キール」


「アレス?お前生きてたのか!」


「……僕より君の方は大丈夫?」


「身体中が痛くて動かせないが今すぐ死ぬことはなさそうだよ……。お前が咄嗟に身体を押してくれたおかげだな」


「そっか、良かった……」


「もう少しで隠し通路に行けたんだが、すまない……」


「……気にしないでよ。それより、この国はどうなるのかな……」


「さっきの魔族の力で理解したが敵の力が圧倒的過ぎだ。おそらく王都だけじゃなく領内の町もやられてるだろうからオルフェリア王国は終わりだろう……」


「……だよね。父さんもおそらく勝てないだろうなあ。それなら君に聞いて欲しいことがあるんだ」


「いいけど俺への愚痴は勘弁してくれよ」


「ふふ……相変わらずだね。聞いてもらいたのは僕のわがままだよ」


「わがまま?」


「……うん、もし生き残れた場合、君には冒険者になって欲しいんだ」


「……何で俺が冒険者にならないといけないんだ?」


「君なら絶対凄い冒険者になれるからだよ……」


「いや、それはないだろ……」


「……あるよ。冷静沈着だし状況判断も迅速にできる。さっきだってパニックだった僕をすぐに掴んで逃げてくれたじゃないか。もし逃げないであそこにいたら僕達は今頃黒焦げになってたよ」


「だが、今は瓦礫の下だ。今すぐ死ぬか、後で死ぬかってだけだろう。だから俺は冒険者にはなれないよ……」


「……大丈夫だよ。後、少しで加護が現れる」


「そうか、勇者の加護か。それならアレスに現れるだろうから、さっさとこの瓦礫をどけてくれよ」


「……無理だよ。僕はもう駄目そうだから」


 俺はアレスの言葉に驚き、痛みも気にせず声の方を見るが、やはり暗くてアレスの状態を見ることができなかった。


「アレス、お前、何を言ってるんだ?」


「……身体の感覚がもうないんだよ」


「なっ⁉︎おい、アレ……痛っ」


「……無理はしないで」


「無理をするだろ!アレス、大丈夫なのか⁉︎」


「……僕の事はいいから。キール、いいかい、勇者の加護が現れたら戦わずに逃げるんだ」


「何、言ってんだ!俺に勇者の加護なんて出るわけないだろ!」


「……出るさ。なんだか……今ならわかるん……だよ……」


 アレスの声が更に弱々しくなり、俺は焦ってアレスの方に動こうとするが、痛みだけでなく瓦礫が邪魔をして全く身体が動かなか。


「おい、アレスしっかりしろ!」


「……約束……して。僕の……代わりに……冒険者……に……そして……世界を見てきて……」


「わかった!わかったからいかないでくれ‼︎」


「……本音……は、君と……一緒に……冒険し……」


 言葉の途中で喋らなくなったアレスに俺は嫌な予感がして声をかける。


「アレス?おい!アレス!」


 俺の声にアレスが全く反応がない事にしばらく呆然としてしまう。


 アレスも死んでしまった……。

 なんだよ……。

 どうして勇者なんてのをこの国で誕生させようとしたんだよ……。

 おかげで父上も母上もレイア様もバロン兄様もアレスも国の皆んなもいなくなってしまったじゃないか……。


「うっ、うっ、うう……」


 俺は今まで抑えていた感情をもう止めることができず泣きだした。

 だが、いつもなら、優しく声をかけてくれる人達ももういない……。


 ……いや、まだいる。


 俺はライラ姉様とアリシアを思い浮かべる。

 もし、このままこの国にいる魔物が中央に行ったら大変な事になるかもしれない。


 それは絶対駄目だ!


 そう思った瞬間、誰かに頬を優しく撫でられた。

 それはとても心地よく、俺の心を落ち着かせていく。

 更に誰かの額が俺の額に当たると同時に、色々な情報が流れこみ、複数の手が俺の肩や背中におかれると身体中の痛みがとれ力がみなぎって来るのがわかった。

 その瞬間、俺は何が起きたかを理解し自分の上に積み重なっている瓦礫を吹き飛ばし立ち上がった。


「……遅すぎんだよ」


 俺はそう呟くと、近くのカーテンを引きちぎりアレスの遺体にかけた。


「全部終わったら皆んなと一緒に弔ってやるからな。後、逃げる必要はなさそうだよ」


 そう言うと俺は謁見の間に向かって歩きだした。



◇◇◇◇



 その頃、謁見の間ではゲランともう一人の魔族が話をしていた。


「ゲラン、外の連中もほぼ殺したぜ」


「ゴラン、逃げたゴミはいるか?」


「そこまでわからんよ」


「ちっ、使えん奴だな。もし逃げたゴミのなかから勇者ってのが生まれたら貴様の所為だからな」


「ふん、もし、そんなのが現れてもわしが一捻りで殺してやる。」


「そういう問題じゃないんだよ。やはり、魔王様に私のように頭が回るやつを配下にした方が良いと進言するか」


「いけすかない野郎だな。ここで、どちらが上かはっきりさせた方が良いらしいな」


「くふふふ、角の長い俺が強いし上に決まってるだろうが」


「違うな。ここではお前らは汚物以下だよ」


「「⁉︎」」


 突然、近くで声が聞こえたが、魔族の二人は反応できなかった。

 更に、一人の魔族は気づかないうちに攻撃をされていたのだ。

 それは一人の少年が一瞬でゴランに近づき、魔族の額に生えてる角をへし折っていたのだ。


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