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081 覚悟

 やれやれ、情報を得れたとはいえ、ザンダー達は厄介な奴を置いていってくれたな。


 俺が闇人の道化師ピエールを警戒しながら見ていると、ブレドとベアードも俺の隣りにやってくる。


「キリク、ベアードと一緒に隙を作ってくれ。俺が宝具を解放して奴に一撃を撃ち込む」


「わかった。では、ベアード殿、俺達は国王様の為に時間稼ぎをしよう」


「殿はいらねえぞ。できれば、道化師のやろうに一撃は入れてやりたいが今回は国王に譲るか」


 俺とベアードはお互いに頷くと道化師に向かって走り出す。


「うわーああわあーーい。わざわざ死ににきてくれてありがとおおーーごさいまああすう!」


 道化師はそう言いながら手からいくつもボールを出してきて俺達に投げてきた。


「あれに当たると威力はないが爆発するはずだ。気をつけろ」


「おう!」


 俺は剣とナイフを両手に持ち、攻撃を避けながら回り込むようにして道化師に攻撃する。


「どひゃあぁーー‼︎」


 道化師は大袈裟に避けながらも俺に攻撃しようとしたが、ベアードが突き攻撃をしてきて道化師の邪魔をする。


「あなた邪魔でーーす!」


「うっせんだよ!イカれ野郎‼︎」


「ベアード、合わせるぞ」


 俺はベアードに合わせて攻撃を仕掛けていくと、徐々に俺達の攻撃を捌けなくなってきた道化師は慌てだす。


「ま、間に合わなーーいでえす‼︎」


「国王に任せるって言ったがあ、やっぱり一撃ぶち込ませろやあ!」


 ベアードはそう言うと、隙ができた道化師の脇腹を叩きつける様に斬りつけた。


「いだああーーいいぃ‼︎」


「追加だ」


 俺は斬られた脇を押さえて苦しむ道化師にナイフを投げて足に突き刺す。


「よし、国王様!頼むぞ!」


 俺とベアードは道化師の側を離れると、ブレドは持っていた剣、宝具クラレンツを掲げて叫んだ。


「クラレンツ宝具解放!堕ちし者に聖なる救済を、迷いし者に光りの道を示せ‼︎」


 クラレンツの刀身が光り輝き、ブレドが振り下ろすと光の刃が動くことのできない道化師に飛んでいって突き刺さり、辺り一面を光りで包み込んでいった。


「よし、やったぞ‼︎」


「流石は我が国王だ」


「ふう、ちょうど力のアミュレットの効果が切れた……。しかし、あの道化師の実力は間違いなくダマスカス級最強クラスだったな……」


 俺は溜め息を吐きながらそう呟くと、光りの中から突然、声が聞こえてきた。


「そりゃ、そうですよおーー。わたしこう見えて魔王様直属の配下ですからあああぁ」


 突然の声に俺達が驚いて光りの方を見ると一瞬で光りがかき消え、ボロボロの状態の道化師が満面の笑顔で立っていた。


「なっ、クラレンツの宝具開放で倒しきれなかっただと……⁉︎」


「危なかったですよおお、凄ーーく、痛かったです。指をナイフで斬った時の痛み程ではありませんけどねえぇ」


「いや、そりゃねえだろ……」


「はい、嘘です。もう、ボロボロですよおお、だから、もう、裏切り者は追わないで……代わりに皆さんの命を終わらせまあーーす」


「何をする気だ?」


 俺の質問に道化師は満面の笑顔を見せながら浮かび上がる。


「わたし魔王様直属の配下、スペードのクラウン、ピエールはあ、自らの命を使ってえぇ、この城を壊しまあああああーーす‼︎ぎゃはははははははははははは‼︎」


 道化師は大笑いをしながら、謁見の間の壁を破壊して外へと飛び出していってしまった。


「なっ⁉︎何処へ行く気だ⁉︎」


「わかんねえが嫌な予感しかしねえ」


 ブレドとベアードが慌てて穴の方に駆け寄っていったので、俺も後を追って壊れた壁から外を見ると、目に飛び込んできたのは道化師ではなく眼下に見える王都の城下町を破壊してまわる大量のドラゴンゾンビだった。

 

「くそっ!なんてものを放ってるんだ⁉︎呼び出した死霊術師達は絶対許さんぞ‼︎」


「国王よ、今は死霊術師達は冒険者や兵士に任せればいい。それよりも物騒なことを言いやがった道化師を探さないと」


「おい、いたぞ。二人とも上を見ろ」


 俺が指差す方向をブレドとベアードが見て驚く。

 道化師は城よりも更に高い位置に浮かんでるだけでなく、両手を上に掲げて何か喋っているようだった。


「……あれは何をする気なんだ?」


「おそらくこの大きさの城を壊すと言ってるから、間違いなく禁呪だろうな……」


「それはまずいだろ⁉︎くそっ‼︎クラレンツの宝具解放は今日はもう使えんのにどうすればいいんだ⁉︎」


「わからねえ。あの距離は魔法は届かんし、城の連中がやられたらスノール王国は終わっちまう」


 ブレドとベアードは焦った様子で、何か考えている様子だったが結局、思い当たらなかったのか壁や床に八つ当たりをしてしまう。

 しかも道化師が両手を広げた先には、城を覆うほどの巨大な魔法陣が現れていた。

 その魔法陣の文字と絵の並びで、俺はあれが何の魔法なのかわかってしまった。


「……エクスプロージョンを唱えるつもりか」


 俺の言葉にブレドとベアードは目を見開き俺を見てくる。


「キリク、こんな時に冗談はやめろよ……」


「いや、あれは間違いない」


「ど、どうすれば……フォウを呼んできてもおそらく無理だよな……」


「ああ」


「どうすりゃ良いんだ?」


「くっ、私一人の命で済むならなんだってやる!何かないのか⁉︎」


 ブレドとベアードはもう打つ手がないのか頭を抱えはじめた為、俺はその光景を見て溜め息を吐いた。


 やはりやらなければ駄目か……。


 俺はブレド達に向かって声を掛ける。


「二人とも落ちつけ」


「キリク、落ちついてなどいられるわけが……まさか、お前……」


「……ああ、仕方ないから俺がやる」


「だが、またお前の身体への負担が……」


「やるしか手はないだろ。だから……昔、約束した事を守れよ」


 俺はブレドの肩を軽く叩くと、霊薬が入った小瓶を取り出し一気に飲むのだった。


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