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007 絡まれる元勇者

「わかった。その件、自分達のパーティーが受け持とう」


 話し合いで黙っていた鉄獅子のリーダー、ランドが前に出てきた。

 確かに避難してきた冒険者の中では一番ランクも高く信用度からも適任だった。

 村長が俺を見てきたので頷く。


「では、ランドさん、お願いしてよろしいでしょうか?」


「村に害がこない様、全力を尽くす」


 そう宣言すると、鉄獅子のパーティーはすぐに行動に取り掛かった。

 それで話も済み、皆んな解散になったのだが、何人かの冒険者が俺を睨みつけながら近寄ってきた。


「おい、嘘吐き。お前も冒険者の端くれなら、レクタルを救うのを手伝えよ」


「はっ?」


「はっ、じゃねえよ。お前みたいな役立たずでも、荷物持ちぐらいはできるだろ」


 冒険者達はそう言って悪意のこもった表情で笑ってくる。

 なので、俺は呆れた表情を向けて手であしらう仕草をしてやると、冒険者の一人が舌打ちしながら突然殴りかかってきた。


 やれやれ……。


 俺は殴りかかってきた相手の攻撃を避けて腕を掴むと捻り上げる。

 途端にそいつは情けない声で悲鳴をあげ始めた。


「ぎゃあぁーー‼︎い、痛えよ!離せよおぉ‼︎」


 俺は更に強く腕を捻りながら周りの連中を睨む。


「俺はお前達の荷物持ちなんてやる気はない。それより、お前達もさっさと村を守る為に働け」


 俺がそう言うと冒険者達は怒りに満ちた顔を俺に向けながら武器に手をかけはじめた。

 そんな連中に俺は溜め息を吐き、相手をしてやろうとしたら、ランドが間に入ってきて冒険者達を睨みながら一喝した。


「貴様ら、何をしている‼︎」


「……この嘘吐きが突然そいつの腕を捻り上げたんだよ」


「そ、そうだ!」


 冒険者達が俺を指差し睨んでくるが、ランドは冒険者達を睨むと剣を抜いた。


「自分は見ていたぞ。貴様らがキリクを愚弄しているのを」


「な、なんだよ!お前、そいつの肩を持つのか?」


「自分で見て判断したまでだ。そうなると自分も愚弄されている事になるな」


 そう話した後、ランドから殺気が出始める。

 すると、冒険者達は怯えた表情に変わり、テントの方に逃げていってしまったので、俺も掴んでいた冒険者を離す。

 すると、そいつは俺を一瞬睨むと捻られた腕を押さえながら逃げていった。

 それを見たランドはふんっと鼻を鳴らすと剣をしまう。


「彼らも気が立っているのだろうな」


「気が立ってなくても絡んでくるだろう。ああいうのは」


「うむ……」


「とりあえず礼は言っておこう。助かった」


 俺の言葉にランドは驚いた表情をするが、すぐに真顔になる。


「気にしないでくれ。キリクには余計な事だっただろう。それよりレクタルに行くのか?」


「……さあな」


「そうか……。まあ、もし行く気があれば声をかけてくれ」


 ランドはそう言うと俺が何か言う前にさっさと仲間の元に戻っていってしまった。


 レクタルの住人を助けに行くのか。

 できるパーティーだな。

 

 俺はランドの後ろ姿を見ながらそう思うのだった。



◇◇◇◇



 あれから、俺は空き家に戻り回復薬作りなどをしていたのだが、外が騒がしくなったので見に行くと、村の入り口付近でグールがランドに倒されているところだった。


 しっかり仕事をしてくれてるようだな。


 俺は感心しながらランド達を見ていると、俺に気づいた村長が笑顔で駆け寄ってきた。


「キリクさん、あなたがしてくれた事は凄いですよ!グールになりかけた者は村に入れないみたいなんです」


「どうやらちゃんと機能したようだな。これなら村への脅威は少し減るだろう」


「はい。それと、レクタルの近くで野営地を作ると、先程、早馬で伝達が来ましたので、しばらくしたらレクタルから避難してきた人達もそちらに向かうようです」


「それは良かったな。後は魔物が村に来ない様にすれば問題ないか」


「それも、もうすぐ、王都から騎士団が来て巡回をしてくれるらしいんですよ」


「そうか、では俺は明日にはここを発っても大丈夫そうだな」


「キリクさん、行かれてしまうのですか?」


「ああ、ちょっとレクタルの様子を見ておきたいからな」


「なるほど。では、明日までゆっくりしていって下さいね」


 村長は頭を下げると、また忙しそうに避難者達の方に向かっていった。

 俺もとりあえず、周りが静かになったので戻ろうとすると、鉄獅子パーティーにいた聖職者の格好をした女が俺に駆け寄ってきた。


「すみません、キリクさん。私は鉄獅子パーティーにいるサラといいますが少しお聞きしたいことが」


「なんだ?」


「あの、不躾な質問なんですが、死霊系の魔物除けって私でも簡単に作れるでしょうか?」


「残念だが錬金術の中でも中級以上の技術がいる作業だから、簡単に作る事はできない」


「そ、そうですか……。ありがとうございました」


 サラは頭を下げると、がっかりした様子で戻っていくが俺は感心していた。

 普通ならそれでも作成方法を聞こうとしてくるからだ。

 なんせ、作成方法を売れば金になるからである。


 まあ、聞いても教える気はないんだがな。

 なんせ、使ってる材料が魔物の血や骨や場合によっては、心臓だったりするので死霊術だと勘違いされる可能性があるのだ。

 何より、材料の一つに問題がある。

 対魔物薬のほとんどにはハイエルフの血が必要になる為、人族であるサラには無理なのだ。


 まあ、俺と同じ見た目のハーフだったら可能かもしれないが……。


 そんなわけはないだろうと、俺はサラの後ろ姿を見てそう思うのだった。


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