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048 白銀の騎士

サナエside


 しばらくサリエラと戦っていた私だったが、分が悪くなり逃げ出していた。


 もう!なんなのよ!


 私は内心、焦りを感じていた。

 依頼内容がアダマンタイト級冒険者サリエラの足止めと聞いた時は余裕だと思っていたのだ。

 なんせ、彼女は冒険者界隈では堅物で真面目すぎることで有名だから、自分の変則的な動きがあれば足止めくらいはできると思っていた。

 しかも自分の実力はアダマンタイト級に届く力があると思っていたし、周りからも思われていた。

 なんならサリエラ程度なら圧倒できるとも思い込んでいたのだが、蓋を開けてみたら全くの間違いであった。


『風の精霊よ私を纏え!』


 私の精霊の言葉に風の精霊が答え、私の身体に風を纏わせる。

 すると周りとの摩擦が少なくなり、そのおかげで私の動きが速くなる。


 これなら、逃げきれる。

 いや、絶対に逃げる。

 全てから逃げきってみせる。


 この仕事を受けた時から、私はもう表の世界には戻れないとわかっているからだ。

 報酬で入る大金なら馬鹿なことをしなきゃ、一生楽な生活ができる。


 どこかで畑でも耕しながら良い男を見つけるのもありね。

 キリクなんてど真ん中なんだけどなあ。

 アカエ……あんたも好みでしょ、ああいう子は。


 私は逃げながら今も病気で苦しんでる妹を思い浮かべる。

 精霊に願っても神々に願っても駄目だった。

 効くかもしれない薬は高すぎて買えなかった。

 そんな時にある商会に声をかけられ、大金を目の前で見せられたのだ。

 私には断る理由があるはずなかった。


 足止めは十分したからこのまま逃げちゃえば依頼達成よね。

 これであの薬を買ってアカエを治したら私はとんずらね。

 ああ、でもアカエは一人で生きてけるの?

 心配よ……。

 月に一回は会いにいけ……えっ⁉︎


 そんなことを考えていたら、突然、隣りに気配を感じ振り向くと、いつの間にかサリエラが並走していたのだ。


「残念ですけど、私からは逃げれませんよ」


「な、なんで私のスピードについてくるのよ!」


「私も精霊使いですからね。残念ですけどこれで終わりです」


 サリエラはそう言って私の脇腹を蹴り上げる。


「がはっ!」


 走っている途中で蹴られた為、私は豪快に転がってしまい、更には木にぶつかって一瞬意識が飛んでしまう。

 だが、その一瞬でサリエラは私の身体を動けない様に押さえつけ、猿轡をしてきたのだ。

 そして何故か首に首飾りをかけてきた。


「んん!んんー!(何?これー?)」


「この首飾りですか?キリクさんが事前に作ってくれたんですけど、これをかけると精霊を使えなくなるんです。だから精霊を使って小細工などしても逃げれませんよ」


 私の質問にサリエラは律儀に説明してくれたのだが、私はそれを聞き思わず叫んでしまう。


「んーー⁉︎(嘘ーー⁉︎)」


「さてと、あなたには色々と聞きたいことがあります。あ、私、急いでますので早く答えて下さいね。早く答えてくれたら私に対してのことは忘れるようにしますから……」


 そう言いながら、真っ青な顔になった私に対して、サリエラは不気味な笑みを浮かべてくるので、私は思わず叫んでしまう。


「んんんんーー‼︎(助けてーー‼︎)」


 だが、そんな叫びはこの広大な森によってかき消されてしまったのだった。



◇◇◇◇



 何か叫び声が聞こえような……。

 まあ、二人共、殺し合うわけでもないしサリエラが負ける事はないから心配ないか。

 それよりも……。


 サリエラ達と離れてしばらく走り続けていたら、複数の気配が俺の方に向かってくるのがわかった。


 そろそろ接触するな。


 俺はスピードを緩めていつでも剣を抜けるようにしていると、茂みや木の影から十名の武装した連中が現れた。

 しかも、その中にはドナテロやバドルグとその仲間の姿もあったのだ。


「くそ、ギダンじゃなくてこいつか。ドナテロ、やっぱりこっちじゃなかったろ」


「だが、こいつはサリエラのポーターだろ。ある意味、俺にとっては当たりだぜ」


「だが、かんじんのサリエラは何処だ?そうか、サナエが足止めしているのか。どうやら俺達はハズレを引いたらしい。これじゃあ、ギダンに行かれてしまうな」


「まあ、商会からもらえる特別報酬は減るがあっちでなんとかするだろうよ」


 二人は俺のことを危険と思っていないらしく知りたい情報を目の前でべらべらと喋りだす為、俺は呆れてしまう。

 

 こいつら馬鹿過ぎるな……。

 だが、おかげでよくわかった。


 俺はドナテロ達に向かって言ってやる。


「なるほど、ギダンとサリエラ以外はギネルバ商会に雇われてたというわけか」


「あっ?てめえ、なんで知ってんだ!」


「おい、ドナテロ!」


 バドルグは焦った表情で叫ぶがドナテロは肩をすくめて鼻を鳴らす。


「ふん、シルバー級の雑魚なんて殺せばいいだろ。その後、あの女二人は俺がたっぷり可愛がってやるぜ」


「おい、サナエは俺達の仲間だろ?」


「はっ、戦いの最中に死んだことにしときゃ良いんだよ。ひひひっ」


 下品な笑みを浮かべて笑うドナテロに俺は心底溜め息を吐く。


 やれやれ、こいつだけは二度と下品な考えができないようにしておかないと駄目そうだな。


 俺はそう心の中で決め、剣を抜こうとすると、突然近くの木の影から気配を感じた。


 まだ仲間がいるのか?

 いや、違うな。

 この気配は……。


 俺は木の影の方を見ると白銀の鎧と白い仮面をつけた金髪の男がゆっくりと現れる。

 すると、ドナテロ達は武器を構え警戒しだした。


「だ、誰だ!てめえは!」


「賊ふぜいになのる名などない。しかし間に合ったようだな。もう大丈夫だぞ。そこの冒険……しゃああぁぁーーー⁉︎」


 仮面の男は俺を見るなら大声を上げて驚き、すぐに木の影に隠れてしまった。


 やはり、あいつだったか……。


 俺は呆れながらも木の影に隠れた人物に向かって喋る。


「おい、隠れてないでこいつらをやるから手伝え」


「ま、待ってくれ!深呼吸を!すーはーすーはー」


 しばらくして、落ち着いたらしい仮面の男は木の影から何事もなかったかのように現れ、俺の隣りに立ち喋りだした。


「待たせたな、若き冒険者よ。後はこの白銀の騎士に任せておけ!」


 そう言って白銀の騎士は決めポーズをとったのだが、隣りにいた俺は心の中で、お前は賊ふぜいに名乗る名はないんじゃなかったのかと突っ込むのであった。


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