247 キールの世界1
私とアンクルはあれから、キリクさんの心の中に向かっていた。
そして、現在、私達はキリクさんの心の中に作られた森の中にいたのだが、木漏れ日差す穏やかな雰囲気漂う森に、私はつい微笑んでしまう。
あんな事があったのに、キリクさんの心の中にこういう空間があったのが嬉しかったからだ。
けれど、ここはどこだろう?
精霊の森かしら?
私がそう思いながら辺りを見回していると、アンクルが声をかけてきた。
「ここはオルフェリア王国の王都から少し離れた森よ。ここは彼にとって良くも悪くも、一番記憶に残る場所よ」
「……オルフェリア王国」
私はその言葉を聞いてすぐに思いだす。
オルフェリア王国が滅びている事を……。
キリクさんの故郷……。
何もなければ、ここで穏やかな生活をしていたのかもしれないのね……。
私はそう思い、悲しくなっていると、アンクルが無言で肩に手をおきある方向を指差す。
その為、私はその方向を見ると木の下に誰かが寄りかかっているのが見えた。
私はアンクルを見ると頷いたので、その人物に近づいていくと、そこには金色の髪をした少年が何か難しそうな本を読んでいた。
そんな少年の顔を見て私は少年が誰かすぐにわかってしまった。
「キリクさん……」
私はつい呟いてしまうとその少年はこちらを見て驚く。
「む、人がいる……。しかも、二人も」
少年はそう言うと本を閉じて立ち上がると、私達の方に歩いてきて挨拶してきた。
「俺はキール、お前達は誰だ?」
「えっ、ええと……」
まさか、話しかけられると思わず、私は狼狽えてしまった。
しかも、普通に答えてしまって良いものかわからず、アンクルをつい見てしまうと、アンクルが微笑みながら喋りだす。
「私はアンクル、そしてこちらはサリエラよ」
「アンクルにサリエラか、よろしく」
「よろしくね、キール」
「よ、よろしくお願いします!」
私は緊張してしまい、つい大きな声で言ってしまうと、キリクさん……いや、キール君は笑いだした。
「はははっ、子供相手にそんな緊張しなくても良いのに。あっ、俺が王族だと知ってるのか……。別にそこらにいるガキ程度だと思ってもらえれば良いよって、それは無理か……」
キール君はそう言って苦笑しながら頭をかく。
そんな表情豊かなキール君を見て、私は思わず頬が緩んでしまう。
可愛いわ……。
ずっと眺めていたいなあ。
そう思っていたら、キリクさんの無表情に近い顔を思いだしてしまった。
きっとこのオルフェリア王国が滅びた時からああなってしまったのよね……。
そう思ってしまうと、胸が苦しくなり思わず胸を押さえていると、キール君が心配そうに見てきた。
「顔色が悪いみたいだな。少し休んだらどうだ。王都の宿に案内するぞ?」
私はそう言われ、アンクルを見ると頷いたのでキール君に言った。
「……ありがとうございます。では、案内をお願いします」
「わかった。じゃあ、ゆっくり行こう」
キール君はそう言うとゆっくり歩き始めたのだが、すぐにアンクルが私に小声で話しかけてきた。
「しばらくは刺激をせずに様子を見ましょう」
「わかりました」
私はそう答えるとキール君の横顔を見つめる。
黒髪に黒目も良かったけど、金髪に青い目も似合ってるわ。
はあ、可愛い……。
私がそんな事を考えながらキール君を見ていると、あっという間に王都に着いてしまう。
しかし、私はすぐに目の前に映る異常に気がつく。
それはどこにも住人がいなかったからだ。
しかし、キール君は気にする様子もなく、宿に到着すると私達を部屋へと案内する。
「ここで休むといいぞ。それじゃあ、俺は戻るよ」
キール君はそう言って私が何か言う前に部屋を出て行ってしまった。
そんなキール君が去った扉を見ながらアンクルが悲しげに言ってくる。
「さて、どうしようかしら……」
「どうするとは?」
「ここは彼の心が無意識に作り出した場所よ。おそらくあの人は今、夢を見てる感覚だと思うの」
「じゃあ、私達はキリクさんが目を覚ます様に行動すればいいと……。でも、キリクさん自身が拒否してきたらどうすれば……」
「だからこそ、あなたなのよ、サリエラ」
「……私ですか?」
「あなたとあの人の繋がりは本人達が思っている以上に強いの。だからあなたの言葉はあの人には強烈に響くはずだわ」
アンクルはそう言って微笑みながら私の手を取ると、場面が変わり再び森の中に移動した。
すると、また同じ位置にキール君がいて本を読んでいたが、そこにアンクルが近づき声をかけた。
「いつまでここにいるつもりかしらね」
「……何を言ってるんだ?」
「あなたの居場所はここじゃないでしょう。お城の自分の部屋はどうしたの?」
「……城には行きたくない」
「どうして?」
「……わからない。何で行きたくないんだろう?」
「それは行ってみればわかるわ」
アンクルはそう言ってキール君の頭を撫でると、キール君は考える仕草をとり、しばらくすると、ゆっくり立ち上がって私達を見てきた。
「……わかった。行くよ」
「大丈夫、私達が側にいるから」
「……なんだか不思議な感じだな。二人を見てるとやれないと思っていたことができる気がしてきた」
「それは、元に戻ってからも言って欲しい台詞ね……」
アンクルはそう言って苦笑するとキール君は首を傾げる。
そんな仕草を見た私もキリクさんにそういう仕草をしてもらいたいと、こんな状況なのに不謹慎にも思ってしまうのだった。
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