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016 極秘情報と不死の住人

 そんな人物はサリエラで俺に躊躇いがちに声を掛けてきた。


「……キリクさん、今回は色々と活躍されたそうで。私の依頼とも関係があったので助かりました」


 サリエラはそう言うと頭を下げてくる。


 なるほど……。

 サリエラは死霊術師関係の依頼を受けていたのか。


「別に気にしになくていい。それより死霊術師が本格的に動いてきた理由はわかるか?」


「それは……」


 サリエラは何か言おうとしたが、すぐに口元を押さえて黙ってしまう。

 要は極秘だということである。

 だが、その時、サリエラの後ろから白狼騎士団のフォンズと一緒に、茶髪を綺麗に後ろで結った女騎士が歩きながら声をかけてきた。


「話しても良いわよ、サリエラ」


 そう言われたサリエラは驚いて女騎士を見た。


「リミア団長、極秘情報ですが大丈夫なのですか?」


「ええ、大丈夫よ。なんせ、彼はアジトを突き止めるきっかけを作った功労者よ」


「わかりました。では、キリクさん。死霊術師がここまで大きく動いた理由を説明します。それは前線にいた勇者達が東側の魔王バーランドを追い詰めたからなんです。ただし、後一歩のところで逃げられてしまって……。それで、魔王バーランドが前線の動きを弱める為、死霊術師達を使って後ろから崩そうとしているみたいなんです」


「なるほど、極秘にする理由は討伐失敗という情報が広まったら騒ぐ連中もいるからか」


「まあ、そういう事なので黙っていて下さいね」


 サリエラは申し訳なさそうな顔で俺に言ってくる為、俺は軽く頷いておく。


 なるほど、そういう事だったのか。

 しかし失敗ね……。

 そうなると、あいつら大変だな。


 俺は前線で戦っている勇者パーティーを思い浮かべながら、心の中で手を合わせる。

 なぜなら勇者というのは称賛されるだけじゃなく妬まれたり、叩かれたりする存在でもあるからだ。

 特にやらかした場合は腐った連中はこれでもかと言うほど叩いてくる為、非常にストレスが溜まるのである。


 今頃は後ろで踏ん反り返っている連中にネチネチ言われてるんだろうな。


 今思えば、連中を前線に立たせて自分達がどれだけ平和ボケしているか理解させておけば良かったと思う。


 いや、まてよ。

 昔どこかでやった記憶があるな……。

 まあ、いいか。

 それより……。


「……死霊術師達がただ魔王バーランドの言う事を聞くとは思えないんだが……」


「そうなんです。だからこそ私が死霊術師の真の目的を調べる為に、このレオスハルト王国から直接依頼を受けてたんです」


「そういう事だったのか。それで死霊術師の目的はわかったのか?」


「ネクロノスの書です」


 サリエラの言葉を聞いた俺は思わず眉間に皺を寄せ腕を組んで考えこんでしまう。


 あの、不死の領域にあると言われる、死に関しての全てが書き記されたといわれる本か。

 しかし、ネクロノスの書が本当に不死の領域にあるとして、どうやって連中は向こうに行くんだ?

 不死の領域に行くにはこちらと向こうを繋げる門を呼び出さないといけないのだが、それをする方法は誰も知らないはずだ。

 まさか、魔王バーランドが知っているというのか……。

 そうなると、大変な事になるな……。

 もし、不死の領域に住む住人が門に興味をもち、潜ってこちらの世界に顕現してしまったら……。


 俺は勇者時代にあった事を思い出す。

 理由は不明だが不死の領域に住んでいる住人、ネルガンという名の領主が、北側にあるフローズ王国領に突然顕現してしまい、フローズ王国の王都が異形の地になってしまったのだ。

 更にネルガンは王都に住んでいた人々を異形の生き物に次々変えていき、同じ領にある町などに進軍しようとまでしたのだ。

 あの時は、北側の地にいる戦える者達が全員集結して戦い、なんとか勝てたのだが、かなりの命も奪われ俺達勇者パーティーも死にかけた挙句に一時期不死の領域に踏み込んでしまったのだ。

 だが、そのおかげで知ってしまった。

 異形のものになると不死の領域の住人になる為、こちらで殺しても不死の領域ですぐに復活するという事を。

 それは領主であるネルガンも同じで、やっとの事で倒したはずなのに、不死の国で復活してしまっていたのだ。

 俺は今でも優雅にティータイムをしていたネルガンの姿を思い出す。

 ちなみに死霊系の魔物は、不死の国にいるタナクスという領主の領域におり、死霊術師達はタナクスと契約する事でこちらの世界に呼び出す事ができるのだ。

 そして、死霊術師はこちらの世界で彼ら不死の領主みたいになりたいが為に、日夜、死霊術を研究をしているのだが、その死霊術師に魔王バーランドが門を呼び出す方法を教えたとなれば……。


「……厄介な事になっているな」


「ただ、確証はまだないんです……。なので今回の作戦にはアジトを潰すだけじゃなく、情報を聞き出す為に死霊術師を生きたまま捕まえるのも含まれてます」


「ネクロスの書をどうやって入手するつもりかを聞き出すのか」


「はい。本当は後一歩のところだったのですが、レクタルであんな事になってしまって……」


 サリエラはそう言って俯いてしまうとリミアが優しく肩に手を置き慰める。


「あれは仕方ないわ。貴方に依頼を出す前から計画されてたんだから」


「リミア団長……」


「それに依頼をした冒険者達の誰よりも多く情報を手に入れてくれたのだから、貴方も立派な功労者よ」


「……ありがとうございます」


「では、いつまでもこうしていられないし、そろそろ出発しましょうか」


 リミアはフォンズに声をかけると、部下の騎士達と冒険者達を連れて出発し始める。

 すると俺の周りにはオルトス、サリエラ、リミア、そして騎士の二人しか残らなかったのだ。


「フォンズの方は下っ端のアジトを一掃してもらい、私達は幹部の死霊術師がいる場所に行くわよ」


「この人数で問題ないのか?」


「ええ、私とサリエラとオルトスだけで一掃するのは簡単だから。そういえばキリクには自己紹介が遅れたわね。私は白狼騎士団の団長をしてるリミアよ。リミアって呼んでもらって良いから」


「わかった。それと俺は何をすれば良いんだ?」


「ランク的に前に出過ぎなければ自由にやっていいわ」


「了解した」


「では、私達も行きましょう」


 リミア達は馬に乗り、俺達は馬車に乗って出発する。

 それからしばらく馬車に揺られていると、腐敗臭と共に古い遺跡と辺りを徘徊している大量のゾンビが見えてきた。


「私の部下二人にゾンビを任せて、私達は幹部連中を捕まえにいくわよ!」


 リミアはそう俺達に告げると馬から飛び降り、遺跡に一人で走り出していってしまった。

 そんなリミアを見てオルトスは呆れた表情をする。


「おい、あの騎士の嬢ちゃん本当に団長かよ?」


「はは……。一人で突っ走ってしまうらしくて、フォンズさんがいつも困ってるみたいです」


「ちっ、仕方ねえ。出遅れて癪だがエルフの嬢ちゃん、行くぞ」


「はい!」


 オルトスとサリエラもそう言うと馬車から飛び出し、リミアを追っていく。

 そんな三人の背中を見ていると、騎士二人がお前はどうするという感じで見てきたので手を竦めて首を振っておく。

 なぜなら、今の俺じゃ、あの三人に付いていくのは無理であり、それに自由にやって良いと言われてるからである。


 さあ、俺は自分のペースでいくか。


 俺は馬車からゆっくりと降りて、銀製の剣を取り出した後に三人が入っていった遺跡の方を見る。

 しかし、すぐに自分はおそらく戦うことはないのだろうなと思うのだった。


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