015 行方不明事件と臨時パーティー4
赤毛の兄弟はすぐに見つかった。
だが、ラドフは左半分が、ダナは下半身が石化し始めていた。
俺は木の影に隠れながら様子をみていたが、ラドフどダナの二人しか見えなかったので、少し気配を広げて探してみると二人以外の気配を感じる事ができた。
離れた位置に気配が二つ。
おそらく、魔眼持ちの魔物とそれを使役する魔物使いだろうな。
そして一つの気配は木に張り付いているという事は、魔眼持ちの魔物はバジリスクあたりだろう。
俺はバジリスクの特徴を思いだす。
大きさは子供ぐらいあり、目が飛び出たトカゲの様な姿である。
そしてその目は魔眼と呼ばれ、獲物を石化した後にギザギザの歯で砕きながら食べる習性があるのだ。
まあ、今回は食事用ではないみたいだが、早くしないとダナとラドフが完全に石になってしまう。
やれやれ、やるしかないか……。
俺は剣を抜いた後に木の影から出る。
するとダナが俺に気づき驚いた顔で見てきた。
「なんでここに⁉︎そ、それよりこっちに来ては駄目です!逃げて下さい!」
「……ダナ、俺は敵かもしれないぞ?」
「キリクさんをそもそも誘ったのは私達の方なんですよ。本来、疑われるのは私達の方なのに……なのに疑ってしまって……しかも置いて逃げるなんて……」
「気にするな。俺もお前達を疑ってたしな」
「そんなこと気にしないで下さい!それよりキリクさん……お願いですから逃げて!」
ダナは悲痛な表情で俺を見てくる。
しかし俺はここで逃げる訳にはいかないのだ。
なんせダナ達を助けて、隠れてる奴を捕まえないと俺が犯人だと疑われる可能性があるからだ。
なので俺はダナを無視し、目を閉じて周りの気配に集中する。
しばらくすると木に張り付いているバジリスクが動きだし、俺に向けて鞭の様なもので攻撃してきた。
俺はそれを避けると鞭の様なものを斬りつけ、麻痺毒を塗ったナイフを投げると、すぐに木からバジリスクが落ちる音が聞こえた。
ドサッ!
やったみたいだな。
俺は目を開き、バジリスクが落ちた方に向かうと、木の側には長い舌が斬られたバジリスクが地面に仰向けに倒れて痙攣していた。
俺は慎重に近づき剣で急所を刺して殺した後、バジリスクの死体を収納鞄に入れる。
それからすぐに俺はもう一つの気配を辿り慌ててしまう。
なぜなら、魔物使いはバジリスクを失い、戦意喪失したらしく、この場から逃げだそうとしていたからだ。
「ちっ、逃すか」
俺は全速力で魔物使いに近づき、相手が気つく前に背後から峰打ちして気絶させる。
それからすぐに身体を紐で縛り付け、布で猿轡をすると大きく溜め息を吐いた。
ふうっ、これでなんとかなりそうだな。
後はあの二人か。
俺は一息する間もなく石化してる赤毛の兄弟のところに戻ると、収納鞄から解毒薬を取り出し二人に振りかける。
すると徐々に二人の石化状態が解け始めた。
これでもう大丈夫だろう。
俺は周りの気配を確認し、敵もいない事を確認すると魔物使いを担ぎ、ダナとラドフを置いて歩き出した。
しかし、しばらくすると石化が解けた二人が駆け寄ってきて無言で後ろを付いてきた。
そして結局、冒険者ギルドに着くまで二人は俺に話しかけてくることはなかった。
冒険者ギルドに戻るとすぐに俺は取り調べ室に呼ばれ、俺は疑うような目で細かく説明を求められてしまった。
まあ、その辺は丁寧に説明をする事で納得してもらえたのだが、結局、報酬に関しては調べてからという事でゴブリンの報酬しかもらえなかったのだ。
しかも俺だけ長い時間拘束されたのもあり、解放された時、二人は既にいなくなっていたのだった。
◇ ◇ ◇ ◇
それから二日後、冒険者ギルドに呼びだしを受けたので、向かってみると何故かギルド長の部屋に通されてしまった。
「レオスハルト王国領の冒険者ギルドを統括するギルド長のブロックだ。今回の件、キリクには本当に感謝している」
ギルド長の部屋で眼鏡をかけた貴重面そうな男が俺に軽く頭を下げる。
「いや、それで情報は引き出せたか?」
「ああ、あの魔物使いにかけられた魔法を解く事で、少しだが情報を引き出せた。キリク、君のおかげだよ。ちなみに雇い主は死霊術師だった」
「死霊術の材料集めか」
「おそらく。とりあえず、今回の件で君には報酬が出てる」
ブロックはそう言うと、パンパンに詰まった袋を渡してきたので中を確認すると、信じられない事に白金貨も混じっていた。
「今回の件の情報料、バジリスクの討伐料に素材料、国に対しての貢献料だ」
「これで当面は安定した生活ができるな」
「後は君のランクをアイアン級からスチール級に上げる事になった。受け取ってくれ」
ギルドマスターはそう言うとスチール製の腕輪を渡してきたので、俺はありがたくそれを受け取った。
「それとキリク、これから奴らのアジトを潰しにいくが参加してもらえないだろうか?本来ならシルバー級以上だが、君を推薦する声もあってね」
「俺を?誰がだ?」
「上の方だからわからないんだ。で、どうかな?」
ギルド長の上は王族か貴族になるが、あいにくキリクである今の俺には知り合いはいない。
だとすると騎士団関係者の髭もじゃのドワーフ顔しか思い浮かばなかった。
……やれやれ、面倒な事にならなきゃ良いがな。
「……まあ、参加するのは構わない」
「そうか、助かるよ。では、先に魔導具で連絡しておく」
「わかった」
それから俺は冒険者ギルドを出て指定した場所に向かった。
指定場所は王都の外で既に沢山の冒険者と白狼騎士団が待機していた。
すると冒険者の間からオルトスが出てきてニヤニヤしながら近づいてきた。
「よお、来たかよキリク」
「やはり推薦者はお前か」
「おう、酒代を稼がせてやろうと思ってな」
「誰の酒代だよ。オルトス、今回の報酬でなんか奢れよ」
「任せろ。安くて美味い酒が飲める場所があるんだ」
「ふざけるな。高くて美味い酒と料理だ」
「ちっ、仕方ねえな」
オルトスは髭を弄りながら舌打ちをする為、殴ってやりたい衝動に駆られていると俺達に近づいてくる人物がいた。
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