第50話「未来へ」後編
「ふんふんふん♪」
「ご機嫌だな」
「だって久しぶりに会えるんだもん」
「確かに。俺達も忙しかったからな」
最終決戦から約4ヶ月後。
スサノオのコックピットには、日本国防軍の第1種夏服に身を包んだ2人の姿があった。
「ここも綺麗だね」
「初めてだったか?」
「太平洋と日本海はたくさん飛んだよ。でも、こっちは初めて。静かだね」
「内海だからな」
規程ルートの巡航飛行程度であればパイロットスーツ無しでも操縦可能だ。
現在の高度は約1000m、音速に届かない程度で瀬戸内海の上を飛んでいる。メイは好みでオートパイロットを使わないが、任せきりでも問題は無い。
「あと20分くらいかな?」
「そうだな、連絡を入れるか。こちらアサルトリーダー、呉コントロール応答せよ」
『こちら呉コントロール、アサルトリーダーの機体を追尾中。レーダーに異常無し、視界良好』
「了解。現在フライトプラン通りに飛行中、受け入れ許可を求む」
『その申請を許可、進入ルートを転送』
「確認した。18分30秒後に着陸予定」
『了解』
なので凛斗は外との通信を担当した。まあ、雑用レベルでしかないのだが。
その結果進入ルート指定を受けても、メイは特に気にしない。彼女の操縦は綺麗で、その通りに飛ぶのは簡単だ。
「ねえリント。美味しいもの、何かある?」
「さあ?牡蠣か何かが用意されてると良いな」
「やった」
「確定じゃないぞ」
そして、今回の仕事は戦闘任務ではない。訓練などでもない。気楽に飛べる。
「こちらアサルトリーダー、間もなく着陸する。呉コントロール、ポイントA2B3の使用でよろしいか」
『こちら呉コントロール。そのポイントを使用せよ。着陸後、その場への駐機を許可』
「了解」
呉コントロールの指示に従い、海に近いエリアに着陸したスサノオ。そのコックピットから見える範囲だけでも、基地内は活気で溢れていた。
周囲には何機ものSAGAが式典装備で並んでおり、他にも多数の機体が警戒体制を敷いている。
少し離れた場所では小型輸送機やヘリコプターが盛んに離着陸しており、来賓等を受け入れているようだ。
「新型艦の竣工記念式典かぁ……」
「両方とも2番艦だけどな。いや、量産1号っていう意味合いなら間違ってないか」
「贅沢な艦だよね、アレ」
「日本には必要だぞ?数が足りないから、質を高めるしかない」
「そっか。あ、そういえば中型艦も……」
「あるぞ。メイには見せられないけどな」
「なんで」
「階級だ、階級」
そんなことを言いつつ、ワイヤーを使ってスサノオから降りる。
下には既に整備兵や警備兵が集まっていた。
「スサノオはここに置いておくそうだ。警備は任せる」
「よろしくね」
「了解しました、剣崎大佐、メイルディーア少佐」
階級というものに慣れた2人はこういった扱いも間違えなくなった。上官という立場がどのようなものか、徹底的に教え込まれたとも言う。
無論、若すぎることに反感を抱く者はいる。顔に出さなくてもだ。そういった面々への対処は大変で、これについては色々な人の手助けを受けていた。
「あ、リント」
「挨拶はしておくぞ。一応、アレも仕事だからな」
「うん」
その直後に、基地施設内を案内されているメディアの集団を見かけた2人。
普段の仕事の癖もあり、歩きながら敬礼を行う。
「あっ、あちらにメイルディーア少佐と剣崎大佐の姿があります!スタジオのみなさん、見えますか!」
「こちらは新型艦就役式典会場です。式典開始5時間前となり、続々と来賓が到着しています。先ほど到着された剣崎大佐とメイルディーア少佐は愛機を待機させ、基地施設の中へ入りました」
凛斗もメイも、戦いを終わらせたヒーロー、若き英雄として広報の仕事を何度も行ってきた。
というか……仕事の半分以上が広報関係。そんな愚痴が真実と言えるほど多く、話を聞いた知り合いの誰もが呆れるほどだ。
なお、誰も代わろうとはしなかったことも記しておく。
「あそこだよね?」
「ああ」
その後、基地の建屋に入った2人は迷うことなく歩いていき、ある扉を開ける。
その先で待っていたのは、今なお忙しい役職に就いている伯父貴だ。
「来たか、凛斗」
「久しぶり、伯父貴」
「お久しぶりです、アキヤマ閣下」
「元気そうで何よりだ。それで、富士での仕事はどうだ?」
「やっと慣れてきた。けどまだ大変だな。教導なんて得意じゃないのに」
「かなり良い働きをしているそうだが、不満か?」
「最初は半ば無理矢理副団長にしただろ、まったく。統合参謀本部長からの命令に反抗なんてできないけど」
伯父貴は最終決戦での戦功から大将となり、日本国防軍の実質的なトップである統合参謀本部長に就いていた。
伯父貴より上の階級の面々は政治家になるか退役したためだ。体良く押し付けられた、と凛斗に愚痴を言ったこともある。それくらい、再建は大変な仕事だった。
「でも楽しそうだよね、リント。アグレッサーの時とか」
「そっちはな。伯父貴、何で富士教導団にアグレッサー任務も追加したんだ?前は専用部隊があったんだろ」
「お前を入れるためだ」
「は?」
そして、伯父貴の意向を受けた凛斗の役職は富士教導団副団長兼アグレッサー部隊指揮官、SAGAと歩兵を合わせて5ヶ中隊を指揮下に置いている。教導団本隊と合わせれば4ヶ大隊2ヶ中隊だ。
連隊より少し規模が大きい程度だが、富士教導団は非常に重要な部隊。統合参謀本部長の隷下にあり、伯父貴の影響力は大きい。編成を変えるのも、普段の様子を確認するのも、そう難しいことではなかった。
「日本国防軍最強、そう称されている凛斗に適切な部隊は限られる。しかし、いきなり1つの部隊を任されるのは不安だろう。それであれば、重要だが責任感が少ない役職を新しく作ればいい」
「けど箔付けだよな、それ」
「それだけではない。将官となった後、お前には精鋭の連隊か旅団を任せたいと考えている。どこまでかは決めていないが、少なくとも主要幹部は自ら決めろ」
「なるほど」
「見所のある者はいたか?」
「何人か。ただ少ないな。正直、明けの明星の人を全員引き抜きたいんだけど」
「それはダメだ。各部隊の中核を担わせる。そうしなければ再建できん」
「ちっ、仕方ないな」
「メイルディーア少佐を別の部隊に配属したい気持ちもあるが……」
「メイは俺の副官だ。誰が渡すか」
「もうっ、リントったら」
凛斗は現在将官教育中で、正規の佐官教育も受講させられているが、半年以内に合格しそうだと判断されている。どうやらその後の準備が既に始まっているらしく、凛斗は呆れつつも受け入れていた。
ちなみに、メイが何故日本国防軍に所属しているかというと、マイリアとの間で結ばれた協定が根拠になる。
「随分と懐かれたようだな」
「前からだろ。それより、メイ以外の連中は?」
「半分以上が日本国籍を取得済みだ。駐留部隊の者が大半、当然だろうな」
「なるほど」
「お前のような奇特な者は意外と多かったらしい」
「奇特言うな」
その協定により、皇女派帝国軍に所属していた者は終戦直後に限り、日本国籍取得条件を満たしたらすぐさま取得することを条件に、ムーゼリア帝国国籍のままでも日本国防軍に入隊できるように調整された。
それはマイリアがメイのために交渉した協定だが、意外と申請が多かったことにどちらも驚いていたりする。なおこれが適応された面々は、大半がメイと同じような経緯だ。
「来たか」
「本当だ」
「ん?」
と、そこで凛斗とメイは扉の外の気配に気付く。
「来たよー」
「よ、久しぶりだな」
「早いですね」
「久しぶり、凛斗」
「お久しぶりです、凛斗さん」
「……元気?」
入ってきたのは剛毅、香織、繭、聡、潤人、智子。凛斗と共に戦ってきた戦友達。
今ではメイとも仲が良く、女性陣だけで集まることもある。ただし任地が離れているため、実際に会う回数は多くないが。
「どうだ?調子は」
「良いぜ。凛斗の方こそどうなんだ?忙しいって聞いてるぞ」
「一応佐官だからな。仕方ない」
「本当に仕方ないこと?それ」
「同然だ。それに、全員数年以内には佐官になるんだぞ?香織は数ヶ月以内だろ」
「ん?大丈夫大丈夫。私、凛斗より大人だし」
「一足先に成人したからって良い気になるなよ?」
「タチの悪い酔っ払いになったの、忘れないからね。カオリさん」
「うっ、メイちゃんさ……」
そんな風に雑談しつつ、式典開始まで待つ面々。昔馴染みであり、心を許し合った戦友であるため、話が尽きることはない。
そして、昔馴染みという意味ではここにもう1人。
「先輩どうぞ、お茶です」
「ありがと、ミーフェル」
「仕事ですから。ケンザキ先輩もどうぞ」
「ありがとな」
「いえいえ」
ミーフェルだ。といっても元武装法務隊の彼女が日本国防軍に入れるわけがなく、軍属であることを表すPXの制服を着ている。
お茶出しのためにやってきたミーフェルはお盆を机の上に置くと、1人一人にお茶を配っていく。中身の入っていない左袖を揺らしつつ。
「ミーフェル、左手大丈夫?」
「大丈夫ですよ。幻肢痛もほとんど無くなりました」
「仕事も大丈夫だよね?」
「はい。片手だけでもできるようになってきましたから。ケンザキ先輩もありがとうございました」
「気にするな。理由は言っただろ?」
「それでもです。でも、お礼できるのは、その……体しか……」
「まったく。俺はメイの我儘を聞いただけだ。というか、先輩をからかうな」
「はい、分かりました。ごめんなさい」
ニコニコと笑っている彼女だが、実際はかなり運命に振り回されている。
ヘルはハデスの攻撃を受けたものの、スサノオが蹴り飛ばしたおかげで下半身を失うだけで済んでいた。そして偶然、スサノオが回収された場所と近いエリアを漂っていたらしい。
しかも、破壊された時の爆発はコックピットも襲っており、飛散した破片によって左腕は切断するしかないほどズタズタになっていたそうだ。その上救助が遅く、武装法務隊所属ということで処置が後回しになってしまった。結果、救命措置以外の適切な処理を受けられず、メイが知った時には再生医療が不可能な状態で街に捨てられていた。
このままでは野垂れ死ぬか、体を売るしかない。そんなことになるのを嫌がったメイは凛斗に頼み込み、日本国防軍の軍属として採用してもらった。まだ17歳だが特例を認められた。もちろん情報部の監視が常についているものの、最初の頃は心配になるほどボロボロだったため世話を焼かれ、今では友人関係だったりする。
メイとは方向性が違う美少女で、性格面もかなり丸くなった結果、凛斗やメイがいなくても問題無い程度には可愛がられていた。良いようにこき使われているとも言う。本来の所属でない呉に来たのもそういうことだ。
「それで先輩、岩牡蠣を焼くんですけど、醤油バターとレモンのどっちが良いですか?」
「うーん……両方食べたいけど、大丈夫?」
「大丈夫ですよ」
「良かったな」
「うん」
なお、かなりの美少女であるミーフェルは基地でも人気が高く、彼女がいるだけで売り上げが倍近くなるらしい。
元武装法務隊だということを知らないからだろうが、どうせ知ることは無いだろう。
「あ、忘れてました。ケンザキ先輩、約束のものです」
「そうだったな。ミーフェル、例のブツだ」
そう言うと、凛斗とミーフェルはSDカードサイズのUSBのようなデータカードを交換する。
そして当然というか、目の前でそんなことをされたのでメイは興味を抱いた。
「何それ?」
「先輩の幼少期の私服写真集です。マイリア殿下からいただきました」
「メイの水着写真集だ。この前撮ったやつだな」
「何でそんなの持ってるの⁉︎」
知らない方が良かったかもしれないが。
「何でって言われても、なあ?」
「はい」
「「メイのことだし」」
「やっぱり仲良かった……!」
そして、凛斗とメイとは別の意味で似た者同士だった。
「違いますよ。同好の士ってことです」
「そうだな。ミーフェル、ばら撒くなよ」
「勿論です。では先輩、作ってきますね。2個ずつで良いですか?」
「あ、うん……リント、どうしよう?」
「この人数なら……剛毅、希望はあるか?」
「どうせもっとあるんだろ?おいミーフェル、作れる分だけ作って持ってこいよ」
「は、はい!ただいま!」
と、割と好き勝手していたミーフェルだったが、流石に注文を受けてまで長引かせることはしない。慌てて部屋から飛び出した。
「リント、どうしよう?」
「まだ待つぞ」
「うん」
そして、新たな人物が来たことで雰囲気はまた変わる。
「おう、遅れちまったみてぇか」
「遅れてはいないぞ、満星」
「久しぶり、親爺さん」
親爺さんは披露される新型艦の建造を担当していたため、スペック以上の細かい部分も知っている。
なので来賓という立場では無いのだが……同じパルチザンに所属していた面々の集まりだ。誰も文句は言わないし、言えない。
「どうだ?新型艦は」
「報告書は上げてんだろ?」
「設計担当者の口から聞きたい」
「基本はオリジナルと変わんねぇぞ。改造結果を反映したら予想より上手いこといった、って程度だ」
「そうか。量産は?」
「予定通り残り10隻ずつ、ってんだろ?問題ねぇぞ。5番艦までは予定通り就役できる。12番艦まで全部起工してるってんでな。例の空母も5番艦まで起工済みよ」
組織再建と戦力増強、それは順調に進んでいるらしい。凛斗が関われることは無いものの、伯父貴の思惑もあり計画書とデータには目を通している。
そういった立場としてはこの話も興味深いが……今気になるのは、自身に直接影響する物のことだった。
「親爺さん」
「ん?」
「弐型の進捗は?かなり進んでるって聞いたけど」
「量産開始まであと1ヶ月ってところだろうな。気になるか?凛斗」
「完成したら1番最初は私達の所だったよね?」
「その予定だ」
弐型、と呼ばれる機体が次期主力機に決まり、現在は量産準備段階。量産され始めればすぐに日本国防軍全体へ広がるだろう。
ただし、これはあくまでも繋ぎの機体だったりする。
「それと、剛毅達の新型機は確か……」
「乗ってきたぜ。警備担当だしよ」
「良い機体だよ。ベルフェゴール、返しちゃったし」
「フレームとジェネレーターの試験機、だったよね。データしか見てないけど、良い機体だよね」
最終決戦の後、デーモンシリーズは帝国へ返還され、日本国防軍の手元には無い。
というより、若干の技術解析の後にデーモンシリーズは解体されている。エンジェルシリーズも同様だった。これは約半年間の激戦の結果、フレームへ蓄積したダメージが当初の予想を遥かに上回っていたためだ。修理するより新型機を作った方が総合的には安いらしい。
というわけで剛毅達に渡された新型機は、次期主力量産機候補の試験タイプ。本命のため、データ収集も義務付けられている。
「へえ。聡、潤人、どんな機体だ?」
「凄いですよ。ジェネレーター出力もそうですけど、スラスターや駆動部も強化されてます。整備のために装甲の展開機能が増えて、一部の対物理防御能力だけは下がってるけど、凄く良い機体です」
「防御が下がっているのは背面や脚部ですから、あまり気にならないですが。正面は組み合わせの効果で高くなってます」
「なるほど。流石次期量産機候補だな」
「はい」
もっとも、当人達も気に入っているので問題は無いだろう。
武装構成等はデーモンシリーズを参考に、量産機にも採用することを想定して決定されている。なので何機かは大幅に変わっているが、そこも含めてだ。
「お待たせしました!焼き上がりましたよ!」
「ありがと、ミーフェル」
「好きなだけ食べな、ガキども」
「って姉御も焼いてたのか」
と、そこで軽食一式が運ばれて来たため、室内は立食パーティーのような場所に早変わりする。
「おい伯父貴、メガネさんは来ないのかよ?」
「剛毅、あの人がどんな立場か忘れたのか?」
「諜報部の実働部隊トップだろ。こういう所に来れるわけない」
「そういうことだ。それよりも凛斗、ユーラシア共同体と中華アジア連盟の話は聞いているか?」
「予想より軍備増強が早い、っていう程度なら」
「ああ、そうだ。今のままであればまだ少しペースが早い程度で済むが、国家上層部の考えが読めん。想定外の事態が起こっている可能性もある」
「想定外?」
「まだ詳細は分からん。だが、最悪のパターンを想定しておけ」
「俺の部隊の話もそういうことか……了解。それも含めて選抜する」
「頼む」
そんな中での話し合い。どうやら色々と思惑があるらしい。
凛斗が知りうる情報はまだまだ少なく、判断しきれない。なので伯父貴を信用しつつ、彼の思惑通りに動くことにした。
もう片方で行われている話し合いも気を抜けない故に。
「そうそう、メイちゃん」
「なに?カオリさん」
「お金ってどう?凛斗、苦労させてない?」
「それ、私に聞くの?」
「おい香織」
「だって、凛斗に言っても誤魔化すでしょ?だったら彼女の方に聞かないと」
「大丈夫だよ。私もお金たくさんあるし」
「え?」
「余計なものは全部売り払ったからな。特に土地」
「月は土地が少ないもん」
「あ、そういうこと。けど、それで良いの?」
「うん。私には凛斗がいるから」
「ヒューヒュー、熱いねー」
「茶化すな」
最終決戦後、ハイシェルト家は親族も含めて大半が戦死もしくは自決していることが確認された。メイ以外の戦犯認定は確実であり、それを嫌ったのだろう。
そのため、全ての財産がメイに相続された。しかし……彼女は自分の思い出の品以外、全て売り払った。暴落を懸念したマイリアが慌てて介入する程度には思い切っていた。
で、その結果がこれだ。今のメイ、中々の金持ちである。引き換えに天涯孤独となったが……いや、それは元からだ。それに相手がいるため、寂しくはない。
「っと、そろそろか。伯父貴」
「ああ、そうだな。剛毅、香織、警備担当だろう。行け」
「了解、行くぜ」
「分かりました。行ってきます」
「万が一も無いと思うけど、頼むぞ」
「お願いね」
「任せて」
「ちゃんとやります」
「直接見れないのは残念ですけど」
「うん……大丈夫」
「あと、ミーフェル」
「いってらっしゃい、先輩。終わったらまた話したいです」
「うん、行ってくるね」
そうこうしている内に式典の時間が近くなり、剛毅達6人は警備のため愛機へ向かう。
軍属のミーフェルは医官として来た姉御と共に建屋へ残り、凛斗とメイは伯父貴と共に会場へ向かった。
そして、直接会場へ来た面々に捕まる。
「やあ、剣崎大佐。久しぶりだな」
「いつぶりだ?月から帰還した時が最後かもしれん」
「そうですね。お久しぶりです、篠崎閣下、山根閣下」
「メイルディーア少佐、今なら少し良いでしょ?」
「はい、大丈夫です。リント」
「ああ」
パルチザンの時からエースとして有名だった凛斗は当時からの知り合いに声をかけられ、女性将官達から娘もしくは孫のような扱いを受けているメイも顔馴染みに呼ばれた。
両者共に天涯孤独ということも関わっているのか、世話焼きな者達から話を聞くことが多かった。凛斗もメイも昇進の速さから妬まれることはあるものの、味方もかなりいる。
まあ、トップの子飼にして懐刀、およびその相棒かつ恋人にあからさまな喧嘩を売る馬鹿がいるとは考えにくいが。
「そろそろのようだ」
「ですな」
「ええ。メイ」
「うん」
そして、式典は始まる。
「日本国民の皆様、政府関係者、軍関係者、そして関係企業の皆様、私は日本国防軍統合参謀本部長の秋山努です」
「本日、新型艦2隻の竣工記念式典を盛大に執り行えることを、私は誇りに思います」
「思えば、ここへ繋がるとは考え辛い道を進んできました。9年前の敗北、そして戦うという選択肢を選ぶことと決めた後、私は不安に苛まれていました。残る戦力は少なく、敵は強大。はっきり言えば、勝ち目などありませんでした」
「そんな中でも、諦めなかった者達がいました。戦う方法は1つではない、と。私自身もそんな者達に支えられたからこそ、戦い続けることができました。その結果は、皆様もご存知の通りです。戦い抜き、新たな友を得て、こうしてこの場に立つことができる。昨年までは想像もできぬことでした」
「しかし、望まなかったわけではない。いや、平和を希求する思いは、誰よりも強かった」
「それは彼女達も同じでしょう。この式典を見守るためにやってきた姉達はどちらも、私と縁の深い艦です」
「片や、暗き海の底から日本を支え続けた艦。片や、新たなる友との縁を繋いだ艦。その妹達がこの国の守護者として、我々の戦列に加わってくれる。これほど喜ばしいことはありません」
「本来であれば防衛大臣、もしくは総理大臣閣下に執り行っていただくところでしょう。しかし今回に限り、私が行わさせていただきます」
「蒼龍型潜水母艦2番艦を飛龍、大和型飛行戦艦2番艦を武蔵と命名する。日本国防軍統合参謀本部長、秋山努」
「この2姉妹が比翼連理の翼となり、日本国の守護者であり続けることを、私は願います」
第1部 END
ご愛読ありがとうございました




