第14話 君へカケル
「あの、魔法使えないのは分かったんですけど、魔道具も使えないんですか?」
「いや、試さなかったが……というか、そんな物つけていたらあいつらに回収されてるだろ?」
「いえ、なぜか私のは盗られていませんよ?それに、なんというか……私自体が魔道具みたいなものなので」
「なに?」
「リョーさん魔道具なの?」
そうなのだ。まず会話できている時点でおかしい。そして、違和感無さ過ぎて忘れていたが、俺の体の半分ぐらいが魔道具なんですよ。なのに、俺めっちゃピンピンしてるんですよ。ってことは使えるってことだよね?なんか、俺の装備はギルドカードと刀と革の防具しかなくなってない。見張りも就いてないし、なんてザル警備。この牢屋に絶対の自信でもあるのだろうか?
そして、俺の体のことでアルテミスちゃんもビックリしている。怖かったかな?大丈夫だよー。おにいちゃんは怖くないよー。ぐへへへ。
「この体の半分以上が魔道具なんで、さっき言ったことが本当なら、正直動けてるのがビックリですね」
「お、おう」
「なんだか、すごいね!かっこいい!」
おっさんは納得できないのも仕方がないだろう。俺も意味分からんし。それにしても、俺の言葉を疑わずに、キラキラした目で見つめてくる、アルテミスちゃんは素直ないい子だな。おにいちゃんが今度、その犬耳をなでなでペロペロしてあげよう。
そこで、マスターさんから渡された首飾りの魔道具を取り出す。てか、これ盗らないとか、ホントあいつら盗賊として大丈夫か?
「なんだそれは?」
「恩人から緊急用に渡された魔道具です。これに魔力を込めれば伝わるはずなのですが……魔力ってどういう風に込めるんですか?」
「「……」」
二人共無言になる。まぁ、そうでしょうよ。「俺自身が魔道具ですよー」って言ってるのに、魔力の使い方が分からないんですから、その反応でしょうよ。
「……薄々感じていたが、お前かなり変だな」
「やかましいわ!」
しゃーないやん!でもね、俺先日こっち来たからさ、分からなくても自然な訳なのですよ。関西弁も出てしまうじゃないか。
「で、コツ教えんの?それとも、奴隷になる?」
俺は少し不貞腐れて投げやりになる。俺の打たれ弱さをナメんなよ?こう見えて、こちとらメンタル豆腐以下だぞ?
「すまん。教えるから、機嫌直せ」
「……はい」
そこから、猫耳のおっさん――名前なんだっけ?多分オーガさん?――に魔力の使い方を教わる。魔力を使うとは、普通は体の中心にある魔核から使いたい量だけを引っ張り出すんだと。さぁ、ここでいきなり俺は壁にぶち当たった。俺の場合、埋め込まれたから魔核どこにあるんだろうね?
「私の魔核の位置分かりますか?」
「すまん、俺には……というか普通は分からん」
「「……」」
あれ?詰んだ?いや、むしろ俺が使わなくてもよくね?
「じゃあ、オーガさんこれ使ってください」
「オルガだよ!」
「失礼、かみました」
「ほら、さっさと渡せ」
俺は首飾りをオルガさんに渡す。『かみました』ネタの掛け合いをしたかったのに……仕方ない、今度ユリウスとするか。オルガさんはじっくりと首飾りを見て、驚いたように言った。
「やはりダメか。この首飾りには認識偽装と魔力パターンが記録されている」
「え?どういうことですか?」
「俺には使えん。それに俺にとってこの首飾りだが、お前に言われるまでただのガラクタにしか見えなかったぞ」
マジかよ。だからパクられなかったのか?てか、なんつースゲェもんくれたんだよ、あの人は。
「じゃあ、どうしましょうか?」
「わたし、分かるよ。リョーさんの魔核の位置」
「ホントに?」
おおう!ここで天使が舞い降りたぜ!まぁ、もともとその可愛らしさは天使だがな。
「嬢ちゃんは『魔眼』持ちか?」
「……あっ」
「魔眼ってなんですか?」
「「……」」
また無言ですね。ええ、慣れましたよ。こういう反応。
「魔眼って言うのはだな、いろいろと種類があるんだが……嬢ちゃんのは魔核がわかるってことは、魔力視ってやつかな?」
「……うん」
「え?凄いじゃないですか?」
「ああ。だから、恐れられ妬まれ、嫌悪や不吉の対象ともされる」
「ひっ」
アルテミスちゃんは小さい悲鳴を上げ怯えてしまった。さっきまでのキラキラした笑顔が消えた。犬耳美少女を怯えさせるとはなんて野郎だ!
「おいっ!」
「いや、すまない。そういうこともあるということだ。まぁ、俺たち冒険者の中じゃ憧れの対象でもあるんだよ。だが、何事も強過ぎる力は恐れをもたらすこともあるんだよ」
「それはっ!……分かりますが」
俺は怯えてしまい震えているアルテミスちゃんの前に行き、膝を落とし、その怯えきった瞳を見つめ話しかける。
「アルテミスちゃん、私に。いや、俺に力を貸してくれないか?君のその力は世間では疎まれているかもしれないが、俺は単純に凄いモノだと思うよ。勿論、そこに恐れはないよ。さっき、俺の体が半分以上魔道具だと言った時、君は驚くだけで凄いとカッコいいとも言ってくれた。この体になった俺は、確かに普通の人とは違う。世間で言うなら、君と同じように恐怖の対象となるかもしれない。でも、いくら外見が変わろうと、力をつけようと、自分の本質は変わっていないよ。君は力を持っていること自体に恐れがあるのかもしえない。けどもし、君が俺に力を貸してもいいと思うなら、協力してほしい。俺には君の力が必要なんだ。でも、嫌なら無理にとは言わないよ。落ち着いて考えてくれるといいから」
俺は自分の思っていることを言葉にする。言った後、よく考えると恥ずかしいことを口走ったが、正直な気持なので問題ないだろう。12,3歳の少女に対して口説いている訳でもないし、大丈夫だ。もし惚れられても、モチロン大丈夫だ。最近の俺は、なにか人としてダメな方向に目覚めたので……なにも問題ないだろうさ!
俺は立ち上がり、アルテミスちゃんに背を向け前から立ち去ろうとすると、俺の服の端が掴まれた。振り返るとアルテミスちゃんは、こっちを見てまた俯いた。そして、俯きながら呟いた。
「協力……する。協力させて。もう、何もできないのは嫌なの!」
呟きは大きくなり、俺の目を見て、途中からはまるで嘆願するかのような様子だった。
「ああ、こちらこそよろしく頼むよ。ありがとう」
俺は頬笑み頷いた。その時、彼女の頭を撫でるのも忘れない。きっと俺は、さぞかし良い笑顔を浮かべていただろう。言わせていただこう。犬耳は最高でした、と!
「掌に魔力を貯める様にイメージしろ」
「はい!」
「リョーさんできているけど、まだ弱いからもっと体中の魔力を集める様に」
「了解!」
それから、俺はアルテミスちゃんとおっさんとで魔力操作の特訓だ。おっさんが使い方を、アルテミスちゃんが魔力の流れを指摘してくれる。俺の魔核の位置は普通の人とは違い右の胸の位置にあるらしく、そこから体全体に血液の様に魔力を巡らしているらしい。俺の場合、義手や義足とかを使っているおかげでか、すでに魔力は体内を駆け巡っているらしく、後は取り出すだけの簡単な作業だ。魔力を体内に馴染ませるのが一番難しいと言われていたのでラッキーだな。
「集めたら魔道具に込める、つまり魔道具に向けて集めた魔力を放出するんだ。これが魔道具を使う基本だ」
「はい!」
俺は左手を右手に添え、「俺の右手がぁぁあああ」っぽい格好になっている。魔力は使ったことのない力なので、集中力というか精神力の消耗が激しい。なんか、『賢者タイム』の使用と似ているな。
「で、こんな感じでいいかな?」
「うん!イイ感じだよ」
「あっ、なんか分かってきたかも。これならできるかも」
何度も繰り返しやることによって、だんだんコツを掴んできた。首飾りに魔力を込める。体の中から何かが無くなる感覚がする。
これなら、もう少しで、もう少しでマスターさんに繋がる。
「キタっ!マスターさん?聞こえますか?」
「おかけになった魔道具は、ただいま電源が入っていない為――」
「……」
電話か!俺の努力を返せコノヤロウー!
一旦切って、もう一度だ。
「あの、マスターさんですか?俺です、俺。俺です」
「ちょっと、詐欺ですか?イタズラの通信はやめてもらえますか!こっちも暇じゃないんですよ。もうかけてこないでくださいね!」
「あっ……」
ブチッ、ツーツー。
くそっマジかよ?詐欺じゃねぇし!ガチだし!
ええい!もう一度だ!
「涼です」
「はいっ!こちら来々軒です」
「あっ、すいません。間違えました」
ガチャ、ツーツー。
ベタかっ!やめてよ!もうこっち、いっぱいいっぱいなんだからさ!
「こちら涼。こちら涼。応答されたし」
「こちら、やすらぎ基地。オーバー」
「私は安らぎ亭所属、新兵の涼であります。そちらにおられる司令官、マスター殿に連絡を取りたいのですが?オーバー」
「一般回線からの場合は通信暗号をお願いします。オーバー」
「おぱーい。いぱーい。われ、うれしす。オーバー」
「……すいません。暗号が違うので、もう一度お願いします。オーバー」
これでは……ない……だと?では、こちらか?
「YES!ロリータ!NO!タッチ! YO−JYO、ツルペー↑ター↓!YEAHー!!」
暗号をつい興奮して大声で言ってしまい、アルテミスちゃんのキラキラしていた目が一瞬で消えた。さっきとは打って変わって、まるでゴミを見る様な目だ。くそっ、代償があまりにもデカイぞ。俺とアルテミスちゃんの信頼がぁぁあああ。
だが、残念だったな!我々の業界では、それはご褒美なのだよ!やっべ、違う意味で興奮してきたぜ。
「気持ち悪いですね。オーバー」
「知ってますよ。オーバー」
「……ぷっ」
「……てか、マスターさんでしょ?」
「ちゃうねん」
「楽しそうですね?」
「ちゃ、ちゃうねん」
「ネタは挙がってんだよ!」
「ちゃうねんって」
何がちゃうねんだ!くそっ!言いたいことはたくさんあるけど、今じゃない。我慢だ。俺は真剣な声でマスターさんに訴えかける。
「……結構ピンチなので、話聞いてもらっていいですか?」
「……で、どうした?」
マスターさんはおどけた態度を辞め聞いてくれた。まぁなんだ?マスターさんにはいろいろとからかわれたりした。だが、少し恥ずかしいが俺はこの人を神よりも信じている。この世界で命を救ってくれた。第二の人生をくれた……この人を。
俺がマスターさんに言いたい言葉はこの一言、これだけだ。これだけでいい。この一言で、全て伝わるんだ。
「助けて下さい!」
「おう、任せろ!」
ほら、何も聞かずに頷いてくれる。
そして、俺が聞きたい言葉は頼もしいこの一言、これだけだ。こだけで十分だ。
人はこれを信頼と呼ぶのだろうか?
全てうまくいく。そんな、不思議な気持ちをくれる。
「で、何した?」
「おいっ!マスターさん、貴方なら分かるでしょう?形式美を大事に!」
「いや、まぁそうだけど……状況が分からんと、なぁ?」
「そうですけど……俺のそれっぽいモノローグがぁぁああああああああああ!!!!!」
結局、全てを話し助けを待ったのだ。




