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第13話 GOD ONLY KNOWS






 ユリウスと分かれた後、薬草を取りに俺は山に入った。ちなみに後から聞いた話だが、この山は俺が産まれ落ちたじゃなくて、転移した時にいた森らしい。Fランクと低いランクの依頼なので、ヨクキキソウは山の入り口付近にあるらしい。なので、子供でも採取可能ではある。

 しかし、最近この辺りでは魔物や盗賊が出ると、ユリウスが言っていたので気をつけなければならない。なんか、注意してくれたのはありがたいが、俺はこういうフラグはいつも回収してきたので、周りへの警戒はマックスハートだ。


 薬草は意外にも直ぐに見つかり5本採取が終わったが、まだ結構生えてるので……続行だ。今思うとここで止めておけば良かったんだよな。そしてあれだけ、自分で自分に気をつけようなんて注意していたのに「もう少し、もう少しだけいける」と初めての依頼で順調にいっていたためか、やはり、調子に乗ってしまった。俺は時間も忘れ採取に夢中になった。

 全くもってアホなのだが、そんな自分が嫌いじゃない。困ったもんだよ。


 すると、どこからかバキッと木の枝が踏みつぶされる音がして、俺は我に返りその音のする方向を見た。そこには……


「BUGYAAAAAAAAAA」


 イノシシみたいなモノがいた。この叫び声を聞いてお分かりいただけるであろうが、半端ない大きさなのだ。これが魔物なのだろう。叫び声だけ聞いたら恐竜だが、アレだ、あのジ○リ映画の主様ぐらいある。俺は考えるよりも早く逃げた。脱兎のごとく。


 戦えって?無理ですよ。あんなデカイのにぶつかったら、今度は天国に転移しちゃうよ?


 森の中を全力で走る。枝が顔や手に切り傷をつけるが気にしない。ヤバいヤバい!後ろで「ブモー」って言って追いかけてくる。なんかもう無理。初めての魔物はもっとなんだ?ウサギの亜種的な雑魚モンスターにしてほしい。初めては優しくが基本だろ?

 てか、あんなもん誰が勝てるんだよ?冒険者パネェな!あんな奴どうやって倒すの?マジで。いや、おやっさんなら片手で倒せるか?とりあえず、生きて帰ったら、アテナちゃんに子作りを前提に結婚を申し込もう。


「へーーーーーーーーるぷっみーーーーーーーーーー」


 叫ぶ、叫ぶ、心の限り叫ぶ。もうここが、山のどこか分からない。それぐらい目茶苦茶に走った。すると、祈りが神に通じたのか、ズドーンという音と共に、巨大イノシシが倒れこむように止まったのだ。振り返ると、イノシシには何本も矢が刺さっており、奴は泡を吹いて倒れていた。


「助かった……のか?」


 このセリフを言うということは、助かってないフラグなのだが、俺はつい口に出してしまった。世の中には『この場面でこの言葉言うとこうなる』という、お約束が存在する。まさに、自分で自分の首を絞めてるようなものだ。

 すると、周りからなんかガラの悪いおっさんたちが出てきた。怪しいが、人を見た目で判断したらいけない。俺はこの人達は親切な冒険者かな?と考えていると、一番前にいるおっさんが俺に近づいてくる。


「げへへっ兄ちゃん。助けてもらったんだから礼をいいな」

「は、はい。ありがとうございます」

「じゃあ、兄ちゃん助けた対価として、大人しくこっちに来てもらおうか?」

「……」


 助かったが……なんか雲行きが怪しい。てか、全てが怪しい。さっき、あんなこと言ったけど、もうね、なんか恰好がいかにも盗賊だ。「げへへ」って言ってるし、間違いないだろう。


 ユリウスは言っていた「最近は魔物や盗賊が出るので気をつけろ」と。


 俺の頭の中で繋がった。さながら、気分はコ○ン君だ。もしかして、これ逃げなきゃヤバくない?てか、逃げる。決めた。俺は逃げるために距離を取ろうとした。

 だが、その直後に後頭部に衝撃が走った。


「げへへ」


 俺が崩れ落ちる時、おっさんのゲスい笑い声が耳に残った。











 気が付くとそこは知らない場所だった。なんか、最近気を失うことが多いな。ここがどこなのか確認する。この確認作業も板についてきた。ここは、暗く薄汚い閉ざされた空間だった。俺以外にも人――だと思われる二つの影があるのは分かるが、暗くて顔までは見えない。こんな状況でも、動じなくなってきたな。そろそろ、俺の精神は豆腐ぐらいにはなっているんじゃないだろうか?

 ここは、まるで牢屋に似た空間だなと思っていると、人影は俺の方に近づいてきた。


「おっ、起きたか兄ちゃん?」

「ええ。ここはどこですか?」

「牢屋だよ」


 似たような場所ではなく、牢屋だった。まぁ、そんな事だろうと思ったよ。

 俺の目が暗闇に慣れてきて、今会話している人の顔が見えた。するとその人は……


「……猫耳……だと?」

「ああ、これか?俺は猫人族だ。なんだ初めて見たのか、兄ちゃん?」

「ええ……ただ、初めてはメイド服を着た女性を見たかったですよっ!」

「そ、そうか」

「ええ!全くどうしてくれるんですか?どう責任を取るつもりですか?」


 俺はつい思いの丈を語ってしまった。これは、ただのやつ当たりだと分かっているが止めることができない。だってそうだろ?誰が好き好んで野郎の猫耳を見たいと思うだろうか?萌えるかって?ふざけるな!男も女も誰だって美少女の猫耳メイドは見たいものだろ?なぁ、そうだと言ってくれよ!


「お、おう。なんかすまん……な?」

「いえ、分かっていただけたら幸いですよ。それで、他には猫耳の美少女はいないのですか?」

「……ここには猫人族は俺以外いないんだ。悪いな」

「そう……ですか……」


 俺はあまりのショックに、膝をついてうなだれる。泣きそうになるのを我慢するが、溢れてくるモノを抑えられない。


「おにいちゃん、どこか痛いの?」

「大丈夫だよ。少し寂しい事があっただけだよ。ありが……」


 俺は聞こえてくる声に返事をするため、上を向くと犬耳の少女がいた。


「ん?どうしたの?」

「……いや、神は俺を見離さなかったんだなってさ」


 ここまでの俺に対する仕打ちがあまりにもひどくて、神様って俺のこと嫌いなのか?もしくは、ドSだろうなと思っていたんだよ。良かった、これでまだ戦える。もう大丈夫だ。俺には帰りを待っていてくれる(と勝手に信じている)、(アテナちゃん)もいるのだから。


「私の名前はリョーと言います。お嬢さん、お名前を教えていただけませんか?」


 それはもう恭しく膝をつき傅き名前を伺う。まさに紳士か騎士の様に、今の俺は犬耳の美少女を見たのでいつもとは一味違うのだよ。


「わ、わたしはアルテミス。犬人族だよ」

「リョーとか言ったな?俺と対応が違うんじゃないか?」

「え?何いってるんですか?当たり前のこと言わないで下さいよ。ビックリするんじゃないですか」


 この猫耳のおっさんは何を言ってるんだろう?おっさんに傅くわけないだろ?俺が傅くのは美しい女性とアテナちゃんだけだ。というか、俺とアルテミスちゃんの会話を邪魔しないでいただきたい。


「え〜っとじゃあ、そこの方、名前教えてもらえますか?」

「おう!俺の名前はオルガという。よろしくな!」

「あーはい。オルガさんね。チョーウケル」

「おいっ」

「そんなことより、どうして私は牢屋に?」


 そうだ。このおっさんの名前ではなく、今の状況を確認しなければならない。アルテミスちゃんとの会話は……残念だがまたの機会だ。


「お前はあいつら――盗賊に捕まってここに来たんだよ。まだ生かされているってことは、どうせ俺たちを奴隷としてアルバリン国に売るつもりなんだよ」

「奴隷……ですか」


 そうきたか……マジか。奴隷いるんだ。リアルファンタジー舐めてたわ。ここから奴隷編突入か?絶対に阻止だな!てか、やっぱ嫌いなのかな?神は。それこそ、神のみぞ知るか。


「見張りは居ないようですが、ここからは抜け出せないのですか?」

「まぁ、無理だろな。一度見たことがあるが、この牢屋は魔物を捉える為のモノだな。脱出しようと何度か試したが、頑丈でな、ちっとも壊れる気がしねぇ。魔法も攻撃魔法を吸収する仕組みになっているのか、壁に当たると魔法が消えてなくなるんだ」

「……そうですか」


 あれ?これマジで詰んでない?どうすんの……俺?






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