第2話 ちょこっとチュートリアル
ゲームを起動する。
ゲームが不得意なこともあって憂鬱な気分でもあり、だけど同時に何らかの期待感を抱いているのは確かで……不思議な気持ちだった。
あたりに空間が歪み、数歩たたらを踏む。
……ううっ、何回やってもこの『導入』は慣れない。
VRMMOは、起動したとき、いわゆるスタート画面……ホーム画面になる。
そのホーム画面の時に、プレイヤーの周囲は部屋の中とかではなく、バーチャル空間になる。
ゲーム、『ハンター&テイマー』を選択し、決定。
吸い込まれるような感覚と共に、僕はその世界へと旅立つ。
『「ハンター&テイマー」にようこそ! ナビゲーターを務める、ナービです。まずは名前をお願いします。』
「……『チアキ』です。よろしくお願いします」
人工知能に愛想をしても仕方がないけれども、挨拶はする。
名前はそのまんまで。
ここは、ホーム画面とは違う……いつも通りというならば、チュートリアルの空間かな。
水色のサイバースペースに、四角をいくつも重ねたデザインのオブジェが浮遊している。
……とりあえず、先の説明を聞こうかな。
ナービと名乗ったナビゲーターに向き直ると、彼女は説明を始めた。
『早速説明に入りますね。このゲームには、大きくわけて、二つの職業があります』
「二つ?」
職業が二つというのは少ない。少なすぎる。
今までのゲームの職業やらジョブやらであれば、十数種から数十種に至るものもあったくらいだ。
二つ……よほど大きな分岐点なのかな?
大概の場合は転職やらジョブチェンジができるけれども、これはできない、とか。
『ああ、職業というより、「特性」ですね。他にもクラスとか色々ありますが……そういったものは意識せずに勝手に与えられるものなので、優先的に説明するものとして解釈されていません』
なるほど。クラスは称号みたいな感じなのかな?
恩恵があったらうれしいけれど……ちょっと詳細を聞いてみようかな?
「クラスを聞くことはできる?」
『まずは、職業から聞いてくだされば説明いたします』
なるほど、順を追ってということかな。
『職業は、「ハンター」と「テイマー」必ずその二つのどちらかを選んでスタートします。なお、変更はできませんので慎重に検討してください』
「……違いは?」
やっぱり変更不可か……。違いを聞いておいて損はなさそうだ。
さすがに最初っからやる気ゼロプレイをする気はないし。
『このゲームには、モンスターが出現します。それはご存知ですね?
「ハンター」は、モンスターを倒す、または捕まえたモンスターを解体し、貴重な部位を取り出したりすることで、アイテムをゲットします』
モンスターを捕まえるか倒すとかして……解体、か。
アイテムをゲットするのかー。これはちょっと面白そうかも?
アイテムとかの情報を見るのが好きな僕にとっては、これはなかなかに興味を持つ内容だった。
『一方、「テイマー」は、捕まえたモンスターを手なずけ、好感度を上げることでアイテムをゲットします』
「モンスターを捕まえる……『ハンター』でも捕まえるのですか?」
いずれにしても、モンスターを捕まえる、というのがシステムに組み込まれているみたい?
好感度を上げていってアイテムを得るのか……これもまた面白そう。
うーん、どっちにしよう……。
『どちらでも構いません。また、「ハンター」の場合はモンスターを殺してしまっても経験値が入ります。
一方で、「テイマー」に純粋な戦闘能力はありません。
間接的に相手にダメージを与えることなどはできますが、「捕獲」することで真価を発揮します』
これを聞いていると『ハンター』優位なゲームっぽいなー……。
だけど、『テイマー』も冷遇されているわけじゃなさそう。
勘だけど、『捕獲』に重きを置かれているなら、それによって真価を発揮するとまでいわれているのならば、冷遇されているとも思えない、と……まあ、こじつけだけどね。
あ、そうだ。あと聞きたいことは……。
「プレイヤーキラーとかいますか?」
これね……結構大事なんだよね。
キルされるとそれだけでモチベーション下がるからね……。
まあ、キルされるのが嬉しい、って奇特な人物はそうそういないと思うけれど……。
『います。このゲームは、そういった行為をどこまで許容するべきか検討中なのですが、プレイヤーにキルされた場合、そのキャラクターはロストとなり、通常では自然復活できません』
「……えらくハードですね」
ロストって……何か一気にやる気失ったような気が……。
ノーリスクでの復活ができないのはわかるけれども、普通に自然で復活できないってハードモードすぎないだろうか。
『異世界に行った、ということを前提に組まれているもので。命はあくまでもひとつということです』
「……なるほど」
リアル志向なんだか、ファンタジーなんだかわからないな。
命がひとつ、ね……わからなくはないけれど、復活は無理なのかな?
そう聞こうとした瞬間、ナービは口を開いた。
『ただし、ロストしたキャラクターでも、プレイヤーに問題行為がない場合は、サポートセンターにお問い合わせいただければ復活できます』
つまり、プレイヤーキラーであれば、ロストしてしまった時に不利ってことかな。
……まあ、このあたりはあまり突っ込んで訊く気はないけれど。誰かキルする気はないし。
んー、でも帳尻合わせのように思えるのは気のせいかな……会社は全然知らないところだからもしかしてと思ったけれど、VRMMOのことをよく知らない人が作ったみたい……っていうのはさすがにひねくれすぎな考え方かな。うーん、ダメだな。ちょっと変な考えに毒されてるや。
攻略サイトとか掲示板とか回ればよかったかも。
『ハンター』と『テイマー』。どっちにしようかな。
万一の場合を考えると、戦闘能力がある『ハンター』の方がよさそうだけど、誰かを迎え撃つためだけにそちらを選ぶみたいで何だか癪だ。
……あんまり続ける気はないけれど、『テイマー』にしてみようかな。
モンスターと触れ合うのって面白そうだし。のんびりするのが一番だよ。
「じゃあ、『テイマー』でお願いします」
『「テイマー」ですね、了解しました。では、さっそくキャラメイクに入りましょう』
ぶぉん、と低い羽音のような音を立ててウィンドウが複数現れる。
項目がたくさんありすぎて何か面倒くさい……このキャラメイクが好きな人もいると思うけど、さっさとゲーム始めてみたい……。
うん、せっかくやるんだったら楽しみたいし……あ、ランダム決定がある。それやってみようかな。
1回、2回、3回……7回目。
そこで手を止める。
「…………うーん」
だけど、思わず唸ってしまったのは、見た目がどぎつかったからだ。
肌の色がピンクで髪の色が黄緑はかなりきつい。
でも、見た目はなかなかに好み。
というか、リアルの自分に近い感じで親近感を持ったというのが最大の理由だ。
髪の長さが少し長くて、目つきが少し悪いくらい……え、もしかしてあまり似てない?
「……肌の色と髪の色だけ変えられますか?」
『大丈夫ですよ』
「じゃあ、肌の色を黄色の2、髪の色を茶色の4でお願いします」
黄色の2はやや白めの肌色だ。日本人っぽい感じ。日焼けは全然していないけれど。
髪の毛の茶色の4は、焦げ茶色という感じ。うん、これでいいかな。
『では、これでよろしいですか?』
だいたい理想通りかなー。そこまでやりこむつもりもないし、これでちょうどいいかも。
「はい、それでお願いします」
『また、いつでもヘルプを呼び出すことができます。それでは、よい生活を』
そして、僕は光に呑み込まれていった。
あ、クラスのこと聞き忘れた……いいか、あとでヘルプでも確認すれば。




