第1話 ゲームを始めるまで
別名義削除済みの再投稿です。本人ですよー。需要ありそうなら第二部書くかもしれませんー。
僕は藤根智秋、高校生。
突然だけど、僕はゲームがあまり好きじゃない。
好きじゃないというより、『苦手』なんだ。
独特の画面の動きがすぐに酔ってしまうし、初めてのVRMMOで一歩踏み出した瞬間に盛大にずっこけたのは今思い出しても少し恥ずかしい。
運動神経はそこまで悪くないはずなんだけど、とにかくゲームは苦手だった。
「智秋! この前のゲーム、どうだった?」
そう僕に声をかけてきたのは、クラスメイトの戸部理人。
何故か僕によく話しかけてきてくれる、面倒見のいい奴だ。
「どうだった、って言われても……僕、ゲーム苦手だから……あと、このゲームは少し画面の動きに酔っちゃった……」
「ほうほう」
僕は理人から借りていたゲームを渡しながら、感想ともいえない感想を言う。
「何だよ、付き合いわりーな!」
「あんな奴ほっとけよ、理人!」
理人は気さくな性格からか、クラスでも人気者だった。
男子からはもちろん、イケメンで気が利くことから女子からも人気者。その上成績優秀。
だけど、それを鼻にかけたことはない、完璧超人だ。
「……あ、俺さ、今度はこのゲームやってんだ!」
周囲のクラスメイトを手で制して、僕に違うゲームを差し出す。
パッケージと、パッケージに描かれたアイコンのデザインを見る限りでは、これもさっき借りていたゲームと同じく、VRMMOみたいだ。
「これ! 『ハンター&テイマー』! プレイヤーはハンターかテイマーかを選ぶんだ! 貸しとくからさ、感想聞かせてくれよ!」
ゲームを渡してくる理人だけど、正直僕には理解できない。
昔から『付き合いが悪い』って言われる僕にここまで絡むのは理人くらいだし、僕が逆の立場だったらさっさと構うのをやめる。
「うん……その、でも僕は帰るね。用事あるし」
「まあまあ。持っていくだけ持って行けって。あと、VRMMO本体も貸しとくからさ!」
「う、うん……わかった。ありがとう。でも、そっちはさすがにお金払うから……」
本体はかなり高額なものらしいけれども、以前にゲームをやる時に半ば強引に渡されたまま、返すタイミングを逃している。
今回も返そうと思ったけれども、こうして新たなゲームを渡され、そのたびに『返さなくていい』と念を押されるため、返すことさえ難しい。
「いいって! 俺、新しい機能が追加された奴買ったし、正直言って邪魔なんだ、その本体」
せめてお金を払おうとしたけれども、理人にはそうばっさり切られた……。
そんなにやって欲しいのかな、このゲーム……。
「おい! 理人が誘ってんだからお前もやれよ、ゲーム!」
「それとも俺達に負けるのが怖いのかな~?」
……理人の好意はありがたいけれど、個人的にはこういう連中を先に何とかしてほしい。
でも、さすがに借りを作りっぱなしだからなあ……どうすれば一番いいのかな。
お金はだんだん貯まってきているから、本体代とゲーム代くらいは払えるから……また、渡す準備くらいしておこうかな。
「じゃあね、理人」
「おいこら! シカトこいてんじゃねえ!」
すっ、と。
音もなくそのいちゃもんをつけてくる二人を『通り過ぎる』。
……まあ、いちゃもんをつける気持ちはわかるけれどね……。
――常人には何の予測もできない、止めようもない動き。
……なのらしいんだけれど、僕にはできているという自信はあまりない。
藤根家は、歩法だけを習う。
そこから発展させるのは個人の自由で、僕は藤根流の中で最も期待されている……ということらしいんだけれど、僕は何も習わなかった。
よし、視界良好。前方に誰も僕の行く手を阻むものはなし。
さっさと帰って寝よう!
とん、と地面を蹴って周囲の人間を『すり抜けていく』。
……ように見えるだけだからね?
それにしても、僕は普通でいたいだけなんだけど、何でこんなことになるかなあ。
だけど、どこかに面白いことないかなあ。
普通でいること、も好きだけれど、同じくらい面白いことも好きなんだ。
「……ゲーム、か」
右手に持ちっぱなしだったパッケージを見つめながら、僕はふとつぶやく。
「暇だし……あとで絡まれるのも嫌だし、やってみようか」




