第26話 帝国暗躍
キリの良い所で終わらせてますので短めです。
アシュレー君を他者から見た場合の強さが分かります。
「農業が盛んだと聞いていたからもっと田舎かと思ってたよ。平和そうな良い街だね。…ちょっと気が重いよ。」
白い壁に囲まれたフォレストサイトを眺めながら、男が呟く。
色白で赤髪の、年齢30歳前半くらいの優男。身長はこの世界では高くもなく低くもない、170センチ程度。顔は可もなく不可もない、普通。着ている服も特徴は割愛するが、どこにでもいそうな一般人の服装だ。全く特徴のないことが特徴とも言える男は、ユッタリとした足取りで街への道を進んでゆく。
「何を日和ったこと言ってるんだ、ケイネス。それでも栄えある帝国の軍人か。」
そんな男に注意をするのは褐色の肌の10歳くらいの男の子。水色の髪を後ろで束ね紐で結んでいる。細身で顔はある程度整っているが、長めの前髪と鋭い目付きが近寄りがたい雰囲気を醸し出している。服装はこちらも割愛するが、一般的な服装である。
「任務は忘れてないさ。だからこそこんな割愛されちゃうような、何の特徴もない服を着てる訳だし。」
「割愛?まあイイ。ところで本当にこの街なのか?」
「大神官殿の予言の通りならね。」
「我らの脅威がそこで育つ、か。」
「だからこそ壱百人委員会が指示を下してきたんだし。実際に工作用に侵入させていたナーガが倒されてる。」
「それが信じられん。かなり入念に調整されていた個体だったろう。ギルドのA級3、4人が組んでやっと勝てるくらいだったはずだ。」
「それが不思議なんだよ。Bランク以上のギルド登録者の動きは逐一把握していたはずなのに、いつの間にか倒されてた。しかも付近での高ランク登録者の活動は確認できていない。」
2人が話すのはアシュレーが倒した魔獣、ナーガについて。ステータスの数値上ではトップランカーと同等の魔獣であったが、イコールでトップランカーと同程度の強さという訳ではない。魔獣は総じてHPが高く、それを削り切るためには同程度のステータスであっても3倍以上の人員が必要とされている。アシュレー、つまりグリザイユはギルドのEランク登録員であり単独で行動していたため、彼らの監視対象から除外されていたのだ。
「まあ、僕達がやることに変更はない。フォレストサイトへの潜入及び大神官の告げた脅威…おそらくナーガの駆除者だろうが、その調査と始末だ。」
「了解。ちょうどお迎えも来たようだしね。」
「…ちっ。」
2人に向かって歩いてくる、紺色の作業服を着た男が1人。その男の登場に少年は明らかな不快感を示す。
「待ちくたびれたヨ。どこで油売ってたカ。」
「早すぎるくらいだろうがっ…!ナーガの反応消失から命令、到着まで2週間だぞ。」
「本当だよ。ヴォルザの能力がなかったら馬を使い潰したとしても首都からここまで2か月近く掛かってる。…そっちこそ寝床は確保できたのかい?」
「ばっちりヨ。商店街にあった店を確保してるネ。」
まるで飲み会の店を見つけてきたかのように簡単に告げる作業服の男。その言葉に眉を顰めるヴォルザと呼ばれた少年。
「…店の人間はどうした。」
「死んでも誰も困らないようなジジイとババアだったネ。裏に養豚場があったから処理が楽だったヨ。」
「マンチュー貴様っ…あれだけ大きい都市だ、空き家など幾らでも有っただろう!人を殺めてまでその店を確保する必要があったのか!?」
「…ガキのくせに生意気ヨ…ヴォルザ。」
2人の雰囲気が剣呑なものへと変わっていく。お互いがお互いを気に入らない…2人を見れば誰もがそう分かるほどに、殺気が膨れ上がっていく。そこに割り込んでいくケイネスと呼ばれた男。
「はいはいはい、仕事の前に面倒なことはやめてくれ。ほらほら、2人とも行くよ!」
「フン。」
「…チッ。」
街へと歩き始めた3人。
平和を願いながらも、国からの命令を仕事と割り切る者。優しさを持ちながらも、国からの命令を絶対として従う者。この2人だけであれば、フォレストサイトに目に見える変化は現れなかったかもしれない。
だがーーー
「(あ~、イラつくネ。…仕方ない…気晴らしに遊ぶかネ。2人にバレテモ調査目的て言えばOKネ。………ガキへの恨みはガキで発散するヨ…)」
国からの命令など関係なく、利己的な理由で、笑って人を害せる者。
”マンチュー”と呼ばれたこの危険な存在が、街を恐怖のどん底へ落とし入れていく。
おや?作業服…?
商店街の店…?




