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ゴッドブレス・ミー  作者: tonton
第一章 幼年編
20/50

第20話 不吉な影と小粒な仲間

 かなり間が空いてしまいました。

 申し訳ありません。

「〈アナライズ〉!」



 俺は魔法を唱えながら大蛇と距離を取り、オオイさんも短い手足を動かして木の陰に隠れる。

 唱えた魔法は解析魔法〈アナライズ〉。

 対象のステータスを確認するための魔法だ。

 俺の前に以前使用したステータスの青い板とは異なる、紅い板が浮かぶ。

 そこには…



 NAME ナーガ

      魔獣

      (爬虫類種)

 H P 1000/1000

 M P 1000/1000

 STR 100

 VIT 100

 DEX 100

 AGI 100

 INT 100


 SKL 猛毒の体液

     猛毒の牙

     邪神の呪印



 …こいつ、結構ヤバいんじゃね?

 ステータスが通常時の俺とトントンなんですけど?

 それにスキルが禍々しすぎる。

 〈猛毒の体液〉と〈猛毒の牙〉は分かるけど〈邪神の呪印〉って何だ?

 知りたいけど知りたくない…近寄らないで遠距離攻撃だな。

 そう決意して魔法を放とうとしたところで、後ろの何かにぶつかった。

 ん!?下がるときに確認したけどこんな場所に壁は…



『アッシュ、離れろ!』

「ギャオーーーー!!!」

「いぃ!?」



 叫び声の直後、ナーガが俺の身体に巻き付いた。

 俺の後ろ(・・・・)から。

 壁じゃない、こいつの胴体だ!!

 どうやら姿を現す前に既にその長い体躯を水面下に潜ませ、俺の周囲を包囲していたようだ。

 ギチギチと俺の身体が締め上げられていく。



「こ、これは洒落になら、ない…」



 以前父さんに教わったが、蛇は獲物を締め上げて圧殺してから一呑みにするらしい。

 下手に知識を持ってるせいで恐怖心も倍増だ。知らなければよかった…!

 必死に力を込めて持ちこたえているが、加護無し状態だったら絞められた瞬間、水風船みたいに弾け飛んでいただろう。

 それにこいつの体表、水ではない何かで濡れているようだ。



「くっ、これが〈猛毒の体液〉か!」



 おそらくこの分泌物が汚染の原因だろう。

 肌がピリピリ痺れる感覚とここに来た時に嗅いだ、あの異臭がする。

 今は〈神の心臓〉の状態異常完全無効化で毒は効かないが、効果が切れたらどうなるか分からない。

 制限時間は1分ーーーいや、心臓が起動したのはもっと前だ、40秒程度だろう。

 早く脱出しなければ!

 もがく俺の様子をナーガがジッと見ている。

 猛毒の体液に触れているはずなのに一向に弱らない俺を不審に思っているのだろう。

 だが…



「(ガパァ)」

「…いやいやいや、そんな大口開けてどげんしたとですか?」



 口から身体以上の異臭が立ち昇るが、それより何より、口内に並ぶ牙。

 紫色のぶっといサーベルみたいな牙が上下にズラリ。

 ポタポタとヤバイ雰囲気満載の液が滴っている。



「くっ、頑張れ、俺!!!」



 滅茶苦茶ピンチだが、これは大きなチャンスだ!

 俺は剣を持った右腕をヨイショと引き抜き、剣を思いっきり口の中目掛けて投擲した。

 鉄の剣が唸りを上げ回転しながら口内に吸い込まれていく。



「グギャーーー!!!」

「よし!」



 剣はバキッとグシャの間くらいの音をさせながら、牙の何本かをへし折り口の中に突き刺さった。


 拘束が緩んだ隙をついてなんとか脱出する。

 その長大な体躯を滅茶苦茶にくねらせて暴れるナーガ。

 足場にしていた水面の葉っぱまでぐちゃぐちゃに千切れ飛んでいく。

 〈神の心臓〉の起動で奴の3倍近い力になっていたはずだが、どういう訳か抜け出すのにかなり苦労した。

 また拘束されたとしたら、抜け出せる可能性は限りなく低い。

 やはり遠距離からの魔法をメインに戦うべきだな。

 俺は葉っぱの足場を駆け抜け、大きく距離を取った。



『アッシュ!油断するな!』



 その声の直後、ピタッとナーガの動きが止まった。

 そしてその体表に、寒気がする程の蒼が走った。

 蛇の身体にびっしりと浮かぶ、蒼い蛇のような紋様。

 もしかして、これが〈邪神の呪印〉か!?



「オオイさん!さっき〈アナライズ〉で見たんですけど、〈邪神の呪印〉ってどういうスキルなんですか!?」

『!?…全ての魔力と負の感情を糧にして、対象の能力を爆発的に向上させるスキルだ。おそらく、与えられた痛みと、その痛みを与えた君への憎悪で発動したんだろう。』



 心臓の起動と合わせてもう一度相手の情報を見ておいた方が良いな。

 〈アナライズ〉を唱える。



 NAME ナーガ

      魔獣

      (爬虫類種)

 H P  452/1000

 M P    0/1000

 STR 200

 VIT 200

 DEX 200

 AGI 200

 INT 200


 SKL 猛毒の体液

     猛毒の牙

     邪神の呪印



 ヨシ、結構削れてる!

 まあ、体内を直接攻撃されたんだから、下手すりゃ即死だしな。

 〈邪神の呪印〉…凄いスキルだ…凄いスキルなんだろうけど…改めて〈神の心臓〉の突き抜けっぷりが浮き彫りになるな。



「キシャーーーー!!!」


 

 もう終わりだとでも言わんばかりに、殺気と怒気を向け一直線に飛び掛かってくるナーガ。

 だが、問題ない。

 ---距離さえ取れれば、問題ない。



「終わるのはお前だ!〈フレイムジャベリン〉!!!」



 魔法の名を叫んだ直後、俺の頭上に現れる、真紅の巨槍。

 本来なら長い詠唱が必要な上級魔法だが、俺には不要。

 知の神お墨付きの俺の魔力で紡がれた巨槍は、もはや破城槌(はじょうつい)のような大きさだ。

 剣を手放した俺に対し、自身の勝利を疑いもしていなかったナーガ。

 まさか俺が魔法を使えるとは思ってもいなかったのだろう、蛇の表情など分かる訳はないが、その瞳は驚愕で見開かれていた。

 そして、奴は俺に飛び(・・)掛かってきている。

 空中で移動できる蛇はいないし、こいつにそんなスキルはない。



「飛んでけぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」



 巨槍を引っ掴んで、思いっきりブン投げた。

 ナーガは避けることもできずに槍と接触し、そしてーーー



ドッゴォォォォォォンンン!!!



 漆黒の巨躯は爆炎に包まれ一瞬で炭化、そのまま水底へ沈んでいった。

 中級以上の攻撃魔法を使うときは十分に距離を取れ。

 …オオイさんが言っていたとおりだった。

 あんなの至近距離で使ってたら、俺も死んでたわ。


 奴自体が毒の塊みたいな魔獣だったけど、あれだけ炭化してしまえば死体の毒性も消えただろう。

 水底へ沈んだ死体は問題なさそうだ。

 周囲の環境が元に戻るかは分からないが、こればかりはどうしようもない。

 叔父さんに相談してみて、それでもダメなら神頼みだな。



『お見事。初陣とは思えないほど鮮やかに決まったね。』

「オオイさんの剣がなかったら、間違いなく死んでました…あっ、剣まで燃やしちゃった!」

『仕方がないよ。元手は掛かってないし、気にしなくてイイ。』

「すいません。…それにしても恐ろしい魔獣でしたね。ステータスがオール100なんですもん。トップランカー相手にしてるのと同じですよ?」

『…オール100?…僕はアナライズの情報は見れなかったんだけど、全て100越えだったのかい?』

「100越えっていうか、全部100ピッタリでしたよ。」

『……………』

「オオイさん?」

『…いや、何でもない。それより先を急ごう。水源はすぐそこだ。』



 何か考え込んでいたように見えたけど、気のせいか?

 オオイさんに急かされて、俺は奥へと足を進めた。





~~~~~


 まるで鏡のような水面が眼前に広がる。

 ようやく目的地、水源だ。

 洞窟を少し進んだ半地下のような場所に、それは広がっていた。

 洞窟内だからか少し気温は低いようだが、周囲の空気は澄んでいる。

 水の湧き出る音と、時折響いて聞こえる水滴の落ちる音がその清浄な雰囲気を引き立てている。

 これだけ綺麗な場所ならピュアスライムも生息していそうだと周囲を見回すが、気配らしいものはない。


 

「まさかハズレ、ですか…?」

『いや、この環境なら間違いなくいるよ。ピュアスライム自身は全く戦闘能力がない魔獣だから、気配を消すのが上手いんだ。敵意がないことを示せば姿を見せるよ。』

「…示し方が分からないんですけど。」

『食べ物だね。』

「シンプルですね。でも俺、食べ物なんて持ってません。」

『それは僕のオリジナル魔法で解決できる。〈フルーツ〉!』

「ヒドイ名前の魔法だな!?」



 詠唱直後、オオイさんのシッポの辺りに魔法陣が展開され、そこから大量のフルーツが湧き出してきた。

 角度的にはオオイさんの尻から果物が出てるように見える。

 なぜ魔法陣がその位置なんだ…!

 しばらくして魔法の発動が止まると、様々なフルーツが山のように積み上がった。



『後は来るのを待つだけだ。これを食べながらのんびり待とう。』

「…俺は遠慮します。」

『何で?美味しいよ?』



 それ以前に犬ってフルーツ食べて大丈夫なのか?

 素朴な疑問を抱きながら、道の脇から流れる水で体や服を洗う。

 洗い終わった水は火魔法で沸騰させてから解毒魔法を掛けて捨てよう。

 猛毒の体液が染みついた服を着続ける訳にもいかないし、帰ったら買い替えだな。

 …くそっ、この服、気に入ってたのに!

 俺のテンションが若干落ち気味になった時、オオイさんから声が掛かった。



『アッシュ、来たよ。静かに、ゆっくりこっちにおいで。』

「!は、はい。」



 そこには透き通ったスライムが1体いた。

 形はまんまるで体長は30センチほどだろうか、地面に接触した部分が若干ぷにゅっと潰れている。

 以前、普通のスライムを見たことはあるが、あれにはこちらを害そうとする敵意のようなものが見えた。

 だが、このスライムにはそれがない。



ぷるるん、ぷるるん



 柔らかそうな身体を震わせながら、フルーツを体内に取り込んでいる。

 消化能力は弱いのだろう、体内に入れたフルーツは元の形のままだ。



ぷるぷるっ



 喜んでいるのか、身体を震わせている。



「…ヤバい、なんかカワイイ。」

『見た目はワイルドな果物わっさりゼリーだけどね。』

「何ですか、それ?」

『僕の世界にあった至高のデザート。』

「果物のシロップ漬けみたいな物ですか?…それより、粘液ってとうやって手に入れるんですか?」

『くださいって頼めばくれるよ?』

「いや、冗談はイイですから。」

『いや、本当に。冗談じゃなく。』

「…えっ、本当に?言葉を理解できるんですか?」

『昔生態について研究してみたけど、この子達は言葉ではなく相手の感情や思考を読み取っているらしいんだ。他者の考えや状態を知ることが生存する上で必要だったからこそ、獲得した特性なんだろうね。だから、君が真剣に頼み込めば絶対に応えてくれるよ。』



 俺はピュアスライムの前まで歩み寄り、しゃがみ込む。



ぷるぷる


「…俺の大事な人が、病気で苦しんでるんだ。俺は、その病気を治すための薬の素材を集めてる。薬を作るには、君の粘液が必要なんだ。分けてもらえないだろうか?」


ぷるるんっぷるるんっ



 この子には目などないはずなのに、まるで心の中まで見つめられているような気分になってくる。

 ただ、不思議と不快には感じなかった。


 

ぷるんっ



 見つめ合って(?)から数秒、ピュアスライムから直径5センチほどの球体が出てきた。



「これが粘液…!…じゃない。」


ぷるぷるっ



 それは、小さなピュアスライムだった。

 …なんで?



『連れて行けってことだと思うよ?』

「この子に粘液を出してもらえってことですか?」

『たぶんね。これも昔研究して分かったことだけど、ピュアスライムは接触した一部の生物に対して、自分の子供を預けるんだ。ピュアスライム自身、戦闘能力がないからその生物に子供を運んでもらって生息域を広げるのさ。ただ、ピュアスライムが住めるくらい綺麗で安全な場所は滅多にないから、結構長い付き合いになると思うよ?』

「…まあ、粘液のお礼だと思えば安いものです。よろしくね、君の名前は…」

『僕が命名しよう!名前は”ブルボn「却下です。」



 なぜか言わせてはいけないような気がした。

 それに名前はもう決めてある。


「君の名前は…ティムだ。」


 嬉しそうにティムは身体を震わせた。



 新しい仲間(?)が増えました。

 村で仲の良かった友達の名前を付けるあたり、アシュレー君が実は寂しがってるのが分かりますね…。

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