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鳥葬

よし、全部まとめて殺しちゃおう。


無邪気にそう言い放った駒鳥神は、分身たちと一緒に檻をこじ開け、中に入っていたものたちをついばみ始めた。

四方八方が鉄格子。前面だけを壊してこじ開ければ、中にいる人間たちはもう逃げ場のない袋小路。逃げることもできず、その愛らしい嘴と爪に捉えられていく。


どんなに巨躯でも駒鳥だ。猛禽のように鋭い嘴も爪もない。体躯に物を言わせて押さえつけ、攻撃力の低い嘴でひたすらつつくだけ。攻撃力が弱いせいで一撃で殺害には及ばず、そのために何度もつつかねばならない。

つんつん、と擬音で書けば可愛らしい。だがその行為は、人の体に鎚を振り下ろすのとそう変わらない。ぐちゅ、ぶつん、と人体が潰れていく音がする。


「あぁ、取らないで! これはわたしの!」

「こっちはわたしがやるの!」


駒鳥の群れが粟穂を取り合うような会話。だがそこに微笑ましさも愛らしさもない。ついばまれているのは粟穂ではなく人間だ。どうかお許しください、我々が何をしたというのですか、という命乞いを無視し、檻の中のものをつつく。

罪状など、ただ一つだ。わたしに忠実でない。それだけだ。憎らしいカッコウは当然、可愛い駒鳥姫を害した人間ももちろん。そして、その巨悪を許容する周囲の人間だって、神に忠実でない『悪いもの』として処刑対象だ。

うんうん、忠実な人間たちのほうはよくやってくれた。『悪いもの』を一箇所に集めておいてくれるなんて。おかげでやりやすい。人間の尺度では法律だとか何だとかあるらしいが、そんなこと知ったことではない。わたしに忠実か、わたしの気に障らないか、巣の決まり事なんてそれだけなのに。


「わたしはこっち! あなたはそっちね!」

「せーの!」


粟穂を引き裂くように、フリューゲル卿の頭と脚をそれぞれ咥えて引きちぎる。ぶらんとぶら下がったものを分身が咥えて別の方向に引っ張る。ぶっつりと切れたら、細切れになった破片を食い散らかす。

飢えた猛禽だってもう少し綺麗にするだろう。遊びを交えた残虐な光景に牢番がひえっと息を呑む。


もちろん、牢番の中には職務に忠実な者もいた。駒鳥神の乱心としか言えない光景に恐れつつも、どうかおやめくださいと制止をかける。しかし、彼らもまたついばみ殺されていく。逆らうもの、止めるものすら全員その対象とばかりに。


「ねぇねぇ! こうやったら箱みたい!」

「まぁ、本当だわ!」


壁ごとえぐり取り、檻の一区画を切り取る。こじ開けた一面を上にすれば、そこにできるのは煉瓦の壁を底面にした凹の字の箱。壁が床になって壁が天井になったせいで、中にいる人間たちが無様に転がる。使用人たちがまとめて収監されていた檻を駒鳥神が持ち上げる。

ふわりと上空へ。そして、ぱっと爪を離す。10階建ての尖塔よりも高い上空から、檻を放り捨てる。ぐしゃり。鉄格子と煉瓦の箱の中で赤が弾けた。


「あはっ! あはは!!」


まさにやりたい放題。だがまだ残っている。愛らしい黒い丸い目が残虐な光をたたえて一つの檻を見る。メイドたちが入っている檻へ。まったくの無辜のメイドたちの中心で、息を潜めている憎らしい外敵へ。いかにも無害ですといったふりをしている愚かなカッコウへ。

今更怯えているのか。それとも、ここからでも逃げ出そうと機を窺っているのか。そんなこと許しはしない。今ここで殺す。このカッコウの正体が知れた時、法律などという人間の尺度に合わせて待ってやったがそれは意味がなかった。ただ日が経つだけで、解決しない。それどころか、そうこうしているうちに駒鳥姫が害されてしまった。

じゃぁもう、人間の尺度なんて無視するに限る。合わせてやっていたら何も解決しないと学習してしまったので。


だから殺す。もう皆殺しにしてしまおう。我慢なんてやめた。外敵も、気に食わないものも、全部。

親鳥だって育てる雛鳥を選ぶ権利はある。悪いカッコウは巣から落として、餌だけねだって可愛げのない雛鳥も巣から落とす。生態として自然なことだ。


「さぁ、始めましょうか!」


駒鳥神がいっせいに檻に群がった。

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