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03.出会いの予感

数日が過ぎたある日の翔陽高校。昼休みのチャイムが鳴り終わったばかりの教室で、陽咲は──。

窓の外では夏の陽射しがまぶしく光り、教室は弁当の匂いとおしゃべりの声で満ちていた。

「ねぇ陽咲、今日の帰りに七海も誘ってカフェに寄っていかない?」

「カフェ良いね。新作の抹茶オレンジを飲んでみたい。今回は、淡路島なるとオレンジをふんだんに使っているらしいんだ。」

陽咲は、まるで宝石でも見つけたかのように瞳を輝かせ、美鈴の方へ向き直った。

七海は中学からの友達だが、美鈴は陽咲の幼なじみで、陽咲の性格をよく知っているひとりだ。

そんな美鈴は呆れた顔で陽咲のほっぺたを抓った。


「いたた。いきなり何するのよ。」

「ほっぺた占いの結果だと、今日は機嫌が良さそうね。何か良いことでもあったの?」

「ほっぺた占いって何なのよ?」

陽咲は少しムッとしながら言うと、美鈴がクスっと笑った。

その笑顔に、陽咲は少し安心する。

「陽咲は、こうやって抓った時の反応で分かるのよ。っで、進展はあったの?」

「あっ、先日は新堂くんに会えた。やっぱり本物は良いね。」

「新堂くんはアイドルじゃ無いんだから、そんな言い方は変だと思うけど。っで、告ったの?」

美鈴の興味は、告ったのか否かのようだ。

「まだ告ってない。だって、新堂くんは私の事知らないだろうし、告った所で良い返事貰えそうにないじゃない。先ずは陽咲の事を知ってもらわないと始まらないかなって。」

「でも、早くしないと他の子に取られてしまうわよ。」

美鈴の返事に陽咲はハッとするが、一発勝負に万全の対策を立ててから挑みたい。

「んーっ、でもどうしたら良いか分からないし。」

「そんな事を言っていたら、いつまで経っても進展しないわよ。こう言うのは勢いが大事なんだから。」

「もう少し考えてみる。」

陽咲の返事に美鈴は深追いをすること無く話題を逸らした。

「放課後にいつものカフェに行こう。七海にはうちから誘っておくから。」

「ありがとう。じゃ、よろしく」


放課後を迎えた3人は電車に乗り込む。

学校の場所が悪いだけにカフェは近くに無く、特急電車は停車しない。

そのため、普通電車で特急停車駅まで行って乗り換える必要があるので、3人は自宅がある色麻駅まで行ってからカフェに行くのが何時ものパターンとなっていた。

カフェに向かう道中に1人の男子高校生が駅に向かって帰っていた。

『もしかして、新堂くん?』

陽咲は男子高校生が翔汰だと気付くと思わず赤面してしまう。

それを見た美鈴は陽咲に声を掛けろと言わんばかりに背中を軽く押す。

『いや、まだ私には心の整理が出来ていない。』

陽咲は下を向いて翔汰を見ようとしない。

陽咲の姿を見かけた瞬間、翔汰は驚いた。

あの日、偶然に会った可愛い子だ。

あの時と同じように、顔が赤くなる自分を感じながら、心の中で「また会えるなんて」と嬉しさが込み上げてきた。

でも、何を話せばいいのだろう。

あの日の偶然の出会いだけじゃ、何も始まらない。

翔汰は少し焦りながらも、陽咲が見ないように足を速めた。

どうしてこんなにも心が落ち着かないのだろうか。


ほんの一言でいい。

「こんにちは。」とか。

それだけで世界が変わる気がするのに──。

けれど言葉は喉の奥に引っかかり、互いの背中は少しずつ遠ざかっていった。

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