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お嬢の美妙な冒険  作者: 安久谷クレージョ
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愛しの錯誤異物の巻 その①


「うう……なんだか頭が痛いわ」


 翌日、ラミアとアルはオークション会場へ向かっていた。


「だから言ったのです。飲みすぎですよ、お嬢様」

「わたくしが飲みすぎなどと……昨晩はすぐに寝たはずよ。だってお酒を飲んだ記憶が(・・・・・・・・・)ないもの(・・・・)


 その事実こそが飲みすぎであることを示す動かぬ証拠なのだが、アルは何も言わなかった。これ以上話が進展することはないだろうし、そもそもどうだっていい話だったからだ。


「そんなことよりもお嬢様、オークション会場が見えてきましたよ」


 アルが指さした先には、ドーム状の巨大な建物があった。

 それは街中に突然現れたのではない。

 舗装され、整然と植えられた草木で景観の整えられた広大な土地があり、その中心にドーム状の建物――サーシャのオークション会場があるのだ。


「話には聞いていたのだけれど、実際に見てみるとやっぱり迫力があるわね。街の建物とは段違いだわ」

「はい。どうなさいますか、お嬢様? 今日、オークションは行われていませんが、中を見学することは可能だそうですよ」

「そうなの。少し見ていくのも悪くないわね。時間はあるのかしら?」

「はい。当然です」

「だったら、見ていきましょうよ。そうじゃないと視察にならないわ」

「そうおっしゃると思って、既に話はつけてあります」

「さすがアル。わたくしの優秀な秘書ね」


 ラミアに分かりやすく褒められて、アルは少し嬉しかった。


「当然の仕事をしたまでです」



※※※



「ようこそいらっしゃいました、ラミア・フォン・ハルフォード様」


 愛想よくラミアを迎えたのは、オークション会場の管理人だった。

 小太りの中年男で、黒く光ったシルクハットを被っている。


「私はビノ・ラビランと申します。本日は私がこの会場をご案内させていただきます」


 妙に胡散臭い男だ、とアルは思った。

 だが、もちろん口にも出さなかったし表情にも出さなかった。


「頼りにしておりますわ、ビノ様」

「かの有名な錯誤異物研究家であるラミア嬢にそう言って頂けるとは、このビノ・ラビラン一生の光栄でございますな。見学はすべて私にお任せください。わっはっはっは」


 ビノが体を揺らすように笑い、それから、


「こちらです。遅れぬようついて来てください」


 と、オークション会場の中へ入って行った。


「さあ、私たちも行きましょう、アル」

「はい、お嬢様」 



※※※



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