メイド兼友人! の巻 その②
そして、それは単純にお嬢様がそういう趣味を持っていらっしゃるだけだな、と。
だが、そんなアルの思いを意に介さず、ラミアは続ける。
「メイドさんの下着が不慮の事故でもうっかりでもラッキースケベでも、理由はどうあれ見えてしまったと仮定しましょう。でも、それがあなたみたいな何のこだわりもない、普通の下着だと、その魅力も半減……いや、ほぼ消滅してしまうの」
「消滅ですか」
「そう、消滅よ。だからアル、わたくしの下着を貸してあげるわ」
自分の寝間着に両手を突っ込み、下着を脱ごうとするラミアをアルは全身を使って食い止める。
「さすがにそれはいけません、お嬢様」
「どうしてよ」
「どうしてって……」
アルは考える。
どうして人が下着を脱ごうとしているのを止めなければならないのか。
いや、あるいは、どうして下着が必要なのか。
しかし一方で、道行く人すべてがノーパンで歩いている世界というものも想像がつかなかった。
「それは、お嬢様。そういうものだからです」
「それでわたくしが納得すると思って?」
「何よりも飲みすぎです、お嬢様。体調を崩されますよ」
「飲みすぎですって? わたくしが?」
「そうです。明日はオークション会場の視察、そして町長との会談など予定がたくさん入っています。ですので、お酒は控えてください。それから、下着を脱ごうとするのをやめてください。いくら私がお嬢様を敬愛しているといっても、お嬢様が脱いだばかりの下着を履いて喜ぶような真似はいたしませ……」
言いかけて、アルは、ラミアが既に眠ってしまっていることに気がついた。
アルはため息をひとつつくと、ラミアをベッドに横たえた。
そして立ち上がろうとしたとき、アルはスカートの裾を掴んだままのラミアの手を見つけた。
まるで壊れやすい硝子細工を扱うように、アルは丁寧にラミアの手を自分のスカートから離す。
無垢な子供のようなラミアの寝顔を愛おしく思いながら、アルは立ち上がった。
そのタイミングを見計らったように、ラミアが寝ぼけた声で呟く。
「おじい様……」
アルは一瞬動きを止めた後、ラミアに布団を被せ、荷物の後片付けに戻った。
※※※
ラミア・フォン・ハルフォードの祖父もまた、錯誤異物研究家だった。
そして、ハルフォード家の末娘として生まれたラミアを誰よりも可愛がっていたのも彼だった。
彼は死に際、最愛の孫娘のためにとある錯誤異物を遺した。
それは、他の錯誤異物を探知し、その在処を持ち主に知らせる力を持っていた。
それこそが、ラミアの髪飾りである。
祖父の死後、ラミアは祖父と同じ錯誤異物研究家としての道を歩み始めるのだが、今はこれについて語るときではないだろう。
とにかく、ラミアは今なお彼女の祖父を愛している。
それが多少、アルには妬ましかったのだ。




