メイド兼友人! の巻 その①
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「ねえ、アル。今後の予定は?」
ラミアは、ワインの入ったグラスを揺らしながら、クローゼットにラミアの服をしまおうと躍起になっているアルに尋ねた。
窓の外はもう暗くなっており、街灯の明かりが灯っているのが見えた。
「明日は市長と会談を。それから、明日と明後日にかけてオークションの下見を。最終日にオークションに参加し、錯誤異物を回収してこの街を出発します」
「そう。……ねえ、アル」
「なんでしょう、お嬢様」
ようやくクローゼットにドレスを押し込み、アルはラミアの方を振り返る。
「スカートが捲れているわ」
「……申し訳ありません、お嬢様」
アルが、捲れていたスカートを直す。
案外派手に捲れていた。きっとドレスを収納するどさくさに紛れてこんなことになったに違いない。
「ひとつ言いたいことがあるのだけれど、アル、いいかしら?」
「なんでもお申し付けください、お嬢様」
「下着のデザインにはこだわった方がいいわ」
「……私ですか?」
「あなた以外に誰がいるのよ」
アルは嫌な予感がしてラミアの顔を見た。
予想通りラミアの顔は赤くなっていて、目も座っていた。
要するに、ワインのアルコールに酔ってしまったのだ。
「お嬢様、お酒はほどほどになさってください」
「何言ってんのよ。このくらい大したことないわ。大体、ワインは令嬢の嗜みなのよ。本当に、このくらい大したことないのよ。それよりアルの下着の話をしましょうよ」
「私の下着の話をして、誰が喜ぶのですか?」
「わたくしが喜ぶわ」
「冗談はやめてください。すぐにお水をお持ちします」
「水なんか必要ないわ。ほらアル、わたくしの傍に来て」
ラミアがアルに歩み寄り、その袖を引く。
アルはため息をついて、ラミアと共にベッドの縁に腰かけた。
「それで、お嬢様。私にどのようなお話でしょう」
「だから、さっきからずっと言っているでしょう。あなたの下着の話だわ。どうしてそんなに色気もないような下着を履いているの?」
「不必要だからです、お嬢様」
「そんなことはないわ。見えないところに気を配ってこその淑女なのよ」
「お言葉ですが、お嬢様。そのようなことに気を使うよりも、私にとっては、お嬢様に不遜な輩が近づかないよう警戒する方が大切なことなのです」
はあ、とラミアはほのかにワインの香りのする息を吐きだす。
「がっかりするわよ」
「がっかりしますか」
「そう。ラミアはわたくしの何なのかしら?」
「護衛です」
「違うわ。わたくしの友人兼ボディガード兼メイドよ」
「……それがどうかしましたか?」
「この世の生きとし生ける者はみんな、メイドさんの下着に興奮したいものなのよ」
それは嘘だな、とアルは思った。