奇跡のエネルギーの巻 その①
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サーシャの町の郊外、近くに小川が流れる自然豊かな土地には豪邸が立っていた。
ヌエ一家の本拠地である。
豪邸の周囲には高い塀が張り巡らされており、そこをヌエ一家の構成員らしき男たちが見回っている。
普段なら、このような場所に近づく者はいない。君子危うきに近寄らずという言葉もあるように、自分から危険な場所に乗り込んでいくような真似をする人間などいないのだ。
が、今日は違った。
豪華な装飾が施された、赤い派手なドレスを着た少女と、細身のメイド服のようなものに身を包んだ少女の二人組が、わき目もふらず一直線に、ヌエ一家の本拠地へ向かって来たのだ。
見張りの構成員は、怪訝な顔を浮かべながら二人組に近づいていく。
「おい、あんたら、こっちにゃ近寄らないほうが良いぜ。ここはヌエ一家の土地だからな、迂闊に手を出すと痛い目見るぜ」
男に、ドレスの少女が答える。
「それでは、あの建物はヌエ一家のものということですわね?」
「あ? ああ、そうだ。だから近寄らねえ方が……」
「だとしたら、好都合ですわ」
少女は右手をヌエ一家の豪邸へ向けた。
そして何の前触れもなく少女の右手から放たれた火球が、豪邸を囲んでいた塀の一部を破壊した。
男は絶句した。
「なっ……、てめえら、何しやがる!」
「私たちの所有物を取り返しに来ただけです」
憤怒の形相を浮かべた男を、今度はメイド服の少女が腹部への一撃で昏倒させる。
「……さあ、行きましょう、アル。錯誤異物が呼んでいるわ」
「お嬢様のためならば、私はどこへだって行きますよ」
※※※
「兄貴、妙な二人組が!」
クロの部屋に若い男たちが飛び込んできたのは、ちょうどクロが部屋で煙草に火をつけたところだった。
「妙な二人組だぁ?」
クロは若い男たちの顔を見て、ただ事でないことを察した。
「奴ら、すげえ強さで、ここに乗り込んできやがったんです!」
「へーえ、そうかい。そいつらまさか、女じゃねえのか?」
「ど、どうして分かったんです。いや、そんなことよりも、半端じゃねえんです。奴ら、正面玄関から殴りこんできやがって」
「おめえらの言うことを疑っちゃいねえよ。まあ、俺に任しときな。相手が仕掛けてきたとなりゃ、俺も本気で戦う理由ができたってもんだ」
煙草の煙を吐き出し、クロは座っていたソファから立ち上がった。
そして、ソファの後ろに立てかけていた太刀を片手で抱え上げ、部屋を出た。




