進化
奴らは迫ってきていた。
迫ってきていると思えるような重圧があった。
我々は気を張り巡らせる。一日中だ。
碌に寝れていない。
それでも時間は過ぎ去っていくし、永遠と思えるほどの警戒をしなければいけない。
次第に限界がやってくる。
———我々は寝てしまった。
無論、陣形内で交代交代になのだが。
いつ何が来るか分からない状態。
しかし何も起こらなかった事実が朝になりわかる。
ついに我々は狩りに出た。
食料が尽きそうだったのもあるが、気分転換という意味もあった。
なかなかに豊富で取るに困らない。
そんな日々が丸一週間。
——我々は接近を試みた。
数千、数万歩歩いたろうが何もいない。
鳥の鳴き声に混ぜて口笛を吹き、陣形を整える。
その音を掻き消したのは一本の矢。
その矢は一人の眼球を捉えた。
油断はしていなかった。
だからこその犠牲だ!
「構えっっっ!!!」
矢が吹き荒れる。
一気に戦の臨場感が増した。
いや、本能。
我々は走り出した。
すると、ずどん。
地に落っこちた。
上からは矢の雨と追加で石が降ってきた。
我々は狩られる側、ウサギの様な存在だった!
唯一果敢に攻めたのは白狼だろうか。
白狼は落とし穴に捕まることなく、矢や石の雨を掻い潜り、一人足早に進んでいく。
それに比べて俺はなんだ。人の形をした木偶か。
俺は責任を負う者、なのに今、たった一つの穴の中に入って塞がっている。
俺は今、何をする?
何ができるかではなく、何をする?
——俺は今、動き出すっっっ!!!
幸い中小動物用の穴だった故、抜け出すことは可能だった。
しかし、穴から出て初めてなぜ奴らがここ数日何もしてこなかったかがわかった。
武装した数百もの人間が一面に広がっていた。
穴も単なる時間稼ぎか。
皆、弓や斧を携えている。
さっきまでの覚悟とは裏腹に、足が、動かない。
「退避だ…。全員、シロを置いて退避しろ…」
「白狼が、白狼がまだ一人で戦っています!!」
「退避だ…。とにかく、退避するんだ。この世には無謀というものがある」
我々は村に逃げ戻った。
奴らはシロを保護するのに必死になったか、我々を追ってはこなかった。
白狼については、今もまだ戦っていることだろう。




