進化⑥
子が生まれた。
俺とあの料理を作ってくれるかちきな女との子だ。
初めての感情だった。妻が腹を痛め握り潰せてしまえそうなほど小さな生命をこの世に生み落とし、その小さな生命が泣いたときまで、全てが新鮮で、生まれ変わったような感情だった。
俺の命よりも大切なものが二つもできた。
どんなことをしても俺は妻と子を守る。そう決めた。
村が総出で祝ってくれた。ジジイもババアもチビも全員がどんちゃん騒ぎで歌を歌った。
もうシロは村に馴染んでいてみんなと一緒に祝福してくれている。
この村は俺の故郷であり、家族なのだ。
改めて知った。
そして俺はこの村のリーダー。
———つまりは責任を負う者。
——大切な者が多いなぁ。
最近、ようやく冬も過ぎたのでシロの故郷に行ってみようと思っている。
その旨を村に伝えると、皆、総出でシロのために出向くと咆哮をあげる。
こうして春、村の男共は狩り用の武器を持ち、どこかからかの攻撃の対策として隊を組み、出発!
シロは俺と同じ隊だ。
山を駆け上っていく。
その際、俺の隊に白狼もついてきた。
白狼はよく俺とシロに懐いた。
——こいつもみんなと同じ家族だ。
最初の関門は未開拓の地に住む民族の襲来だった。
それは寝込みだった。
皆、暗闇の中で襲われ混乱状態。
そんな中で弓を引いたり、斧を振ったりしてしまい仲間が仲間を殺す始末。
俺は高い音の指笛を吹く。
その合図と共に陣形を組み立て、四方を見渡した。
こちらも暗闇で何も見えないがあちらも見えないはず。
火をつける余裕はない。
つまり、膠着状態!
ようやく暗闇に目が慣れてきた。
———未だ膠着状態だが、ジリ貧だな。
「すまない、なぜ我々を襲うのだ。何かしたのなら謝る。しかし、我々は何もしていないはずだ。我々はただ、故郷に帰りたいだけなのだ!」
すると民族の長のような派手な面をしたやつが、
「(:&&?:68!tv」
何語なのだ。全くわからない。
それでも、会話を止めてはいけない。
この会話の間に何か、何か策を立てなければ!!
ここからが第二の関門。
どすん、どすんという音と共に、マンモスの生き残りが二頭現れた。
轟音が耳を貫く。
奴らもあの巨大な最悪に面食らっている。
「走れ!走れ!逃げろっっっ!!!ほらっいけっ!」
その隙に仲間のケツを叩いて促した。
俺はリーダーだ。一番先頭に立ち、一番後ろで見守る義務がある。
民族はマンモスに立ち向かっていた。
無理だ。
奴らは剣と弓しか持っていない。しかもこんな暗闇で。
マンモスを殺すには不十分だ。
案の定、鼻で捕まれ投げ飛ばされ、踏んづけられ体が爆発して。
マンモスと目が合った。
「おぉ、来るか、来るのか、いいぞ、俺はこいつらと違って強いぞ、石斧だってある、お前を殺せる!!」
鳴いた。鼓膜が悲鳴をあげている。
マンモスが鼻を振り下ろした。
石斧を鼻に向けて投げ、背を向けながら全力で逃げた。
「逃げろ逃げろ逃げろ!!!!」
この関門で50人中5人が死んだ。




