進化
異邦の友との出会いは全てを変えた。
今まで、我々は中小動物を狩る際には重たい石斧などを使っていた。
しかし、その異邦の友は『弓』というのを与えた。
『弓』の効果は凄まじかった。
こうも簡単に兎や猪を仕留めることができるのかと皆、驚嘆した。
より、殺傷能力を高めるため、我々は優れた石を探すことに決めた。
それにあたり異邦の友である故郷に出向こうと村の一部が言い出した。
やはりそのためには言語の壁というものをどうにかせねばならなかった。
我々は彼に寄り添った。
最初、彼は我々を、いや私以外の者を警戒していたようで、飯を食うにも自分で調達する始末。
俺が彼と近くなるのは必然だった。
俺はただ、彼の側にいた。
俯きがちに何かを唱える彼の横で私は歌を歌ってみせた。
我々の村の歌。精霊を奉る歌だ。俺が作った。
何日も何日も、俺は彼に顔を出した。
それは雨の日、それは雪の日、それは雷が地に落ちる日でもだ。
その度、歌を歌い続けた。彼の言葉を待つように。
その日を待つように。
猛暑が一転し枯枯に涼しくなった頃、ようやくだった、ようやく彼がぽつりぽつりと言葉を紡ぎ出した。
その言葉は、歌だった。我々の言語で作られた、俺がいつも口遊んでいる歌だった。
しかし、その歌は俺が歌っている歌とは全く違う、彼の歌だった。
——————この男は強い人だ。見ず知らずのこの地と人に囲まれているのに、自分から接しようとしている。
こいつに報いなければ俺は俺の責任を今後、全うできない!
どこかこの男に対して俺は、村のみんなと同じ感情を抱いている。家族同然だと思っているっ!
「お前は、我々の言葉が分かるのかっ!?」
「うん。わかる。それで、まず、君に訊きたかったんだ、君の、名は、なんだ?」
「な?『な』とはなんだ」
彼は目を見開いた。
「名を知らんのか。なるほど…。名とはその人をその人たらしめるための理由だ。同じ名なんて一つもない。私は君のことが知りたい。
だから、君を作る名を訊きたいのだ」
「…そうか。それはいいな。俺らが合図で呼ぶ音にはそんな意味が…。名、か。
決めたぞっ!我が名はマカミだ!マカミにするぞ!」
「ほお。君の名はマカミか。呼びやすいし、いい名だ。
——改めて、私の名はシロ。君に感謝してる」




