進化
最近、暖かくなってきた。
寒い寒い日々が通り過ぎたのはとうの昔。
マンモスだとかオオツノジカといった大型の動物はもうかなり少なくなった。
代わりにちっちゃなすばしっこい動物たちがうようよ湧いてきた。木の実もぽこぽこ生まれている。
関係あるか分からないが、透明な床が溶けて溢れて土の床に迫ってきている。
冷たい。ぺろっと舐めた。しょっぱい。
男は迫り来る水から離れ木や土、藁で作られた家に戻っていった。
家の中には女と男が一人ずつ。男の両親であった。
木の実をガリガリ歯や石を使い潰していた。
潰した木の実を一口。
「にがっっ!!!」
男は全てを吐き出した。
私の血縁者が集まっていた。
どうやらあのぴょんぴょん跳ぶ動物を狩るとのことだ。私は冷笑してしまう。
「大きい方が狩りやすい」
そう言い出す方が多数だ。
「いや、そういうわけにはいかないのだ。多くの者が苦しんで死んでいる」
「それは困るな。不幸が起きる。ちゃんと畳んだんだろうな?」
「そりゃあもちろん」
そう言うのはムラの死体をよく埋めている鼻の大きな男だ。
「いいか、もう目を逸らしていられないんだ。あの小さなものを狩らねば我々に生きる道は残されていない。不幸なことにここら辺は木の実があまり取れないしな」
「よしそうと決まればやるしかないね」
女が言った。
最近わかったことだが、胸が膨らんでいて、股間に何もないやつは力が弱いらしい。
喧嘩になった時に間違って殺してしまい、反省している。
「お前、いらない。弱いのいらない。黙って食べ物作っとけ」
私は反省を活かした。
兎がぴょんぴょんと跳ねて大の男たちを煽る。
男たちは威勢よくゴツゴツした石や研いで滑滑にした石を投げた。とにかく投げた。
兎や猪を見つければ取り敢えず投げた。
夕飯が落ちるまでただ、投げた。
完全に暗くなっては我々は帰れないので、もうこの辺で、ということで足早にムラヘ。
結局、取れたのは3羽だった。これも何か精霊のせいだろうか。
歯が二又になった男が喚いた。
「何だ一体これはっ!おかしいことだ!朝からやって、たった3羽…。これでは飢えて死ぬっ!死ぬぞっ!」
ムラの男たちはしゅんとしおらしくなってしまった。みんな何をしたらいいかさっぱりといった印象だった。
それはいつまで経っても変わらなかった。毎日石を投げ続けた。それでも結果は、ずっと3羽のままだった。
叉状研歯の男は例の如く吠えた。
「10人だっ!10人がこの数日で死んだっ!もう、もう限界だ。今から海へ行く」
「海?」
「しょっぱい液の道だ。実はそこに何やら動物がいると、こいつが言っていた」
そう言ってでかっ鼻に指をさした。
「えぇ、それはぴしゃぴしゃと。あの白いのに負けず劣らずの速さで海を進みます」
「それではダメなのでは」
「いや、白いやつは暗闇でも我々から逃げてみせたが、海の中のやつはそう逃げられないだろう」
はあ、とついていった。
夜の海はぐねぐねと見たことのない動きで唸っていた。真っ暗で掴めない大蛇は今にも俺らを飲み込んでしまうぞ。
叉状研歯の男は、「行くぞぉぉぉぉおっっ!!!」
男たちは、知能も何もないくせに叫んだ。
ただ叫んだ。
喉が焼き切れ、ゲロが込み上げてくるほどに叫んだ。
男たちの目は血走っていた。肌には小さな粒がわなわなと。
かく言う私もその一人であった。
何も知能のない俺らでも、少し、わかった。
「精霊様、どうか、どうか」
男たちは大蛇の中へ果敢に駆け出した。
男たちは大蛇に向かって石斧を振り回す。
しかし、全て当たらない。そのままぱくっと喰われ、もう二度と出会うことはなくなってしまった。
「退散っっっ!!!!!」
叉状研歯がこちらに走りながら言った。
しかし、俺のとこへ来るまでにぱくりと、食べられてしまった。俺らは自然と、ただ歩いて家に帰っていた。
その途中、何人か喰われた。
それでも、なんだか家に帰ってしまったら、一思いに眠りにつけてしまった。




