第44話 「朝の灯台」
第44話 「朝の灯台」
数年後——朝の光が、灯台の白い壁を優しく染めていた。海人は最上部のバルコニーで、いつものように海を眺めていた。
隣には、少し背が伸びたあかりが立っている。彼女はもう小学生の高学年で、遥のペンダントを大切そうに首にかけていた。「海人おじちゃん、今日もきれいだね」
「ああ。遥も、きっと喜んでるよ」下の庭では、悠真と美咲が朝食の準備をしていた。
美咲のお腹は、もう少しで膨らむ頃だった。
「あかりー! もうすぐご飯だよー!」澪は新しく入った子どもたちに、灯台の歴史を優しく語っている。
奏と響子は、朝の練習を始めていて、軽やかなメロディーが風に乗って広がっていた。海人はゆっくりと深呼吸をした。
胸の奥で、遥の笑顔がはっきりと浮かぶ。(もう大丈夫だよ、遥。
ここはもう、ちゃんと「家」になった。
みんな、ちゃんと生きてる。
……君が灯してくれた光は、
ちゃんと次の朝を迎えているよ。)彼は欄干に手をかけて、小さく呟いた。「行ってきます、遥。
また、夜に会おう。」回転灯は、朝の陽射しの中で静かに止まっていた。
しかしその灯りは、決して消えたわけではない。
ただ、太陽というもっと大きな光にバトンを渡しただけだった。灯台荘の朝は、今日も穏やかに始まる。——「灯台荘の微光」 第44話にて、完。




