表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
灯台荘の微光  作者: 浮世雲のジュン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

40/44

第40話 「遥との、最後の灯り」

第40話 「遥との、最後の灯り」


深夜の灯台最上部。

海人は古びた灯台のペンダントを握りしめ、目を閉じていた。

風が強く、波の音が荒々しく聞こえる。

その音が、十数年前の、あの夜を呼び起こした。(遥……

もう一度、君の声を、ちゃんと聞きたい。

あの最後の会話を、胸に刻み直したい。)海人の心に、鮮やかな記憶が蘇った。

その日も、灯台荘はいつものように穏やかだった。

冬の夕暮れ、荒れそうな空模様だったが、遥は微笑んでいた。「海人、今日は施設の子どもたちを迎えに行くね。

翔太くんが『灯台のおじちゃんに会いたい』って、ずっと言ってたの。」遥はコートを羽織りながら、海人の胸にそっと寄りかかった。

彼女の髪から、いつものハーブの優しい香りがした。

海人は遥の肩を抱き、額に軽くキスをした。「気をつけてな。

波が荒れてるみたいだ。

迎えが遅れたら、俺が車で迎えに行くから。」遥は笑って、海人の手を握り返した。

その手の温もりが、今でも海人の掌に残っている。「大丈夫。

私は灯台の光を信じてるもの。

たとえ暗くても、君の灯りはいつもそこにある。

……ねえ、海人。

もし何かあったら——」遥の声が、少しだけ真剣になった。

海人は彼女の瞳を覗き込んだ。「もし、わたしが少し遅くなっても……

灯りを消さないで。

たとえ一人の胸の中でも、消さないでね。

この灯台荘に来る人たちは、きっと君の光を必要とする。

私がいなくても……君は、灯台でい続けて。」海人は軽く笑って、遥の頭を撫でた。

「何を言ってるんだ。

すぐ帰ってくるだろ?

一緒にハーブティー淹れて、星を見よう。」遥は頷き、いつものように明るく微笑んだ。

でも、その瞳の奥に、ほんの少しの寂しさが浮かんでいたような気がした。「うん。

行ってきます、海人。

……大好きだよ。」遥は海人の唇に、優しくキスをした。

その感触は柔らかく、温かく、

十数年経った今でも、鮮明に思い出せる。海人は灯台の入り口で見送った。

遥の後ろ姿が、夕闇に溶けていくまで、手を振っていた。それが——最後の会話だった。

海人の指が、ペンダントを強く握りしめた。

胸の奥が、熱く、痛く締め付けられる。

あのときの自分の軽い笑い声が、今になって後悔に変わる。(遥……

俺はあのとき、もっと真剣に聞いておくべきだった。

「何かあったら」なんて言葉を、

ただの冗談として流してしまった。

君の瞳の奥にあった寂しさを、

ちゃんと受け止めておくべきだった……)涙が、一筋、頰を伝った。

海人はそれを拭わず、ただ風に任せた。あの夜、遥は施設の子どもたちを迎えに向かった。

激しい波にさらわれ、消息を絶った。

残されたのは、いつも首にかけていたこのペンダントだけ。

そして、彼女の最後の言葉が、海人の胸に永遠に刻まれた。「灯りは、たとえ一人の胸の中でも、消さないで。」海人はゆっくりと目を開け、星空を見上げた。

今、灯台荘には悠真、美咲、あかり、澪……多くの光が集まっている。

遥の言葉が、すべての人を照らしている。(遥……

君の最後の言葉は、俺の命綱になった。

君がいなくなったあの夜から、俺は灯りを消さなかった。

そして今、皆の灯りが、ここで重なり合っている。

君の「行ってきます」が、

こんなにもたくさんの「ただいま」を連れてきてくれた。)海人の胸の痛みは、まだ消えていない。

でも、その痛みの中心に、遥の温かな笑顔が、確かに灯っている。

翌朝。

海人は皆の前に立ち、珍しく自分の過去を少しだけ語った。「遥という女性が、俺にはいた。

彼女との最後の会話が、

この灯台荘を今も守り続けている理由だ。」悠真が静かに頷き、美咲がそっと海人の手を握った。

あかりが「海人おじちゃん、寂しくない?」と聞いてきた。海人は微笑み、あかりの頭を撫でた。

「寂しいよ。でも、皆がここにいてくれるから……

灯りは、消えずにいる。」岩場で奏のギターが響く中、海人は心の中で遥に語りかけた。(遥……

君の最後の「大好きだよ」が、

今も俺の胸を温かく照らしてくれている。

ありがとう。

この灯台の微光は、

これからも、たくさんの人を迎え続けるよ。)

(第40話 完)


遥との最後の会話を、詳細に、感情豊かに描写しました。

・別れの情景

・会話のやり取り

・遥の予感めいた言葉

・海人の当時の軽い返事と今の後悔

https://suno.com/s/qEiJdItXwcuN8chT

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ