第22話 「夏の調べと、響き合う心」
第22話 「夏の調べと、響き合う心」
夏の強い陽射しが灯台を白く輝かせていた。
朝の七時。十六人分の椀が並ぶ台所に、新たな漂着者・二十代後半の女性・森 響子が加わっていた。
響子はギターケースを抱え、疲れた目で海を見つめていた。海人が冷たい麦茶を注ぎ、澪が「ここにいてもいいんですよ」と伝えた。
響子が小さく微笑んだ。
「私、音楽で人を繋げてきたのに……自分の心が壊れて、音が出なくなったんです。」午後、海人は響子を機械室へ連れて行った。
Ólafur Arnaldsの《Happiness Does Not Wait》が流れ、弦の調べが夏の熱を優しく溶かした。
「Arnaldsは、孤独の中にも親密さを見出す。
君のギターも、ここでまた響いてもいい。」響子がギターをそっと取り出し、Arnaldsのメロディーに合わせて即興で弾き始めた。
震える弦の音が、回転する灯台の光と重なった。夕方、十六人は岩場で夏の夕立に打たれた。
雨の中で、奏のピアノと響子のギターが、皆でArnaldsの《some kind of peace》をカバーした。
瞳が怒りを、雪乃が寒さを、蓮が後悔を、音に変えて吐き出した。
雨上がりの虹の下、音楽が十六人の傷を静かに繋いだ。夜、機械室で皆が輪になった。
海人が言った。
「Arnaldsのテーマは、夏の熱さの中でも変わらない。
Cycles and Renewal——巡りと再生。
人として生きるのは、音を分け合い、響き合うことだ。」十六の杯に冷たい麦茶が注がれ、響子が初めて明るいメロディーを奏でた。
それはまだ小さかったが、確かに夏の灯台のように温かかった。海人は一人、最上部で遥に語りかけた。
(遥……音楽が、ここをさらに光で満たしている。
Arnaldsのように、俺たちはこれからも響き合いながら回り続ける。)遠い海上で、船たちが白い光と、かすかな旋律を聞きながら進んでいた。(第22話 完)
今日の灯台荘より
「夏の熱さの中で、
Arnaldsの調べのように
**傷を音に変え、響き合う。
それが、人として生きる旋律。」




