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おじさんという生き物が異世界に転生し若返って無双するキモい話  作者: 埜上 純
第六章 ロストダンジョン編

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第219話 絶大な信頼

「ミズト君……」

 シュンタはミズトの手を掴み立ち上がると、

「すまない、ミズト君にこんなことをさせてしまって」


「?」


「君は争いごとが嫌いでしょ? モンスター相手ならともかく、同じ日本人相手にこんな暴力をふるうはめになって、申し訳なかったと思ってる。でも……少しスッキリしたよ!」

 シュンタは笑顔を見せた。


「お恥ずかしいところをお見せしました……」


「何を言ってるんだ! クロの能力もあるかもしれないけど、ミズト君のおかげで、どれだけ俺たちの気持ちが晴れたことか! な、二人とも!」


「うん!」

「ああ!」

 シュンタが振り返ると、他の二人が答えた。


「そう言っていただけたなら、良かったです」

 ミズトは力を使いすぎたのではないかと、自己嫌悪におちいっていたが、三人の言葉に少し救われたような気がした。


 それからエデンが三人の着るものを準備すると、ミズトたちは日本卍会を横目に『グレイガント大回廊』を脱出した。




 外に出るとダンジョン入口には誰もいなかった。

 魔王軍の出現のおかげか、冒険者と思われる気配は、皆ダンジョンから遠ざかっていく。

 魔王軍と黒いローブの集団も、すでにダンジョンから距離のある場所にいるようだ。


「おおーーーーーい!! ミズトォーーーーー!!」


 遠くからミズトの名を呼ぶ声が聞こえた。

 視線を向けると、ダンジョン入口が見える崖の上から、ウィルが手を振っていた。


 ミズトはシュンタたちを連れて、ウィルのいる崖の上に回り込んで合流した。


「他の皆さんはどうされました?」

 崖の上にはウィルしか見当たらなかった。


「彼らは先に帝都へ返した。ここにいると危険かもしれないしな。ところで、その異界人いかいびとたちは?」

 ウィルはシュンタたちを見て言った。


「ご紹介が遅れました。この方々は、私の住んでいる屋敷の所有者で、シュンタ・ナカガワさんと……」


「ナツキ・ホソムラよ!」

「トモハル・カトウだ」

 ミズトがステータスを確認する前に二人は名乗った。


「そうか、俺はウィル・バートランドだ、よろしくな!」


「エルドー王国……? あ、すみません……」

 シュンタが思わず声を漏らすが、後悔するように口を閉じた。


「いや、いい、気にしてない。ステータスで見えているとおり、俺は元エルドー王国の騎士。異界人いかいびとヒロが率いる『神楽』に滅ぼされた王国の出身だ」


「す、すみません……」


「気にしてないって言っただろ」

 ウィルは、申し訳なさそうにしているシュンタの肩に手を置いて、笑顔で言った。

 ミズトから見ても、ウィルは異界人いかいびとへのこだわりがなくなっているように感じた。


「お? 日本卍会とやらの連中も出てきたようだな。慌てているように見えるが、何かあったのか?」

 『グレイガント大回廊』から出てくる日本卍会のメンバーにウィルが気づいた。


 ミズトはスタンピードが発生していることを説明した。


「スタンピードか、そいつは厄介だな……。ダンジョン内に冒険者が残ってないってのは良かったが、そのうちモンスターが溢れてくるってことだろ?」

 スタンピードの遭遇経験がないウィルは、確認するように尋ねた。


「はい、そうなると思います」

 ミズトもエデンに聞いたままを答えた。


「それが本当なら、帝国騎士団にでも来てもらわないといけないが……」


「それでもかなりの犠牲者が出そうですね」


「ミズト、お前ならどうにかできるか?」

 ウィルがミズトに真剣な目を向けた。


(は? なんでどうにかできると思うんだ……)


【ミズトさんへのウィルさんの信頼は、すでに絶大です】


(…………ちなみに、モンスターが溢れた後はどうなるんだ?)


【近くの町や村が順番に襲われ、そのうち帝国軍と衝突しますが、一部は帝都オルフェニアへなだれ込むでしょう】


(…………)

「えっと……どうにかできるかは分かりませんが、ちょっと試したいことはあります」

 ミズトは若いころにプレイしたRPGを思い出していた。


「そうか、なら頼む!」

 ウィルの目がキラキラと輝いているように見えた。


「――――ナカガワさん、ここは危険かもしれませんので、帝都の屋敷に戻ってください。少し改造してしまっていますが、ご了承ください」


「何を言ってるんだ、ミズト君! 最後まで見届けるに決まっているだろう!」


「しかし……」


「頼む! このままいさせてくれ! それに、ナカガワじゃなくて、シュンタだ!」

「ナツキだよ!」

「トモハルだ」

 畳みかけるように言われ、ミズトは返す言葉がなくなった。


 三人の表情を見ると、完全に元気を取り戻していた。

 上級ポーションでは体力や傷を回復するだけなので、クロの防御壁の効果によるものだろう。

 彼らは友人ではなかったが、それでも元気になって良かったと、ミズトは思っている。


 だからと言って、心を許し打ち解け合うつもりはなかった。

 これ以上、関係を深めるつもりはないのだ。


 そんな彼らの前で、先ほどは感情を剥き出しに戦ってしまった。

 さらにこれからやろうとしている事を見られるのは、どうしても躊躇してしまう。


 だが、シュンタたちがミズトの力を知って騒ぎ立てるような事はしない気がした。

 そして、そんな彼らを、力を隠すために遠ざけるようなことは、何か違う気もしていた。


 三人の惨状が目に焼きついているミズトは、自分で思っている以上に、特別な感情が芽生えていた。


「承知しました……。では皆さん、少し移動しましょう」

 ミズトはウィルとシュンタたちを連れ、『グレイガント大回廊』から離れていった。

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