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可惜夜(あたらよ)に君を想う  作者: ウエハース
第五章 夜明け
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これからも望む朝

「ん……」


カーテンの隙間から射す自然の目覚まし時計によって意識を覚醒させられた。

目を開けると、そこには気持ちよさそうに眠っている遥の顔があった。


「!?……ってそうだった」


遥と一緒に寝たんだった。寝顔可愛いな。

ふと、枕の感触に違和感を覚えた。上の方を見ると、左腕で作られた腕枕があった。あんなこと言ってたのにしてくれるの、素直じゃないなあ。

遥を見てると今更ながらに思うが、どうやら遥は重いらしい。私のためにあそこまでやるのは……確かに重いか。

けれど、それを心地良いと思う私も私なんだろう。そんなに想われているのがどうしようもなく嬉しいのは、うーん、まあまあ私も重いのかも。

それに、多分、結……婚するんだろうなって予感もしてる。遥は「ずっと」って言ってたし、しれっと指輪を渡されるかもしれない。まあ、それもいっか。

……ん?それもいっか?

私もしれっと受け入れてない?私も生涯添い遂げる気満々じゃん。

そんなことを考えていると、いつの間にか日光が遥の顔の近くまで迫っていた。あと少ししたら遥も起きるだろう。それまでに寝顔を堪能しておこう。


「んぁ……」


堪能できたのは数分だけだった。もう少し見ていたかったなあ。


「……おはよ、渚」


────ああ、そっか。

寝ぼけ眼を擦っている遥の挨拶を聞いて気づいた。

この遥の『おはよ』を誰よりも一番に聞きたい事を。

それだけじゃない。遥が何かをする度に、それを真っ先に見たいと思ってる。ずっと、隣で。


「おはよ、遥」


まだ半覚醒状態の遥にキスをする。


「・・・!?」


3秒くらいフリーズした後に顔を真っ赤にした。ふむ、こんな反応が見れるならこれからもたまにやってみようかな。


「びっくりした……」

「おはようのキスってやつ。どう?」

「…………最高」


感極まったのか、力いっぱい抱きしめられ……なかった。私を抱きしめようとしていた腕は途中で止まってしまった。

遥の方を見ると、本人も驚いたような表情をしてた。


「腕動かないんだけど……」


動かないのは私の頭の下にある左腕。どうやら腕枕のせいで痺れてるらしい。

…………痺れてる、ねえ。

上半身だけ起こして、遥の左腕に手を添える。


「ちょっ」


ピクっと遥の体が跳ねた。その反応が面白くて、つついたり、握ったりつねったりしてみる。


「このっ、やめっ、ちょお!?」

「あははっ、面白」


足をバタバタさせる様子がさらに面白くって、思わず笑ってしまう。


「いい加減に、しろぉ!」

「うわっ!?」


笑っている隙をつかれて、ベッドに押し倒される。今度は私が下で、遥が上になる。遥は右手の指をわしゃわしゃさせている。これはまずい。


「好き勝手やってくれたなあ?」

「あの、いやちょっと待ってもらうことは」

「問答無用!」

「やめっ……あははは!」


それから遥の気が済むまでくすぐられた。


「はあ、はあ、はあ」

「下、降りるか」

「そうしよ……」


気づいたら、服がはだけて下着が見えていた。急いで服を整える。もしかしたらくすぐられている間に見られていたかもしれない。


「…………見た?」

「ミテナイヨ」


絶対見てるでしょこれ。


「こっち向いて」

「ミ、ミテナイ」

「ホントは?」

「……見ました」


怒られると思っているのか、冷や汗だらだらで答える遥。今までなら怒ってたけど、今は違う。だって彼女だもの。


「別に怒らないって」

「引っぱたかれるかと思った」

「そんなことしないって。それに」


胸をなで下ろしている遥の首に腕を巻き付け、耳元に顔を近づけて囁く。


「遥ならいくらでも見ていいよ」

「ぇ」


腕を解いて、そのままベットに倒れる。多分私の顔は真っ赤だろう。それでも、私は微笑む。恥ずかしいけど、これは紛れもない私の本心なんだから。

遥は……口を半開きにして固まっていた。この人のこんな反応が見れるなら、これからも色々やってみようかな。


「渚」

「ん?」


現実に戻ってきたらしい遥が私の名前を呼ぶ。

……あれ?なんか、表情がいつもと違うような。まるで獲物を見る狼みたいな……。


「よかったな、今、家に誰か居て」


私の顔の横に手を付きながら、私を見据えてそう言った。

『今、家に誰か居て』。それはつまり裏を返せば…………。

その意味に気づいた瞬間、今までで一番顔が熱くなる。


「…………顔洗ってくる」


そんな私を見下ろしていた遥は、多分頭を冷やすために下に降りていった。

私も下に降りるために顔の熱を冷ましながら、直感する。

今のやり取りから見るに、多分、いや絶対、私たちが一線を越えるのはそう遠くないだろう。

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