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可惜夜(あたらよ)に君を想う  作者: ウエハース
第二章 自失と再認識
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始まってしまった体育祭

「始まってしまった………」

「ほらシャキッとしなよ。」

「お前はいいよな気楽で。見たぞお前の出る競技。ただの100m走だろ。」

「いやぁラッキーラッキー。しかも俺足速いんだよな。」

「ちなみに何秒?」

「12秒切ってる。」

「12秒切り!?お前もうそっち系に行けよ!」

ニュースとかで見る陸上選手ってめっちゃ早くて10秒台でほとんど11秒台だぞ?こいつプロの陸上選手になれんじゃねぇかな。

「やだね。俺はほのぼのと生きたいんだよ。」

「現在進行形でほのぼの生きれてませんが?」

「俺って罪な男……」

「引っぱたくぞお前。」

「まぁ遥さんはね、今回は格段に酷い地獄を見るということで。」

「ほんとにな。もう思い出したくもないあの視線。」

「めっちゃ面白かった。」

競技出場者の発表からどこに行っても視線を感じるようになってしまった。陰口のおまけ付きさ!

……シバくぞほんとに。肩身が狭いことこの上なかった。借りてきた猫みたいになってた。

「ほら次お前の番だぞ、行ってこい。」

「はいはーい。かっこよすぎて見惚れるなよ?」

「……………おぇ」

「おいこらドン引きすんな。さすがの隆人くんも傷つくんですけど〜!」

「あーもうはよ行ってこい。」

「いってきまーす。」




周りからキャーキャー黄色い歓声が聞こえてくる。さすがは喜野、とてつもない人気だな。

「頑張って喜野くーん!」

「かっこいいー!」

うーん凄い。男子たちももはや諦めの境地らしく「まぁ喜野だししゃーない」と言わんばかりの顔である。

「位置について、よーい、ドン!」

「………はっや。」

事前に聞いてたとはいえ速すぎる。あと普通に絵になる。汗すら似合うイケメンはレベルが違うな。

「「「うおおおおおおおおお!!!」」」

喜野の足の速さにボルテージはマックスになったらしい。男女ともに歓声を上げている。うんうるさいすっごいうるさい。急に叫ばれて鼓膜破れるかと思った。でもまぁこんだけ盛り上がるのも仕方ないレベルの活躍だったからな。

「喜野くん速かったね。」

「12秒切ってるらしい。」

「はっや!?」

「勝ち試合だったなぁこりゃ。」




「おつかれ〜」

「疲れた疲れた。あとは楽しませてもらいますわ。」

「お前さぁ……」

「まぁ多分他にも面白いものが見れるだろうし。」

「?」

「こっちの話。遥も頑張れよ。」

「応援どうもありがとうクソッタレが!」

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