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「黒炎の隼」  作者: 蛙鮫
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「生徒会長」

夕暮れの校舎裏。松阪隼人は大きなため息をついていた。目の前には以前、隼人に奇襲して来た男子生徒三人。


 ランニングをしようとしていた所を待ち伏せされていたのだ。

 

「また。あんたらか。何の用だ?」

 用事はなんとなく理解できる。復讐だ。聖滅具の適正率Ⅰの人間にコケにされた事を根に持っているのだ。


「分かってんだろ?」

 男子生徒の一人がそう言うと、他の連中も聖滅具を取り出した。三人の目からは殺意のようなものが伝わって来る。


「はあ、じゃあ来いよ」

 隼人は小指で相手を挑発すると間髪入れずに飛んで来た。三人が勢い任せに攻撃をふっかけてくる。


 しかし、そのどれもが隼人にとってあくびが出るほど遅かった。


「速攻で終わらせるぞ」

 隼人は男子生徒一人の腹部に強烈な正拳突きを打ち込んだ。そのあとに残った二人を一斉に拳と蹴りで制圧した。


 地面に伏せる二人を尻目に太刀漁ろうとした時、物音が聞こえた。一人が立ち上がったのだ。


「負けるか! お前のせいで。お前がいたから!」

 短刀型の聖滅具を構えて、こちらに走って来た。


「そこまでよ」

 突然、凛とした声が耳に届いた。声の方を見ると長い黒髪と鋭い目つきの少女が立っていた。


 彼女の手には携帯端末がこちらに向けられており、一連の騒動が撮られていた事を理解した。


「あっ! あんたは! 」

 男子生徒が目を丸くしていた。隼人自身も気づかなかったのだ。戦っている最中は目の前だけではなく、周囲にも気をはっている。


 しかし、彼女の気配は一切、感じ取ることが出来なかった。


「校内で試合以外での聖滅具の使用。とても褒められたものではありませんね。ましてやよって集って一人を攻撃しようなど。生徒会長として見過ごせませんね」

 

「くっ、くそー!」

 男子生徒が怒気を孕んだような叫び声をあげて、走ってくる。生徒会長は焦る様子もなく、男子生徒の攻撃を躱して、瞬く間に彼を制圧した。


「早い」

 隼人はその早さに思わず、目を見開くと同時にどこか既視感を覚えた。


「大丈夫か?」


「ええ、まあ」


「そうか。自己紹介がまだだったね。私は早見沙耶はやみさや。この学園の生徒会長だ」

 彼女が誇らしげに自己紹介をした。その証拠に彼女に二の腕には『生徒会』と書かれた腕章がつけられていた。


「松阪隼人です。先ほどはどうも」


「知っているよ。今年の特待生だからね」

 早見がそう言って、男子生徒達に目を向けた。その目には彼らに対する怒りのようなものが感じられた。


「この男子生徒達はこちらで対処しておく。君は寮に戻ると良い」


「どうも」

 隼人は頭を下げると、彼女の横を通り過ぎた。彼女への違和感を胸に抱えたまま。


 次の日。昼食を終えた隼人は一人、イヤホンをつけながら教科書を眺めていた。その近くでは聖堂寺結巳がクラスメイトの女性生徒達と談笑をしていた。


 肉体的、精神的な鍛錬だけではなく読書から知識を得る。彼が祖父から得たことは鍛錬に関することだけではない。


 知識を蓄えて、それを糧に生かすことも大切という事もよく知っているのだ。


 イヤホンをつけながら、音楽を聴いているが外からうっすらと黄色い声が流れ込んで来た。


 気にせず読み込んでいると右側のイヤホンが空いた。思わず顔を動かすとそこには早見沙耶が立っていた。


「こんにちは。松阪くん」


「こんにちは。俺に何か用ですか?」

 

「少し場所を移したい。ついて来てほしい」

 隼人は彼女から並々ならない様子を感じ取り、同意した。



「失礼します」

 隼人は早見とともに生徒会室に足を踏み入れた。ここにくるのは初めてなので内心、緊張感を抱いていた。


「早速、聞きたいんだが。君、北原ソラシノを知っているかね」


「ええ、名前だけは」

 北原ソラシノ。忌獣対策本部最強の戦闘員であり、『英雄』と称される人物だ。

 隼人も言伝でのみ聴いたことのある存在で実際にはあったことがない。


「その人がどうかしたんですか?」


「昨日の動画を見返したら君の動きが彼にそっくりだったんだよ」


「えっ?」

 隼人は戸惑った。北原ソラシノとは一切、縁がないからだ。自分は剣術も体術も祖父から教わったものだ。


「これは俺の祖父から教わりました。何十年も昔に対策本部で戦闘員をやっていたらしいので、きっとその人も祖父から教わったのではないでしょうか?」


「なるほど君のおじいさんか」


「でも祖父が在籍していたのは何十年も前の話です。少なくとも現役で爺さんを知っている人はあまり多くはないと思います」

 隼人は自身の祖父について、淡々と説明した。祖父自身が弟子をとったりした事など聞いたことがない。


「もしかしたら君のおじいさんが北原さんに教えたかもしれないね。私自身、北原さんの動きを模倣したに過ぎないから。でもそうか。」

 何か引っ掛かりがあるのか、早見が顎に手を添えて、考えるような動作をとった。


「よし! 決めた! 松阪君! 生徒会に来い!」


「は?」

 早見が花を咲かせたような笑みを作って、隼人に手を差し伸べた。


ありがとうございました!

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