19,調査クエスト。
『瓦礫に当たる』ことを節約。
3歩右へ移動すると、全ての瓦礫を回避できた。
リビーとチェルシーは埋もれたが、2人とも防御力UPしているので大丈夫だろう。案の定、リビーは無傷で出て来た。
一方、チェルシーはひっくり返って埋もれていたので、両足をつかんで引きずり出す。
「なんでひっくり返ったんだ?」
「う~ん、分からんです。そんなことよりアニキ! アタシたちやりましたよね! なんかよく分からんデカ蜘蛛を倒しました! これで村のみんなに自慢できます!」
「確かに自慢できるね。デカ蜘蛛は鋼鉄蜘蛛といって、Bランクパーティでも手こずるモンスターだ」
リビーが信じがたいという口調で、
「トラヴィス様のおっしゃる通りです。鋼鉄蜘蛛は並みのモンスターではありません。それを撃破できたとは──」
「リビーさんのおかげで」
「いえ。トラヴィス様のサポートスキルのおかげです。先日のチェルシー様との果し合いのときも感じましたが──こうしてわたくし自身も体感することで、真に理解いたしました。
あなたさまの《節約》は、まさしくチートスキルだと。なぜなら、わたくしを『まともに動かす』ことに成功したのですから」
と感動した様子で言われてしまった。
そこまで褒められるとこそばゆい。
あとリビーの攻撃力も、だいぶチート入っていると思うけどね。【エコ領域】でプラスした一撃は、Sランク並みだったし。
「ところでアニキ。どうして第3深層にいるはずのデカ蜘蛛が、こんなところにまで出てきたんです? あと蜘蛛って、本来は益虫なんですよ。我が家にもいましたし」
「蜘蛛が益虫なのは同感だけど、鋼鉄蜘蛛はモンスターだから。蜘蛛の形した化け物と認識しておきなさい」
ただチェルシーの疑問ももっともだ。なぜ鋼鉄蜘蛛は、自分の縄張りから出てきたのか。
「調査クエストをやってみようか」
「誰が発注したことになるんです、その調査クエストは?」
「うまくいけば、政府」
討伐クエストや調査クエストなど急を要するものの場合、現場判断で行うことも可能だ。
その場合、クエスト内容や成果を政府機関に報告する。認可されれば、クエストに見合った報酬を得られる。
「鋼鉄蜘蛛が第1深層まで出てくるなんて、異常事態だからね。さっき倒した個体が変異種だったのか。それとも第3深層以下で何かが起きているのか。調査する価値はあると思う。
ついでに第3深層以下に生息する夜鋼草も採取しておこう」
「それの採取クエストではないのにですか?」
「普通に売れるし、所有アイテムにしておいてもいいし」
あれ。確か欲を出して自滅したBランクパーティがあったような。
その後、まずは目的だった昼鋼草を採取する。
のち第2深層まで降りた。
そこで、ガガルガという低級モンスターの群れと遭遇。
鋼鉄蜘蛛の後では楽勝。
と思ったけど、地味に苦戦した。
というのも、今のメンバーだと攻撃可能なのはリビーだけ。
そのリビーも一発の破壊力は半端ないが、連続攻撃は苦手。一方、単体ならザコのガガルガも、20体規模の群れで襲って来られると、それなりに脅威。
10分後。
ようやく全滅させた。
『受けるダメージ節約』のおかげで、みんな無傷。
それでも何度か攻撃を受けてしまった。これがもっと強いモンスターだったら、さすがに負傷者が出ている。
いちおうポーションは持ってきているが、やはりヒーラーは必要だなぁ。
「ガガルガの角は素材として採取可能だ。持てるだけ持って行こう」
「アニキ、アニキ。新しいスキルを獲得したんですよ、いまの戦いで」
「へえ、ほんと」
冒険者を始めたころは経験値も稼ぎやすく、スキルや魔法を覚えやすいものだ。
まぁ僕はユニークスキル《節約》一点突破型なので、新しいスキルとは縁がないけど。
「どんなスキル?」
「ふっふっふっ。それは次の戦いまでのお楽しみです」
「……もしかして、《挑発バージョンⅡ》とかじゃないだろうね」
「違いますよ! 今度はちゃんとした防御スキルです! だいたい《挑発》をバカにしすぎですよ、アニキ。アタシの《挑発》のおかげで、デカ蜘蛛を倒せたというのに!」
「ごめん、ごめん」
その後、1体のツチガウと遭遇。
出し惜しみしたくせに、チェルシーはさっそく新スキルを発動。
「《猪突猛進》です!」
盾を前方にして、突撃。ツチガウを倒した。
「どうですか、アニキ!」
「……タンクのくせに、攻撃スキルを覚えるとは……しかも地味に強い」
そんなこんなで、第3深層へ。
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