目覚め
読みづらかったらスミマセン(-_-;)
王国歴2018年が始まろうとしている。
その日は王都のみならず国全土、大陸をも越えた隣国ですら歓喜の渦中にあった。
度重なる攻防、明らかな劣勢をも跳ね除けて人類種は魔族に勝利したのである。
しかし民衆の多くがその立役者の姿すら知らず、勇者というある種神格化された名だけがもてはやされていた。
◇
―――――目を開く。
天井があって、小さな部屋があった。
壁紙に走る幾何学な紋様以外何でもない、そんな部屋のように思えた。
カーテンの隙間から差し込む陽がシンヤとしわくちゃになったシーツを照らしている。
「ええ朝ですね、気分はいかがですシンヤさん?」
ベッドの傍らに腰掛けていた1人の女性。
金色の髪から覗く表情の無い顔、修道服に不釣合いな錫杖を携えたその出で立ちにシンヤは覚えがあった。
「......良くない寄りの普通、ですかね」
「それなら全然元気の内でしょう。ひとまず、安心しました」
彼女の名――――――リジェ=フリージュ・ラシル。
ヴェスティーア王国国教『ユグドラシル』を統括する大司祭であると共に、この世界においてシンヤが初めて出逢った『魔術師』でもある。
「―――――――あの、」
「何でしょう、やはり死にそうなのですか?」
そうではなくて、もっと重要な、気掛かりなことがひとつ。
「―――――俺は......勇者に、なれましたか?」
「......ええ。それだけは杞憂だと保証しますよ」
フリージュもこの時ばかりは瞳に温もりを灯していた。
嗚呼――――自分が辿ってきた道則は、あの血反吐を吐いた日々は間違いでは無かったのだと。
自分はようやく、憧れた存在を掴み取ったのだと。
シンヤの旅路が報われたであった。
「ではどうか身支度を。服は私自らそこに置いておきましたので有難ぁく思うように」
「ああ、相変わらずなんですねフリージュさん......」
クセが強いし、何を考えているか解らないし、オマケに守銭奴だったり。
――――――しかし、フリージュという存在はシンヤが最初に信頼した人でもあった。
戦いの緊張から急に解き放たれたからだろう、シンヤはこの安堵をもう4、50分は味わっていたい気分だった。
「あっ有料ですからね?」
「うわぁ。このノリ一年ぶり」
◇
フリージュに伴われ、シンヤはヴェスティーア王宮に隣接する魔術研究棟を後にした。
視界の果てが点に見える程に長い回廊を往くその最中、時折過ぎる窓からは歓声混じりの狂騒が聞こえていた。
本来なら彼は世界を救ったというこれ以上無い実感を良しとしていただろう。
しかし、あの日を思い起こす程に浮かび上がってくる不安や不甲斐のなさがそれを許さない。
暗闇に消えていったあの少女のことに至っては夢の中でもフラッシュバックしていた。
曖昧な表情のままに、シンヤは王の間を目指す―――――――
早く次話投稿をしたい。そんな年始でした......。