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最後の戦いⅢ



「礼を言う。き退屈しのぎであった」



 夜の薄暗い青で満たされた部屋の中、魔王は投げ捨てるように呟いた。その視線の先、散々に蛇行した溝の終点では黒いドームが不気味に渦巻いている。

ヴェスティーアの防人たる勇者が消え、少女は独り、凍てついた空間で押し黙ってしまう。その顔に浮かんだ笑みはどこか曖昧で、まるで自らを肯定し続ける罪人のそれにも思える。

 目を背ける様に、少女はきびすを返す。


「・・・・・・許せ、我が大義の為なのだ」


それはまさに「骸の魔王」という存在を表す言葉そのものだった。

彼女は己が道を行くべく歩き出す。全てを捨て去ってでも、何を葬ってでも、成すべき願いに手を伸ばすために。



























「その言葉がお前の()()か?」








それは聞き覚えのある声、ただ1人による問いかけに違いなかった。



「ッ!? 貴様ああ!!」


魔王は振り向きざまに膨大な魔力を燃やし間髪を入れずそれ解き放った。

強力無比の熱線が黒いドームを吞み込んでいく。


「私を知るな妾を知るな!! 貴様等などが在る世界など要らぬ。この大地を侵し・・・・・・奪ったのは貴様等だ!!」


黒炎による焼却に次ぐ焼却。大気は焼け、岩をも薙がれ、城壁ですらその意味を成さず、貫通した熱線は夜空に至って尚一直線に突き進む。

感情を露わにするその姿に威厳や荘厳さは無く、何かを振り払おうという焦燥に駆られた人そのものである。一滴の涙を溢す様は1人の少女に違いなかった。


「――――――消え去ってしまえ! 全て、全て―――――――――――――――――――」















「―――――――――――――――――――――――ああ、何も知らないさ」



少女の葛藤のように荒れ狂う炎の中、紡がれるはずの無い言葉がまたひとつ、

岩の蒸発、城壁が崩落の最中だというのにより鮮明に聞こえていた。


「俺は訳も分からないままこの世界(ここ)に放り出されたんだ、お前の事情なんざ知るよしも無いし、聞いたって俺が理解出来るかも分からねえよ」


「―――――――けどな?」


「誰かを犠牲にしてまで果たされる『大義』なんてのがロクでもないことぐらい()()()()()()()()()()!!」


刹那、剣は鳴いた。あるはずの無い刀身を震わせて、黒く塗りつぶされた空間に一閃の光を描いてみせる。

走り征く無数の亀裂を目の当たりにして、少女は目の前の存在をようやく脅威として認識していた。


「・・・・・・何故消えない? 何故貴様はそこに在る?」


取り乱した少女は剥がされゆく黒球に問いかける。

間も無く返される答えは至極単純。


「知るかよ」


その瞬間、物質と化した闇をも突き破り一心に駆け出す存在が確かに在った。

それは何でもない人間。普遍的な背景の、民衆の1人でしかない。


「―――ッ!! 人間風情が!」


骸の魔王は激憤を覚えた。自らを追い詰める者がこれほどまでに過小ということ、その全てに。

砕かれた闇は再び幾重の弾丸となり少年の肢体を貫いていく。

それでも尚彼の脚は止まることを知らない。加速していく。



「私は認めない‼ 貴様等が在る未来など断じて!!」



「ここまで来たというのに‼ 犠牲を払ったというのに‼」



「私の願いはまだ―――――――」



魔王がその言葉を言い終えることは無かった。



今の勇者に振るうべき剣など残されていない。


しかし、魔王を撃ち抜くには握られた拳ひとつで事足りる。

彼の一撃は魔王の胸を深く穿ち、漂っていた影諸共吹き飛ばした。



 少女の体が壁に叩きつけられたことを確認した後、シンヤはその場に倒れ伏した。

彼の肩に突き刺さった魔剣は辺りの血を吸い、主人の仇を執ろうとアザに似た呪いを広げている。

幾つもの傷を携えた手足は既に事切れていた。


 もう痛みすら無いのか・・・・・・


残された意識の中でシンヤはある種の安堵すら感じていた。






















































「―――魔王様、御目覚めください」












どうも久々に戻ってまいりました!

いよいよ次話は『最後の戦い』クライマックス! ・・・・・・分かってはいても最終回感がありますね毎回(;^ω^)


展開が想像しにくい等のご指摘が有りましたら是非ともお教えください!

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