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番外編 勇者の日記より 3017.9.24

※番外編、というよりは過去編。最終決戦前のエピソードです。

その日、俺はとある町の旧市街を歩いていた。


深い霧の中、アンティークな水銀灯を頼りに自分の影を踏む。

廃墟の多いこの町。道沿いの運河のせせらぎがよく聞こえる。


行く宛が無い訳じゃないけれど、いつになく重い足取りがよりいっそう不安を高めている。


怖いのだろうか? 否、言葉にならない。

震える膝がその答えと知る。




そして、見つけた。


石畳の上、佇む「ソイツ」を。人型の影を。


漂い始めた殺気が俺に教えてくれる。コイツは人なんかじゃない。

例えるなら、「ふと覚えたトラウマ」のような、

既存の言葉を否定してるような、

ノイズの塊みたいな奴だ。


かろうじて人の形をしたコイツを、俺はもう1ヶ月近く追っている。



握りしめたミスリルの剣は手汗に濡れている。

心拍が耳鳴りに重なって、意識すら持って行かれそうになる。


猿に似た臨戦態勢をとる影。

蝗の羽音みたいな唸りが人知れぬ路地に響いている。


呼気を整える間もなく啖呵を切り捨て、俺は走りだした。

右足を軸に身体を捻り背面から大きく剣を振るう。一瞬線の束と化した視界に砕け散った石が映った。が、手応えがまるで無い。


振り返り再びヤツを視認する。うごめく影は橋の擬宝珠ぎぼしに当たる位置にいた。

流れるような動きで体勢を整えるその様は肉食性の昆虫を思わせる。


朝方にも関わらず霧はいっそうその深さを増し、服に剣に纏わりついてくる。

影は頭部と思しき部位から二つの赤い光を滲ませこちらを覗いていた。


反撃を警戒しつつ刃先を返し第二撃を振り上げた。

硬い感触が剣を通して伝わり、右手が確かな実感を得る。しかし断末魔のひとつも聞こえない。

ダメ押しとばかりに力任せに剣を振るい通す。革袋を切ったような感じがした。


時間にして午前5時―――――――山脈を越えた朝日が旧市街に射し込み、吹き込んだ風が霧を拭い去っていく。


鮮明になった視界。最初に映った俺の剣は血の代わりに夜露で濡れていた。

辺りを見渡したがあの影の姿は一切無く、朱色に染まった街並みだけが広がっている。


古びた橋に一人、俺は消えない疑念を抱えたまま立ち尽くしていた。


―――――あの時、確かに刃は通ったはず。


―――――あの影はいったい何なのか?


―――――『骸の魔王』と関係があるのだろうか?



その日以降、あの影に襲われたという話は聞くことがなかった。



なるべく早く次話投稿したいです(-_-;)

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